著者
熱田 幸司 小林 純子 菊池 雅之 林 応典 安藤 崇史 宮部 理香 新谷 恒弘 中山 隆盛
出版者
静岡赤十字病院
雑誌
静岡赤十字病院研究報 = Journal of Japanese Red Cross Shizuoka Hospital (ISSN:09119833)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.24-29, 2020-12-01

経肛門的直腸異物は,性的嗜好などが原因で肛門から異物が挿入され,抜去不可能となったものである.治療は一般的に内視鏡や経肛門的摘出術が,第一選択とされるが,難渋する場合には開腹手術への移行が必要になる. 今回,われわれは摘出の際の器具を工夫することで経肛門的に摘出し得た巨大直腸異物を経験したので報告する.
著者
白石 好 森 俊治 磯部 潔 中山 隆盛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.488-492, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

非常にまれであるハンドル外傷による胃破裂とIIIa型膵損傷を合併した1例を経験し, 胃切除と膵胃吻合による尾側膵温存術式にて救命しえたので報告する. 患者は64歳の男性で, 交通事故による腹部打撲と吐血を主訴に救急搬送された. 腹部CTでFree Air, 腹腔内出血を認めたため胃破裂疑いで緊急手術となった. 手術所見は胃前壁の体下部から幽門前庭にかけて約7cmの破裂創と胃角部小彎に出血性潰瘍を認めた. また, 上腸間膜静脈右縁にて膵の完全断裂を認めた. 出血は胃潰瘍によるものと判断した. 止血のために胃切除施行し膵温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した. 急性期の経過は順調であったが, 軽度の膵液瘻を認めた. 退院6か月経過後でも血糖値, 膵外分泌機能には異常を認めなかった. 自験例と文献的考察から消化管破裂や大量出血を合併した症例では, 膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられた.
著者
大鳥 徹 井上 知美 細見 光一 中川 博之 高島 敬子 近藤 尚美 高田 亜美 伊藤 栄次 中山 隆志 和田 哲幸 石渡 俊二 前川 智弘 船上 仁範 中村 真也 窪田 愛恵 平出 敦 松山 賢治 西田 升三
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.94-101, 2016-12-10 (Released:2017-02-09)
参考文献数
12

In the areas of home medical care and self-medication, the role of the pharmacist is growing, partly as a result of Japan’s aging society and the need to reduce medical costs. In response, the Kinki University Faculty of Pharmacy implemented a physical assessment practical training seminar in order to improve the physical assessment skills of practicing pharmacists. A series of questionnaires were conducted among pharmacists to investigate their perceptions of physical assessment practical training seminars. The results of the questionnaires were analyzed using Customer Satisfaction (CS) analysis and text mining. Based on a 5-point scale (1-low∼5-high), questionnaires revealed satisfaction for physical assessment practical training seminars was 4.6±0.6 (Ave.±S.D.). CS analysis revealed that the items “lectures” and “case seminars” had the highest level of satisfaction. However, items showing low levels of satisfaction were “auscultation of respiratory sounds” and “SBAR (Situation, Background, Assessment, Recommendation).” Results of text mining suggested a relationship between “physical assessment” and “difficult”. Analysis of the questionnaires showed a high level satisfaction with physical assessment practical training seminars, notably physical assessment practice methods. However, CS analysis and text mining indicate the finer techniques of physical assessment were difficult to acquire.
著者
中山 隆盛 白石 好 西海 孝男 森 俊治 磯部 潔 古田 凱亮
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.3052-3056, 2002

前立腺癌は,日本において死亡増加率が最も高く,今後の動向は重要である.われわれは,直腸狭窄により発見された稀な前立腺癌を報告する.<br> 症例は, 73歳の男性.主訴は排便困難であり,直腸癌疑いにて紹介入院となった.大腸内視鏡および注腸にて,直腸の全周性狭窄像を認めた.尿路症状を認めないものの, PSA (prostate specific antigen)が高値であり,骨転移が認められた.前立腺生検により,原発前立腺癌の確定診断となった.内分泌療法および放射線療法が奏効し,直腸狭窄は解除され,外来で内分泌療法中である.
著者
松尾 一彦 中山 隆志
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.610-618, 2019 (Released:2019-08-09)
参考文献数
8

