著者
上田 実 入江 一浩 渡邉 秀典 品田 哲郎 小林 資正 叶 直樹 岡本 隆一 松永 茂樹 井本 正哉 半田 宏 渡辺 肇 佐々木 誠 木越 英夫 西川 俊夫 石橋 正己
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

共同研究による本学術領域の推進により、多くの天然物の標的決定が行われた。これは、天然物化学者と生物学者の共同研究によって、ビーズテクノロジーの天然物への応用が拡大したこと、ならびに数多くの標的同定法が試行されたためである。これらの成果によって、多くの天然物が種標的と同時に複数のオフターゲットと結合することが明らかになった。天然物リガンドは、従前の理解のように、生体内において「鍵と鍵穴」の様に極めて特異性の高い作用機構を持つのではなく、生体内で「鍵束」のように機能し、複数の錠前と相互作用することを示している。本領域の研究成果によって、天然物リガンドの作用に関する理解は大きく変化したと言える。
著者
渡辺 肇
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

ミジンコは環境に応じて異なった生殖戦略をとることが知られている。適切な環境下では、単為生殖によりメスがメスを産むことにより急速に増殖する一方で、個体密度の上昇、餌の枯渇、日照時間の短縮、水温の低下など、その生存環境が悪化した場合には生殖戦略は単為生殖から有性生殖へと変化する。この有性生殖においてはまずメスがオスを産生し、このオスと交尾したメスは耐久卵と呼ばれる特殊な卵を産生する。この耐久卵は長期の乾燥にも耐えることから、生存戦略上有利に働いていると考えられる。特に個体密度が上昇した場合に生殖戦略が変化することは、ミジンコがその個体密度を何らかの方法で感知していることを示唆している。すなわち微生物などでよく知られ研究が進んでいるクオラムセンシングに類似したシステムがミジンコにおいても存在している可能性がある。このセンシングシステムの実態を明らかにするために、耐久卵を人工的に産生する条件を設定し解析を行った。耐久卵をつくる割合についていくつかの系統のミジンコについて検討を行い、ベルギー由来のミジンコが高率で耐久卵をつくることを明らかにした。およそ10Lの水槽でミジンコを一定時間培養し、過密状態になるまで飼育し耐久卵の産生を誘導した。耐久卵を高頻度で産生した水槽から飼育水を回収し、固相法により抽出を行った。生理活性については、通常はオス産生かおきない濃度で培養したミジンコの飼育水に溶出画分を添加することにより評価した。その結果、高密度でミジンコを培養した飼育水には、オス産生を誘導するインデューサーの存在が示唆された。さらにこの物質の同定を目指して、より大きな水槽を用いて培養を行い、オス産生誘導成分の精製を進めた。現時点では最終的な画分に至らないものの、バイオアッセイ法と部分精製法を確立したことから最終的な画分まで精製をすすめ最終的にその物質の同定をめざしている。
著者
三枝 正彦 南條 正巳 鳥山 欽哉 木村 和彦 渡辺 肇
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

肥効調節型肥料の発明は肥料を種子や根と接触施用することを可能にした。この方法では土の介在なしに目的とした肥料成分を直接植物根に供給することが可能であり、肥料の利用効率を飛躍的に向上させ、作物の収量と品質を飛躍的に改善することを明らかにした。またこの方法で、不耕起移植栽培や、不耕起直播栽培、接触施肥シードテープ栽培、スティック肥料茶栽培など収量、品質を低下させることなく、環境負荷を低減する画期的農業システムを開発した。