著者
小林 とよ子 渡辺 邦友 上野 一恵
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1639-1644, 1992-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3

沖縄本島および南西諸島 (粟国島, 宮古島, 伊良部島, 多良間島, 石垣島, 小浜島, 西表島, 波照間島) の144地区における砂糖キビ畑を中心に採取した土壌290検体および黒砂糖の製糖工場において精糖工程から抜き取り採取した53検体についてボッリヌス菌と破傷風菌の分離を行った.ボッリヌスE型菌は沖縄本島の土壌135検体のうち, 北部地区の我地および安波と南部地区の豊見城の3ヵ所から検出された.ボッリヌスC型毒素は沖縄本島および粟国島, 伊良部島, 小浜島, 波照間島から証明されたが, 菌は分離されなかった.ボッリヌスA型菌は沖縄本島および南西諸島のいずれの土壌からも検出されなかった.破傷風菌の分布は地域により片寄りがみられ, 沖縄本島では北部より南部の方が高率に検出された.南西諸島では粟国島, 宮古島, 伊良部島, 多良間島, 西表島および波照間島の土壌から検出され, とくに伊良部島と多良間島では高率に検出された.黒砂糖工場における調査では, 波照間島の検体からボッリヌスC型毒素が証明された.破傷風菌は多良間島, 石垣島および小浜島の検体から検出された.しかし, 最終製品の黒砂糖からはボッリヌス菌, 破傷風菌は検出されなかった.
著者
三鴨 廣繁 和泉 孝治 伊藤 邦彦 玉舎 輝彦 渡辺 邦友 上野 一恵
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.712-717, 1993-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 4

Certain bacteria produce some carcinogens such as N-nitro compounds, n-butyric acid and n-valeric acid.From this point of view, the examination of intrauterine bacterial flora in patients with uterine endometrial cancer may provide important information.Twenty patients with the diagnosis of uterine endometrial cancer and 20 patients without complications other than myoma uteri were enrolled in the study. Enterobacteriaceae, Streptococcus agalactiae and anaerobic bacteria were mainly detected.The products of these bacteria might be considered to contribute to the initiation of endometrial carcinogenesis.Mixed abnormal flora between aerobic and anaerobic bacteria were detected in all patients with uterine endometrial cancer. It is suggested that uterine endometrial cancer provides favorable conditions for bacterial growth. Mixed abnormal bacterial flora also might influence the onset and growth of uterine endometrial cancer.
著者
清水 弘之 HO John H.C. KOO Linda C. 藤木 博太 松木 秀明 渡辺 邦友
出版者
岐阜大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37℃、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養…20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養…13.2 ±11.0対照者からの好気培養………5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養………10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37℃、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌は Streptococcus sanguis であることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。
著者
加藤 はる 加藤 直樹 渡辺 邦友 上野 一惠 坂田 葉子 藤田 晃三
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.12-17, 1995-10-20
参考文献数
14

3回の再発が認められた11歳の<I>Clostridium difficile</I>性腸炎例の計4回のエピソードにおける<I>C.difficile</I>分離株について, ウェスタンプロッティング (WB), パルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE), およびpolymerase chain reaction (PCR) によるタイピングを用いて検討した.エピソード2の際の分離株はどの3つのタイピング法を用いてもエピソード1の際の分離株と同じタイプであり, エピソード2はエピソード1と同じ株による再燃と考えられた.しかし, エピソード3の際の分離株は3つのタイピング法でエピソード1および2の分離株と異なるタイプを示したことから, 新しい菌株による再感染であると考えられた.エピソード4の際に分離された菌株はWBタイピングではエピソード1と2の際に分離された菌株と異なり, さらにエピソード3からの分離株とも異なるタイプであった.しかし, エピソード4からの菌株はPFGEタイピングでは細菌のDNAが抽出過程で破壊されタイピングができず, PCRタイピングではエピソード1および2からの分離株とはminor bandに違いが認められたのみで, エピソード1と2の分離株と同じタイプに分類された.これらのことからエピソード4はさらに新しい菌株による感染と考えられた.Cd顔ae起因性腸炎では治療にいったん反応しても, 再発が多いことが治療上大きな問題となっている.タイピング法は, このような再発が同じ菌株による再燃なのか, 新しい菌株による再感染なのかの検討を可能にし, <I>C.difficile</I>感染の治療や予防を行ううえで非常に有用であると考えられた.
著者
三鴨 廣繁 和泉 孝治 伊藤 邦彦 玉舎 輝彦 澤 赫代 渡辺 邦友 上野 一恵
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1090-1092, 1992-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

近年, 細菌性腟症の原因菌の一つとして, Mobiluncus属があげられており, この菌はSTDとも関係あるとされている. しかし, Mobiluncus属の培養は難しく, 日数を要するため, 細菌性膣症の患者の腟分泌物についてMobiluncus属を含めた系統的な細菌学的検索の報告は少ない. 今回我々は, WHOの細菌性腟症の診断基準を満たした20例の腟分泌物の培養検査を施行した. その結果, 細菌性腟症の診断基準を満たした20症例中の7症例 (35%) からMobiluncus属が検出された.それらのうち, Mobiluncus mulierisが5症例から, Mobiluncus curtisiiをま2症例から検出された. 以上の結果から, G. vaginalis, Mobiluncus属単独で病原性が発現され細菌性腟症となるわけではなく, G. vaginalisやMobiluncus属が, 他の好気性菌, 嫌気性菌とともに存在するときに細菌性腟症を引き起こすものと考えられた.