要約:様々な機能的サブセットから構成されているリンパ球は,特定のケモカインとケモカイン受容体によって,それぞれの生体内における移動と特定組織微小環境へのホーミングが制御され,生体における免疫システムの形成および恒常性維持に関与している.また,生理的あるいは様々な病的状況下において異なるケモカインの発現誘導が見られ,それによって起こるリンパ球などの遊走が病態形成に密接に関わっている.本稿では,それぞれのケモカイン受容体と白血球,特にリンパ球サブセットの関係について最近の知見を交えて概説する.
著者
中山 隆志 松尾 一彦
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

これまでに研究代表者は和漢薬ライブラリーを用いて細胞遊走阻害活性を指標としたケモカインアンタゴニストの探索を行ってきた。本研究において、麻黄エキスがケモカイン受容体CCR3、CCR4、およびCCR8特異的なアンタゴニスト活性を示し、そのアンタゴニスト活性が麻黄エキスの酢酸エチル非可溶性分画に存在することを明らかとした。また、このアンタゴニスト成分による阻害活性にリガンド特異性はなく、受容体を直接阻害することが示唆された。CCR3、CCR4、およびCCR8は、いずれもTh2細胞あるいは好酸球や好塩基球に選択的に発現することから、アレルギー性疾患において重要な役割を果たすと考えられる。
著者
森川 敏生 松尾 一彦 八幡 郁子 二宮 清文 村岡 修 中山 隆志
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p>1.はじめに</p><p> ケモカインは,白血球やリンパ球などの免疫担当細胞の細胞遊走を誘導するサイトカインとして広く認識されており,現在までにヒトにおいては50種類近くのリガンドと18種類のシグナル伝達型受容体が知られ,さらに5種類のスカベンジャー/デコイ型受容体も存在する.ケモカインにはよく保存された4つのシステイン残基が存在し,そのうちのN端側の2つのシステイン残基が形成するモチーフにより,CXC,CC,CX3CおよびXCの4つのサブファミリーに分類される.これらのケモカインは免疫応答の制御にとどまらず,アレルギー疾患,自己免疫疾患,感染症やがんの病態発症においても重要な役割を果たしていることが明らかとなっている.近年,種々の疾患の発症や増悪などのキーファクターとなるケモカインおよびその受容体が解明されるにつれ,新たな創薬ターゲットとしてケモカイン受容体アンタゴニストの探索が精力的に展開されている.アレルギー疾患の発症や増悪に関与するケモカイン受容体として,CCR3,CCR4およびCCR8が挙げられる.これらのなかでCCR3は,好酸球の最も主要な遊走制御因子であり,好酸球,好塩基球およびTh2細胞の一部に選択的に発現する (Figure 1).<sup>1,2)</sup> </p><p> </p><p> </p><p> 我々はアレルギー疾患をはじめとした難治性炎症性疾患の新たな治療薬シーズの探索研究として,これまでにi.肥満細胞のモデル細胞であるラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3) を用いた抗原刺激による脱顆粒抑制活性およびTNF-αおよびIL-4産生抑制活性,ii.マウス受身浮腫アナフィラキシー (PCA) に対する抑制作用 (in vivo),iii.マクロファージ様 RAW264.7 細胞を用いたリポ多糖 (LPS, lipopolysaccharide) 誘発一酸化窒素 (NO) あるいはiNOS 発現抑制活性,およびiv. HL-60 細胞由来好中球様細胞からの fMLP (N-formylmethionyl-leucyl-phenylalanine) 刺激による脱顆粒抑制活性,などを指標として検討してきた.<sup>3)</sup>これらの生物活性評価試験において見いだされた天然資源について,単一のケモカイン受容体のみを遺伝子工学的に過剰発現し樹立したケモカイン受容体安定発現細胞株を用い,細胞遊走阻害活性を指標として種々のケモカイン受容体に対するアンタゴニストの探索を行った.その結果,薬用のみならず香辛料として食用にも用いられるメース[ニクズク科(Myristicaceae) 植物Myristica fragrans Houtt. 仮種皮]のメタノール抽出エキスに,CCR3選択的なアンタゴニスト活性を見いだしたことから,その活性寄与成分の探索に着手した.</p><p>2.メタノール抽出エキスのケモカイン受容体アンタゴニスト作用試験</p><p> マウスB細胞株L1.2 細胞を用い各種ケモカイン受容体を過剰発現させた細胞株を樹立し,ケモタキシスチャンバーを用いた細胞遊走抑制作用を指標にアンタゴニスト作用を評価した.すなわち,各発現細胞を細胞遊走バッファー (0.5% BSA,20 mM HEPES pH7.4,RPMI-1640 without phenol red) で洗浄を 2 回行った後,8 × 10<sup>6</sup> cells/mL となるように懸濁した.リガンドとなるケモカインを細胞遊走バッファーで希釈して下部ウェル</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
中山 隆臣
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.640-644, 2013-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1
著者
岡田 禎人 鈴木 勝一 中山 隆 渡辺 治
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1930-1933, 2004 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

