著者
門脇 佳代子 渡邊 泰伸
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.93-107, 2016-03-18

船形山神社は宮城県北部南端の大和町に位置する。この地域は,古代において色麻柵を中心とした色麻郡の領域に含まれる。船形山神社に御神体として伝わる金銅仏「菩薩立像」は,久野健氏,松山鉄夫氏の紹介によって韓半島由来のものであることが指摘され,多くの識者の検討により百済仏とされてきた。本稿では従来までの美術史的な見方に,考古学的な知見を加味して,本像をこの地にもたらした人々の存在に迫った。古墳の変遷,官衙の成立,生産遺跡の操業などを視座にみると,渡来系の移民の姿が垣間見られる。中でも色麻古墳群より出土する須恵器は湖西窯跡品と考えられ,多数の移民の存在を推定できる。また色麻町土器坂瓦窯跡から出土した雷文縁4葉複弁蓮華文軒瓦によって7世紀末~8世紀初頭に紀寺系の軒瓦を使用した官衙と寺院が成立したことがわかる。古代色麻郡は多賀城以前の7世紀後半代には北進・西進の拠点となり,活発な動きのあった地域でもある。よって,従来まで8世紀~9世紀と考えれていた「菩薩立像」の当地への伝来の時期を見直し,渡来系移民による7世紀後半に位置付けたい。
著者
渡邊 泰男
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.5, pp.285-289, 2016 (Released:2016-05-13)
参考文献数
36

システインのチオール基側鎖にイオウ原子が繋がったポリサルファー化システインなどの活性イオウ分子は,細胞のレドックス恒常性の維持に重要な生理活性物質である.実は,これまでに,ほ乳類動物では活性イオウ分子の存在が知られていたが,その生体におけるシグナル応答と制御メカニズムについては不明であった.近年,質量分析法によるプロダクト解析によって,ヒト組織・血漿中に低分子から高分子の多種多様な活性イオウ分子が存在することが発見された.その一部は既知のグルタチオンと比しても,極めて強力な活性酸素消去能を有することが分かってきた.興味深いことは,このポリサルファーシステインは,タンパク質の構成アミノ酸にも認められていることである.これまで,タンパク質構成アミノ酸中の特定のシステインのチオール基の化学修飾(酸化,S-ニトロシル化,S-グルタチオン化,アルキル化)が,そのタンパク質の機能制御に関わることが報告されていた.つまり,この〝再発見〟された活性イオウ分子は,これまでのシステインチオール基を介した酸化修飾に新たに,あるいは既に相乗りする形でタンパク質機能を制御していると考えられる.本稿では,活性イオウ分子のユニークな生理機能の1つである細胞内タンパク質の修飾について,これまでのシステインのチオール基の化学修飾との関連性について述べる.
著者
冨田 健夫 坂本 博 高橋 政浩 高橋 守 佐々木 正樹 植田 修一 田村 洋 渡邊 泰秀
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2005-03

LE-7A の開発中に発生したパルス的な強い横推力の原因究明と対処のため,旧NAL 角田ではコールドフロー可視化試験,CFD 及びサブスケール燃焼試験を実施してきた。その結果,LE-7A エンジンで発生した横推力が,LE-7A で新しく採用したノズル形状設計によって発生したRSS,およびフィルム冷却構造部分で発生した剥離の急速な移動という2つの現象により引き起こされたことを明らかにした。さらに,各現象と横推力に影響を与えるパラメータを洗い出した。この成果は改良型のエンジン設計に反映され,パルス的な横推力を発生しないノズル設計に役立った。
著者
門脇 佳代子 渡邊 泰伸
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.93-107, 2016

船形山神社は宮城県北部南端の大和町に位置する。この地域は,古代において色麻柵を中心とした色麻郡の領域に含まれる。船形山神社に御神体として伝わる金銅仏「菩薩立像」は,久野健氏,松山鉄夫氏の紹介によって韓半島由来のものであることが指摘され,多くの識者の検討により百済仏とされてきた。本稿では従来までの美術史的な見方に,考古学的な知見を加味して,本像をこの地にもたらした人々の存在に迫った。古墳の変遷,官衙の成立,生産遺跡の操業などを視座にみると,渡来系の移民の姿が垣間見られる。中でも色麻古墳群より出土する須恵器は湖西窯跡品と考えられ,多数の移民の存在を推定できる。また色麻町土器坂瓦窯跡から出土した雷文縁4葉複弁蓮華文軒瓦によって7世紀末~8世紀初頭に紀寺系の軒瓦を使用した官衙と寺院が成立したことがわかる。古代色麻郡は多賀城以前の7世紀後半代には北進・西進の拠点となり,活発な動きのあった地域でもある。よって,従来まで8世紀~9世紀と考えれていた「菩薩立像」の当地への伝来の時期を見直し,渡来系移民による7世紀後半に位置付けたい。