著者
柴田 玲子 高橋 惠子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.37-47, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
41
被引用文献数
2

人間関係をソーシャル・ネットワークとしてとらえて, 小学生の人間関係についての母子の報告のズレを検討するとともに, 母子の報告のズレと子どもの適応との関連を検討した。研究協力者は小学2~6年生(女児が47%)とその母親337組である。子どもの人間関係は集団式絵画愛情の関係テストで測定することにし, 子どもとその母親から独立に回答を得て母子の報告のズレを検討した。子どもの適応は小学生版QOL尺度によった。その結果, (1) 母子ともに愛情の要求の対象とする重要な他者を複数種あげたが, 子どもより母親の方があげた種類が多かった, (2) 子どもが報告した以上に母親は子どもにとって母親が重要だとし, 特に, 生存や安心を支える中核的な心理的機能を果たしているであろうとした, (3) もっとも頻繁に挙げられた対象が誰であるかを指標にして親しい人間関係を類型化すると, 類型についても母子の報告のズレは大きく, 母親の58%が子どもは母親型であろうとしたが, 子どもは24%にすぎなかった, (4) 母子の報告のズレの大きさは子どものQOLの低さと関連した。これらの結果にもとづいて, 子どもの人間関係における母子のズレの意味について論じた。
著者
平井 美佳 高橋 惠子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.327-335, 2003-10-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

This study examined how Japanese children resolve a conflict between their best friend and a newly-arrived transfer student; and whether their concepts of friendship and promise developed as those of Western children. A total of 125 children and college students, seven to 24 year old, of both genders were individually asked to report their moral understanding of friendship in a semi-structured interview. A Selman-type friendship dilemma of positing a conflict between a newcomer and their best friend was used. As expected, the average developmental stages scores, indicating understanding of the meaning of “friend” increased with the participant's age, in much the same way as in Western children. However, many resolved the conflict through a different strategy from those of their Western counterparts. They made an inference regarding the newcomer's emotion, seriously took into consideration, and expressed preference to solve the problem through the three playing together. The role of social representation mediating culture effects on social behavior discussed.
著者
平井 美佳 神前 裕子 長谷川 麻衣 高橋 惠子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.56-69, 2015 (Released:2017-03-20)
参考文献数
34

本研究は,わが国の未就学児に必須な養育環境とは何かについて,人々の持つ素朴信念を検討し,相対的貧困の指標とされる社会的必需品を考える一助とすることを目的とした。研究1では,先行研究を検討し,専門家および未就学児の親の意見を加味して40項目から成る「乳幼児に必須な養育環境リスト(What Children Need List:WCNリスト)」を作成した。未就学児の母親484名を協力者として,自分の子どもの養育環境の充足の程度を確認したところ,37項目で合意基準(50%以上)を超え,また,主観的経済状態を統制した上でも養育環境が充たされているほど子どもの発達が良好であるという関連が見出され,WCNリストの妥当性が確認された。研究2では,WCNリストを用いて未就学児の親503名(2a),性別と居住地域を人口動態に合わせた全国の市民1,000名(2b),および,未就学児のひとり親74名(2c)を協力者として,「現在の日本の子どもが健康に育つために必要である」と考える程度について尋ねた。その結果,合意基準を超えた項目は,2a~2cのそれぞれで19項目,9項目,30項目とサンプルにより異なり,特に未就学児を養育している当事者である,女性である,年代が若いことが合意を促進する要因であることが明らかになった。この結果について,本研究の限界と将来の課題を論じた。