症例は54歳の女性で, 下腹部痛を主訴に来院した. 下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた. また尿中にも便が混じっていた. 腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた. 注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた. また膀胱鏡では膀胱内に便汁を認めた. 患者は20年以上子宮内避妊具 (intrauterine contraceptive device; 以下, IUD) を装着していた. IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため, IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし, これがS状結腸, 膀胱, 腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した. 絶食, 抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため, 手術により瘻孔の切除と膿瘍のドレナージを行った. 術後経過は良好で, 腹壁の膿瘍は消失した. 術後7か月の現在再発を認めていない.
著者
湯野 裕高 中山 隆史
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学講演大会講演要旨集 第27回表面科学講演大会
巻号頁・発行日
pp.235, 2007 (Released:2007-11-01)

金属と半導体を接合した場合、界面にショットキー障壁が現れることが知られているが、最近の実験でこの界面にAlなどの極薄偏析層を形成すると、金属の仕事関数が偏析層で大きく変調されるという報告がなされている。しかしその起源は明らかでない。本研究では、第一原理計算を用いて、Au/HfO2界面にAl偏析層が出現した場合の仕事関数の変化の考察を行った。
著者
河本 昇 石川 健三 中山 隆一
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

1.グループ代表者の河本は、ツイストされた超対称理論とトポロジカルな理論の量子化の関係を明らかにした。このツイストの操作をディラック・ケーラーツイストと命名し2次元ではN=2, 4次元ではN=4の拡張された超対称性を持つ超対称ヤング・ミルズ理論に導かれることを示した。この定式化を格子上に拡張し、格子上で厳密に超対称性を保つ定式化を提唱した。特に格子上で差分演算子がライプニッツ則を満たすように新たな非可換性を導入した。また拡張された交換関係を持つ定式化がこの定式化と同等であることも明らかにした。具体的には2次元N=2のBF理論、ベス・ズミノ理論、超対称ヤング・ミルズ理論、更に3次元N=4の超対称ヤング・ミルズ理論に適用した。超対称性が格子上で厳密に成立していないと言う批判に対し、この批判が当たらないことを現在示そうとしている。2.研究班メンバーの石川は高移動度の高いランダウ準位で発現している非等方的量子ホールガス状態を、同氏らが開発したフォンノイマン格子表現での平均場理論に基づいて解析し、特異な中性零エネルギー状態の性質解明や、周期的な外場中での安定な相状態の探索、量子ホールガス状態による新たな量子ホール領域の解明等に成功した。また、波束粒子の散乱による、運動量と位置との両変数を近似的に観測する振幅を定式化した。3.研究班メンバーの中山は超弦理論に現れる非可換空間に関する研究を行った。2次元非可換球面上の非可換積の新しい表現を見つけ、4次元非可換球面上の場の理論の構成を行った。また、非可換トーラスの解析を行った。当研究班では、通常の研究推進に加え、海外との共同研究及び、冬の学校として組織する研究会の運営の為の資金としてこの特定研究補助金が役立った。特に1.の研究においては、イタリア、トリノのD'Adda氏と超対称理論の格子上での定式化に関する共同研究が行なわれ、研究交流資金として重要な役割を果たし、大いに成果が上がった。
著者
石川 健三 鈴木 久男 中山 隆一 河本 昇 末廣 一彦 JACKIW Roman WIEGMANN Pau 細谷 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

