著者
岡崎 則男 鈴木 理恵子 佐多 辰 大沢 朗 渡辺 祐子 山井 志朗 和田 昭仁 渡辺 治雄
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.505-511, 1997-04-25
被引用文献数
11 4

ベロ毒素産生性大腸菌 (VTEC) O157の増菌培養法につき, VTEC O157分離株を供試して検討した。トリプティケースソイブロス (TSB) において, 供試した5株のVTEC O157は培養温度 (36°C, 42°C) に係わらず旺盛な増殖を示したが, TSBにセフィキシム (CFIX), 亜テルル酸カリウム (PT) およびバンコマイシンを添加したTSB-CTVにおいては36°Cの培養で1株, 42°Cでは4株の増殖が阻止された。mECにノボビオシン (NB) を添加したmEC-NBの36°Cにおける培養では, 1株の増殖が8時間まで抑制されたものの, 24時間後の増殖は5株共に良好であった。しかし, 42°Cで培養すると, 5株中3株の増殖が阻止された。VTEC O157分離株90株のCFIX, PTおよびNBに対する感受性値 (MIC; μg/ml) は全てこれらの薬剤の培地添加濃度以上に分布した。このように, mEC-NBおよびTSB-CTVにおけるVTEC O157の増殖には培養温度が強く影響し, 42°Cでは著しい増殖阻害が認められた。従って, これらの培地は36°Cで使用するのがより適切であり, 特に, mEC-NBを42°Cで使用する現行の培養法には問題があると考えられた。また, これらの選択増菌培地に加えて, TSB等の非選択増菌培地を併用するのが好ましいと考えられた。
著者
吉川 昌之介 山本 達男 寺脇 良郎 笹川 千尋 江崎 孝行 檀原 宏文 渡辺 治雄 岡村 登 橋本 一 吉村 文信
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

組換えDNA実験技術を始めとする分子生物学的、分子遺伝学的技術を病原細菌の病原性の解析に応用することを目的としてこの総合研究班を結成し、3年間補助金を受けた。研究分担者総数21名という大規模な班員構成からなり、各分担者の対象とする菌種も多岐にわたり、ビルレンス遺伝子の存在部位も染色体性、プラスミド性、およびバクテリオファ-ジ性と異るため各分担者の研究達成の難易度には著しい差があった。組換え体の選択方法、汎用される宿主・ベクタ-系でクロ-ン化できるか否か、EK系を用いることができるか否か、仮にクロ-ン化できたとしてそれが完全に形質発現するかなどにも大きな差があった。この壁を乗り切るためにベクタ-系を開発するところから始めたり、新たに宿主に特殊の変異を生じさせたり、遺伝子導入のために特殊の方法を採用したり多くの試行錯誤が行われた。幸に長時間にわたる班会議の議論を通じてこれら問題点の克服の方法が模索され、解決のための示唆が与えられた結果、各分担者それぞれがほぼ所期の目的を達した。セラチアの線毛、サルモネラの病原性、赤痢菌の病原性、大腸菌の表層構造、赤痢菌の抗原、らい菌の抗原、バクテロイデスの病原性、とくに線毛、腸管感染病原菌の粘着因子、コレラ菌の溶血毒、ナグビブリオの溶血毒、腸炎ビブリオの溶血毒、緑膿菌のサイトトキシン、Pseudomonas cepaciaの溶血毒などにつき、その遺伝子の存在様式、遺伝的構造、塩基配列の決定、形質発現の調節機構、前駆体物質のプロセツシング機構などを明らかにし、その病原的意義の解明に一定の知見を得ることができた。これらは多くの原著論文の他、シンポジウム、講演、研究会、総説などに発表したが、各分担者それぞれにより深く研究を堀り下げ、より完全な形で完成するべく努力を続けることになろう。ともあれ本邦のこの領域の発展に大いに寄与したことは間違いないと思う。
著者
渡辺 治
出版者
賃社編集室
雑誌
賃金と社会保障 (ISSN:09114718)
巻号頁・発行日
no.1533, pp.6-66, 2011-03
著者
岡田 禎人 鈴木 勝一 中山 隆 渡辺 治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1930-1933, 2004-12-01
被引用文献数
3

症例は54歳の女性で,下腹部痛を主訴に来院した.下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた.また尿中にも便が混じっていた.腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた.注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた.また膀胱鏡では膀院内に便汁を認めた.患者は20年以上子宮内避妊具(intrauterine contraceotivedevice;以下,IUD)を装着していた.IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため,IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし,これがS状結腸,膀胱,腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した.絶食,抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため,手術により痩孔の切除と膿瘍のドレナージを行った.術後経過は良好で,腹壁の膿瘍は消失した.術後7か月の現在再発を認めていない.