- 著者
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平山 順子
柏木 惠子
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.3, pp.216-227, 2001-11-15
- 被引用文献数
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3
本稿は,核家族世帯の中年期の夫と妻554名(夫婦277組)を対象に,夫婦間コミュニケーションの様態を検討した。夫と妻とをコミュニケーションを構成する2つの単位(個人)と捉え,夫と妻とのコミュニケーション態度の相違を検討した。加えて,相手(配偶者)へのコミュニケーショし態度と夫婦の学歴及び妻の経済的地位との関連性を検討した。主な結果は次のようである。(1)夫婦間コミュニケーション態度は,「威圧」「共感」「依存・接近」「無視・回避」の4次元から成る。(2)相手へのコミュニケーション態度得点(自己評定)を夫婦間比較した結果,ポジティブなコミュニケーション態度である「共感」と「依存・接近」では妻のほうが有意に高く,他方,ネガティブなコミュニケーション態度である「無視・回避」と「威圧」では夫のほうが有意に高かった。また,相手へのコミュニケーシション態度のうち,夫に最も顕著な態度は「威圧」,妻に顕著な態度は「依存・接近」であった。(3)夫・妻とも,相手へのコミュニケーション態度について,夫婦の学歴による差は見出されなかった。(4)夫の妻へのコミュニケーション態度のうち,「共感」において妻の経済的地位による差がみられ,妻の経済的地泣か高いほど,夫は妻に対して共感的なコミュニケーション態度をとる傾向が明らかにされた。夫と妻とが対照的に異なるコミュニケーション態度をとる背景には,性的社会化の影響,男女間の社会的・経済的地位の格差があると推察される。