低次元場の理論の研究とその応用をテーマとする本研究では、量子ホール効果の場の理論、重力の量子論並びに弦の量子論が中心的課題として取り上げられた。これら物理学の基本的諸問題に関する多方面にわたる研究が展開され、以下の成果があげられた(1)極めて特異な量子的な物理現象である量子ホール効果の厳密性に関して、ホール系のガス状態が負の圧縮率を持つことが示され、さらにこのことより縦抵抗が有限な値をとる現実の実験状況下でもホール抵抗の値が厳密に量子化されることがしめされた。また、量子的な多体効果が重要な働きをしている分数量子ホール諸問題について、空間の対称性を最大限に保つvon Neumann格子表現を使い、相互作用によりfluxが凝縮し、Hofstadterのbutterflyスペクトルと同様なものになる一粒子状態を持つflux相に基ずく新しい平均場理論が提案された。この意味で、Hofstadterのbutterflyスペクトルと分数量子ホール効果の関連が初めて明らかにされた。(2)時間や空間の反転に関する不変性を破る超伝導では量子ホール系と同様に電磁場に対するChern-Simons項が導かれる。磁場の役割をp波のCooper対凝縮がし、u(1)対称性が破れているときのChern-Simons項の係数には補正があること等について解明された。(3)任意次元に一般化された偶数次元のChern-Simons作用が無限階質量殻上既約という極めて特殊なゲージ対称性の構造を持つ理論であることが示されまたこの理論の量子化に成功した。(4)3次元Chern-Simons重力と4次元BF理論を格子上にのせる試みに成功した。(5)ストリング理論におけるD-Particleの有効理論のコンフォーマル対称性が示され、またハミルトンーヤコービ方程式を用いたストリングの新しい定式化にせいこうした。(5)超弦理論について、その相転移がヒッグス場による対称性の破れと解釈できる相転移点まわりでの物理量の計算について、定量的に解析する技術の開発に成功した。(6)量子情報理論における量子的絡み合い状態についてのエントロピーの持つ関係式の導出に成功した。
著者
林 春男 田中 重好 卜蔵 建治 浅野 照雄 中山 隆弘 亀田 弘行
出版者
広島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

広島地区(2124名)及び弘前地区(928名)で共通のフォーマットを用いた住民への意識調査を行い以下のような結論を得た。(1)今回の調査では人口109万人の広島市、17万人の弘前市、さらに純農村である青森県平賀町を調査対象とした。人口規模では大きな差異がみられる広島・弘前両市の住民の間には、今回の台風を契機とするライフライン災害に対する対応には差異がみられなかった。しかし、平賀町と市部との差異は顕著なものであり、少なくとも人口100規模までの都市では都市型災害の様相及び防災対策に共通性が存在しうる。(2)被災住民のがまんには3日間という物理的上限が存在すること。(3)復旧に関する情報の提供のまずさが被災住民にとって最も不満であった。住民が求める情報と提供される情報との間には大きなギャップが存在し、情報伝達手段もマスメディア主体となるために、一方的な情報提示に過ぎなかった。こうした事実をもとに被災地域内での情報フロー・システム構築の必要性が議論された。広島地区では中国電力をはじめとする各種行政機関及び指定公共機関を対象に台風9119号に対する危機対応についてヒヤリングを中心にして検討した。その結果、広島市の中央部が配電線の地中化事業が講師が完成していたために、他の地域とは違い停電期間がきわめて短く、広島市における「文明の島」として機能したことが明らかになった。こうした文明の島の存在によって、停電期間中であっても広島市民は「個人的生活」に関する不安は高かったものの、「社会的サービスの提供」に関する不安は低く、それが停電期間中に大きな社会的混乱がみられなかったことに貢献していることが議論された。
著者
岡田 禎人 鈴木 勝一 中山 隆 渡辺 治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1930-1933, 2004-12-01
被引用文献数
3

症例は54歳の女性で,下腹部痛を主訴に来院した.下腹部に腫瘤を認め皮膚が一部自壊し便汁が流出していた.また尿中にも便が混じっていた.腹部CTでは骨盤内の腫瘤と前腹壁に膿瘍腔を認めた.注腸ではS状結腸からガストログラフィンが腹腔内に流出していた.また膀胱鏡では膀院内に便汁を認めた.患者は20年以上子宮内避妊具(intrauterine contraceotivedevice;以下,IUD)を装着していた.IUDを除去する際に行った子宮内スメアでは放線菌塊を認めたため,IUDの長期装着に伴い子宮骨盤放線菌症を来たし,これがS状結腸,膀胱,腹壁に進展し瘻孔を形成したものと診断した.絶食,抗生剤投与を行ったが改善が見られなかったため,手術により痩孔の切除と膿瘍のドレナージを行った.術後経過は良好で,腹壁の膿瘍は消失した.術後7か月の現在再発を認めていない.