著者
湯川 隆子 清水 裕士 廣岡 秀一
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.131-150, 2008-03

本研究の目的は、大学生におけるジェンダー特性語の認知がここ20年でどのように変わったかを検討することである。1970年代と1990年代に男女各1000人の大学生を対象に、50語のジェンダー特性語について同一の分類テストと連想テストを実施した。主な結果は以下のようであった。(1)男性あるいは女性の典型的ジェンダー特性語として分類された特性語の数は、1970年代より1990年代のほうが少なくなっていた。(2)ジェンダー特性語に対する連想反応語は、1970年代でのほうが1990年代よりも典型的なステレオタイプを表すと見られる内容が多かった。(3)近年の日本の大学生においては、ジェンダー特性語に対し、ジェンダー・ステレオタイプに沿って反応する傾向が減少してきている。
著者
湯川 隆子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.159-170, 1981-03-31

本研究は,「生徒の教師への同一視が学習に対するひとつの動機づけとなる」という仮説にあてはまる現象が現実にどれほど存在しているのかを調べる目的で行われたものである.具体的には,(1)学習の動機づけに結びつくような教師への同一視経験が過去にあったかを大学生女子に自由記述という形で回想的に問うこと,そして(2)その記述内容が筆者の作成した同一視スケール(CMS)にどの程度反映されるか,尺度の有効性を検討すること,の2つが目的である.同一視経験を問う質問票(自由記述形式)および同一視スケールを施行した結果は以下のようなものであった.(1)自由記述の分析より,全Ss (104名)の約75%のSsが過去に学習の動機づけに結びつくような同一視経験をもっているとみられた.これらのSs(P群:78名)の記述内容は大別して次の3つに分けられた.(1)その教師が担当している教科への興味が高まり意欲的に取り組んだというもの.(2)担当教科への積極的取り組みだけでなく,その教師を通して教師という職業に憧れ,希望するようになったというもの.(3)その教師の行動特徴のある側面を自発的模倣によって取り込んだというもの.(2)(1)の場合とは反対に「きらいな教師」が過去にいたという経験のあるSsは30名おり(N群),彼らの記述内容は,(1)その教師のせいでその担当していた教科がきらいになった,(2)反面教師的影響を受けた(その先生のようにはならない)というものが多かった.(3)(1),(2)に示された記述内容と同一視スケール(CMS)との対応性については,P群はN群より有意に同一視得点が高いという結果であった.すなわち,本調査でみる限り,筆者の作成した同一視スケールは実際の同一視現象を反映しうる有効な尺度となりうることが示唆された.〈追記〉本稿では,Ssの教師に対する認知,評価を,筆者の仮説に沿うような知的側面に主に焦点を絞って分析したが,Ssの記述の中には,いわゆる「理想の教師像」としてよく報告されているような内容も頻繁にみられた.これらは本稿では筆者の分析の意図を明確にする目的であえて本文には入れず表化するに止めた.それらは〈Table 6, 7〉に掲載されている.本資料は別の視点からみれば興味深い内容も含まれていたことを付記しておきたい.