著者
鈴木 幸一 御領 政信 品田 哲郎 寺山 靖夫 吉岡 芳親 高橋 智
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

カイコ冬虫夏草ハナサナギタケの熱水抽出物から同定した新規の生物活性分子は、マウス海馬に発生したアストログリオーシス(神経膠症)修復の最有力候補であり、その分子メカニズムを解明することでヒトへの応用開発を進めた。その結果、培養アストロサイトに新規生物活性因子を添加することで、神経成長因子と神経成長因子誘導体の遺伝子が発現し、さらに神経初代細胞への効果として神経突起形成を誘導した。このin vitroの分子機構に基づいて、老化促進マウスの脳機能は向上し、ヒトのアルツハイマー型認知症患者の前臨床試験でも改善効果が確認され、新しい機能性食品と医薬品候補を提案した。
著者
上田 実 入江 一浩 渡邉 秀典 品田 哲郎 小林 資正 叶 直樹 岡本 隆一 松永 茂樹 井本 正哉 半田 宏 渡辺 肇 佐々木 誠 木越 英夫 西川 俊夫 石橋 正己
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

共同研究による本学術領域の推進により、多くの天然物の標的決定が行われた。これは、天然物化学者と生物学者の共同研究によって、ビーズテクノロジーの天然物への応用が拡大したこと、ならびに数多くの標的同定法が試行されたためである。これらの成果によって、多くの天然物が種標的と同時に複数のオフターゲットと結合することが明らかになった。天然物リガンドは、従前の理解のように、生体内において「鍵と鍵穴」の様に極めて特異性の高い作用機構を持つのではなく、生体内で「鍵束」のように機能し、複数の錠前と相互作用することを示している。本領域の研究成果によって、天然物リガンドの作用に関する理解は大きく変化したと言える。
著者
保野 陽子 品田 哲郎 大船 泰史
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP-23, 2013 (Released:2018-03-09)

【緒言】 ホモプシン類は、カビの一種Diaporthe toxica(以前はPhomopsis leptostromiformisと呼ばれていた)の代謝産物として単離・構造決定されたマイコトキシンである。1)このカビは、ルーピン(マメ科植物、キバナハウチワマメ)を主要な宿主としている。カビに汚染された植物をヒツジやウシなどの家畜が摂取すると、肝障害を引き起こすことが知られている。ホモプシンのラット(15日齢)におけるLD50は1.6 mg/kg(皮下注射)である2)。また、チューブリンに対して高い結合親和性を示し、微小管重合を協力に阻害する3)。 ホモプシン類にはA (1)、B (2)、D (3)の3種が存在している(Figure 1)。高度に不飽和化、官能基化された非天然型ヘキサペプチド構造を構造上の特徴とし、その内、3つのアミノ酸は13員環を形成し、残り3つは鎖状側鎖としてマクロラクタム環に連結している。1は最も官能基化が進んだ天然物である。2は1のクロロ基が水素に置換しており、3はデヒドロアスパラギン酸部位が還元された同族体である。これまでに2の全合成が1例報告されている。4)側鎖やマクロラクタム部の合成研究もいくつか報告されているが、ホモプシンの構成アミノ酸が全て非天然型であるために、その合成には多段階を要している。5) 我々は、他に類例のない特徴的な構造と生物活性に興味を持ち、未だ全合成が達成されていない1の全合成研究に着手した。本討論会では、側鎖の連続デヒドロアミノ酸部位の立体制御合成を中心としたこれまでの成果について報告する。【合成計画】 1を13員環部位とトリペプチド側鎖に切断し、それぞれを構築した後に連結する計画を立てた。始めにトリペプチド側鎖の合成を検討することとした。側鎖にはb,b-ジ置換デヒドロアミノ酸としてE-DIleが、b-モノ置換デヒドロアミノ酸としてE-DAspが連続して存在する。これらの立体選択的合成は報告されているものの、いずれも多段階を要している。5a, 5c)そこで我々が開発した、a-ジフェニルホスホノグリシネート4を用いた立体選択的なE-デヒドロアミノ酸エステル合成6)を経由する、効率的な合成法の開発に取り組んだ(式 1)。【E-選択的デヒドロアミノ酸エステルの合成】6) 1にはE-DAspが含まれている。これまでに報告されているa,b-デヒドロアミノ酸エステル合成法では、そのほとんどが熱力学的に安定なZ体を与えている。1に含まれるDAspはE体であるため、その立体選択的合成法を開発することとした。その結果、我々は、安藤法7)を組み込んだ4を用いた、E-選択的なデヒドロアミノ酸エステルの新規合成法を見出した(Scheme 1、式 2)。 4とのオレフィン化反応は様々なアルデヒドに対して良好に進行し、E-5を与えた。それらの結果は次のようにまとめられた。(1)芳香族またはa位にアミノ基を持つアルデヒドに対しては、NaH-NaIを用いることでE-5を高収率・高立体選択的に得られる。(2)アルキル基を持つアルデヒドは、DBU-MgBr2・OEt2を用いることでE-選択性が向上する。(3)a位に酸素官能基をもつアルデヒドでは(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
佐藤 努 藤橋 雅宏 品田 哲郎
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ゲノムマイニングおよび基質許容性解析・多機能性解析から新規テルペンの発見や非天然型テルペンの創出を達成することができた。特に、オノセロイド(スクアレンの両末端環化によって生合成されるトリテルペン)合成酵素を初めて見いだすことができた。加えて、香料や媚薬として利用される龍涎香の主成分アンブレインの酵素合成に成功した。マイコバクテリア由来の新型酵素の発掘や新規酵素の触媒機構解析も順調に進んだ。