著者
茂木 美智子 深井 康子 赤羽 ひろ 川染 節江 品川 弘子 日比 喜子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.268-273, 1988-12-20
被引用文献数
1

1949年から1986年に発行された料理書76冊より、511件のすし調理法を対象にファクトデータベースを作成し、構成要素の整理を行った結果、次の結果を得た。(1)すしの種類は、ちらしずし系25.2%、にぎりずし系13.9%、押しずし系19.8%、巻きずし系18.4%、いなりずし系18.4%、その他4.3%に分類された。(2)すし飯の炊飯方法は、湯炊き15.1%、水炊き78.3%、記載なし6.7%であった。(3)すし飯の加水比平均値は、米重量に対し1.27を示し、やや堅めであることが確認された。(4)合せ酢の酢・砂糖・塩の平均値は、それぞれ米重量に対し13.2%、4.5%、1.85%であった。寿司の種類によって味つけに差が見られた。(5)合せ酢の酢・砂糖・塩の量を料理書発行年と共に回帰分析の結果、酢と砂糖、酢と塩、砂糖と塩の間に有意の相関がみられ、すし飯の調味にバランスが保たれる機構が確認できた。また、年と共に酢の使用割合が増加し、塩の使用割合が減少している傾向が見られた。(6)具の平均材料数は5.7個であったが、ちらしずしの平均数は7.7個と最も高い値を示した。ちらしずしの具の出現頻度は、しいたけ、しょうが、錦糸卵、のり、はす、かんぴょう、にんじん、さやえんどうの順に上位8位占めた。
著者
原田 澄子 深井 康子 守田 律子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.117, 2011

<B>目的</B>:平成21~23年度日本調理科学会の特別研究「調理文化の地域性と調理科学―行事食・儀礼食―」の一環として、行事食の認知度や喫食状況などを調査することにより、富山県の地域性と調理文化を把握し行事食の伝承状況を明らかにした。<BR><B>方法</B>:富山に在住する富山短期大学の学生277名およびその親159名を対象に全国統一様式の調査用紙を用いて行事食の調査を行った。<BR><B>結果および考察</B>:富山県は、東日本と西日本の接点に位置し、関東と関西の両方の食文化を受けている。認知度が高い年中行事は、学生その親ともに正月、節分、上巳、端午、七夕、土用、月見、冬至、クリスマス、大晦日であった。認知度も経験も少なかった行事は、学生その親ともに重陽の節句であった。親が多く学生が少なかった行事は、盂蘭盆、春祭り、秋祭りで逆に親が学生より少なかったのは七夕であった。正月の屠蘇は、親50%に対し、学生が8%と少なかった。雑煮はいずれもほとんど食べており、調味は「清まし」、もちは「角餅」、調理法は「焼かない」が多かった。赤飯は正月料理では食べる習慣が少なかった。月見団子は学生その親ともに食べていたが富山県では小芋を食べる習慣がなかった。<BR>
著者
深井 康子 守田 律子 原田 澄子 稗苗 智恵子 中根 一恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】富山県に伝承されている家庭料理のなかで、主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】平成26~29年度に県内の6地区(朝日町、黒部市、滑川市、富山市、射水市、氷見市)で60歳代~70歳代のとやま食の 匠・伝承の匠の認定者及び食生活改善普及員の女性6名を対象に、昭和30年~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行った。調査した料理から主菜に分類されるものを抽出した。また富山県の食文化関連の書籍や文献等を参考に、上記以外の主菜を検索し、主菜の特徴をまとめた。<br>【結果】富山県の主菜は、四季を通じて食べられる豊富な魚料理が特徴である。富山湾は、温暖な対馬海流と立山連峰からの伏流水が流れ込むため、水温が1~2度と低く、海洋深層水が層をなしている。海底には魚の餌となるプランクトンが豊富にあるため、魚種が豊富である。3月~5月が旬の滑川漁港で水揚げされる「ホタルイカ」は刺身、酢味噌和えにした。4月から11月には新湊漁港で獲れる「白えび」は干したり、から揚げや大門素麺のだしのつゆに用いた。かき揚げで食べるようになったのは20年ほど前からである。通年漁獲される「バイガイ」は旨煮にして、日常や正月に食べた。県内全域では魚の保存と昆布のうま味を生かした昆布じめを作った。昆布に魚を挟んだ独特の昆布料理で先人の知恵により受け継がれてきた。県境に近い宮崎海岸では「すけそう鱈」でたら汁にした。「真鱈」は昆布じめにしたあと、味付けした真子を和えて子付けにして日常や正月に食した。鱈は干し鱈として長期保存し、棒鱈の甘煮にした。氷見漁港で獲れる「ぶり」は刺身、ぶり大根にした。日常によく食べる「いわし」は酢を入れて醤油で煮たり、すり潰してすりみにして味噌汁にした。大衆魚の「イカ」は刺身、イカの鉄砲焼き、里芋とイカの煮物にしてよく調理した。
著者
赤羽 ひろ 川染 節江 品川 弘子 日比 喜子 深井 康子 茂木 美智子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.405-411, 1990-11-20

すしの食生活における位置づけを知る目的で、すしの利用状況について、全国を12地域に分割し、各地域に在住する3世代の女性を対象に、アンケートによる意識調査を行い、すしの利用に対する意識について以下のような結果が得られた。1)すしの利用状況をみると地域・年齢を問わず、夕食に自宅で家族と喫食する割合が約80%を占め、日常食、行事食、来客食などに利用されている。2)すしに対する意識は、地域・年齢を問わず平均評点4以上(5点評点法)で、すしに対する「好き」意識が高くなっている。また、年齢が高くなるに連れ「ごちそう」意識が強くなっているが、「好き」意識と同様、いずれの地域・年齢においても平均評点4以上と高い嗜好性を示した。3)すしの「好き」意識とすしめしの味付けの好みの関係を求めたところ、すしが好きなことと酸味を好むことには正の相関、塩味とは負の相関があった。4)すしを調達する場合には、東日本では出前に依存する率が高く、西日本では手作り度が高くなっている。また、喫食回数が多いほど手作り度が高く、にぎりずしをよく食べる地域ほど手作り度が低くなっている。5)持ち帰りずしの利用経験は、20歳代、40歳代では約88%であるが、60歳以上では約73%である。また、持ち帰りずしを利用する場合の種類はにぎりずしが約60%を占め、利用する理由は、手軽さが約54%を占めている。持ち帰りずしの月平均の喫食回数は約1回とすし全般の喫食回数(月平均2.4回)の約2分の1である。また、持ち帰りずしの購入金額は一回当たり700円前後ですし全般の購入金額(1,000円程度)の7割程度である。6)好まれるすしの種類は、北海道、東北、関東、東海地域でにぎりずしを好む傾向がみられ、近畿、中国、四国地域では関西風などのちらしずしを好んでいた。江戸前のにぎりずしとちらしずしを合算すると、北海道、東北、関東、東海地域で60%以上を占め、九州地域でも約50%回答されている。好まれるすしの種類を要素として12地域の類似性についてクラスター分析を行った結果、東九州と九州の類似性が示された。