著者
濱中 春
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1800年前後のドイツ語圏における気象学史を、リヒテンベルク、アルニム、ゲーテの気象学との取り組みを通して見直した。気象学の近代化に際しては、観測機器の改良や観測網の構築と並んで、天気記号やグラフ、等値図などの視覚的な表象も考案されたが、当初はそれらの科学的な意味自体が省察の対象となるとともに、それらの表象の利用方法も確立されていなかった。このように、1830年頃まで気象学は、数学的な抽象化と視覚的な具体化とのはざまで揺れ動いていたことを明らかにした。
著者
濱中 春
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

18世紀後半のドイツの物理学者・著述家ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(1742-99)の諸活動(美術史、観相学、自然科学、スケッチ、雑誌メディア)を通して、この時代の知の形成と伝達における言語とイメージの相互作用を考察した。近世から近代への移行期のヨーロッパにおいては多くの領域で知の枠組みの変化や転換が起こったが、それは言語とイメージの機能および相互関係にみられる多様性と変動の中で展開したものであることが明らかになった。
著者
小黒 康正 浅井 健二郎 小黒 康正 杉谷 恭一 小川 さくえ 増本 浩子 桑原 聡 恒吉 法海 東口 豊 恒吉 法海 福元 圭太 杉谷 恭一 小川 さくえ 坂本 貴志 増本 浩子 濱中 春 山本 賀代 岡本 和子 北島 玲子 桑原 聡 クラヴィッター アルネ オトマー エーファ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ドイツ現代文学は、言語に対する先鋭化した批判意識から始まる。とりわけホーフマンスタール、ムージル、カフカの文学は、既存の言語が原理的機能不全に陥っていることを確信しながら、言語の否定性を原理的契機として立ち上がっていく。本研究は、ドイツ近・現代文学の各時期の代表的もしくは特徴的な作品を手掛かりとして、それぞれの作品において<否定性>という契機の所在を突き止め、そのあり方と働きを明らかにした。
著者
濱中 春
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今年度は、1800年頃の教育書や医学書における庭園や造園に関する記述を収集し、分析した。主要なテクストは、十八世紀の教育学の重要な潮流を形成するとともに、デッサウという、当時のドイツにおいて庭園文化が先進的に発展した場所を基点とする汎愛主義教育関連の著作である。それらの言説における庭園の位置づけの特徴は、教育の一環としての造園や園芸作業および植物学という側面がクローズアップされていることである。それは具体的には、当時の教育学や医学において論争されていた子どもの性教育、とくにオナニーの問題に関連し、汎愛主義教育においては、庭園の植物を性教育の材料とすることや、造園や園芸作業をオナニーの防止手段とすることが示されている。十八世紀にはしばしば、子どもは植物に、教育はその栽培にたとえられているが、汎愛主義教育には、その子どもの身体という自然を訓育するために庭園という自然が利用されるという、「自然」の二重の規律化が見出される。なお、現在はこれらの考察結果を論文としてまとめる作業を行っており、その成果を学術雑誌に発表する予定である。三年間の研究を総括すれば、1800年前後のドイツにおいては、「自然」という概念が、自然環境だけではなく、身体、健康、子どもなど多様な対象にわたって適用されている。それは、悪しき文明の対極としてポジティヴな価値を持ち、かつ人間による制御の対象でもあるという両義的な概念である。風景庭園という人工的につくりだされた自然の空間は、まさにそのような両義的な自然概念を具現化した空間であり、そこに、もう一つの「自然」である身体(健康や子どもの身体を含む)の問題系が交差することによって、この時期の庭園観に身体性のさまざま局面が浮上してくることになったということができる。