著者
片山 忠久 堤 純一郎 須貝 高 石原 修 西田 勝 石井 昭夫
出版者
九州大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

夏期の都市熱環境における水面・緑地の効果に関し、実測調査を主とした総合的な研究を行い、以下のような成果を得た。1.海風の冷却効果に関して、風向・風速と気温の3地点同時の長期観測を実施した。陸風から海風への変化により、気温上昇の緩和あるいは気温の低下が認められ、海岸からの距離によって異なるが、平均的に3℃程度に達する。2.河川上と街路上における熱環境の比較実測を行った。河川は風の通り道としての役割を果しており、その水面温度も舗道面温度などに比較して最大30℃程度低い。その結果、海風時の河川上の気温は街路上のそれに比較して低く、その気温差は海岸からの距離により異なるが、最大4℃に達する。3.満水時と排水時における大きな池とその周辺の熱環境の分布を実測した。池の内部と周囲には低温域が形成されており、その外周200〜400mまでの市街に対し0.5℃程度の気温低下をもたらしている。その冷却効果は池の風上側よりは風下側により広く及んでいる。4.公園緑地内外の熱環境の分布を実測した。公園緑地内はその周辺市街に比べて最大3.5℃低温である。また公園緑地内の大小に依らず、緑被率、緑葉率に対する形態係数が大きくなれば、そこでの気温は低下する傾向にある。5.地表面の粗度による風速垂直分布および地表面温度分布を境界条件として、LESとk-ε2方程式モデルを用いて2次元の市街地風の数値シミュレ-ションを行い、市街地の熱環境を数値シミュレ-ションにより予測できる可能性を示した。6.建物の形状や配置を考慮した地表面熱収支の一次元モデルを作成し、都市の大気境界層に関する数値シミュレ-ションを行い、接地層の気温の垂直分布について実測値とよく一致する結果を得た。建物高さ、人工廃熱、水面・緑地の面積率などに関してパラメ-タ解析を行い、都市の熱環境の定量的な予測を行った。
著者
萩島 理 片山 忠久 林 徹夫 谷本 潤
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.516, pp.79-85, 1999-02-28 (Released:2017-02-03)
参考文献数
12
被引用文献数
5 6

Surface temperature distributions of tree crowns were examined with thermo-couples and infrared thermal images in June and October. As to the temperature difference between the crown surface and the ambient air, thermo-couples show partially higher surface temperatures in the daytime by 8℃ at the highest. However the temperature difference obtained with the thermal images ranges from -2〜0℃ to -2〜2℃. Since the thermal images directly show the radiative temperature distribution, it is concluded the average radiative temperature on the tree crowns is almost as same as the ambient air temperature.
著者
大黒 雅之 アレンズ エドワード デディア リチャード チャン ウイ 片山 忠久
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.561, pp.31-39, 2002
被引用文献数
3 17

1.はじめに 無風時の全身の着衣量についてはすでに多くの基準の中に整理されている。また、裸体表面については、無風・有風時の部位別の対流熱伝達の研究例も多い。しかし、部位別の着衣表面での対流熱伝達率や着衣熱抵抗に関する研究は少ない。2.研究方法 (1)従来法による着衣熱抵抗の評価 着衣抵抗を求めるに当たり、従来法は(1)、(2)式に基づいている。つまり、裸体表面における空気層抵抗をもって、着衣表面の空気層抵抗とする方法が取られている。(2)直接法による着衣熱抵抗の評価 人体各部の熱抵抗は(3)式で表され、サーマルマネキンで熱量と皮膚温度が解っていれば、着衣の表面温度を測定することにより、着衣抵抗が直接算出できる。(3)対流熱伝達率の評価 サーマルマネキンにおける人体各部の熱損失は(4)(5)式で表され、各部の総合熱伝達率から放射熱伝達率を差し引くことにより各部の対流伝達率が算出できる。(4)放射熱伝達率の評価 サーマルマネキンにおける人体各部の放射熱伝達率は(6)式で表され、放射率と有効放射面積率より各部の放射熱伝達率が算出できる。3.計測方法 (1)サーマルマネキン 計測に用いたマネキンは皮膚温度可変型の女性体のサーマルマネキンで、主に室内の不均一温熱環境の評価用として開発されたものである。部位の分割数は16であり、表面積は表-1、有効放射面積率は表-2のよう求められている。制御は(7)式に基いており、設定温度を変更することにより皮膚温を変更できる。(2)着衣 計測に用いた着衣は下着、綿100%の長ズボン、および綿100%の長袖シャツ、靴下、靴である。頭にはセミロングのかつらを取りつけ、着衣の一つとして評価した。また、人体各部の着衣からの熱損失量を明確にするため、マネキンの各部位の境界をビニールテープで縛り、着衣内での部位間の熱の移動がないよう配慮した。図-1に写真を示す。(3)着衣面積率 着衣面積率は写真法により、表-3のように求められている。(4)実験手順 制御環境室内にマネキンを設置した。マネキンの周囲には、天井から布を垂らし、気流を防ぐとともに、室温と放射温度を一致させた。座位の場合はメッシュチェアーを使用し、自然に背もたれにもたれさせた。表面温度測定は、熱画像をマネキン正面と背面から測定した。熱画像を解析することにより、各部位の正面と背面の着衣表面温度を求め、それらを平均することにより各部位の着衣表面温度とした。実験条件としては、裸体時についてはマネキンの設定温度を20、25、30、36.5℃、着衣時については25、30、36.5℃で実験を行った。室温はおよそ15℃とした。4.結果および考察 (1)対流熱伝達率 図-2に立位の裸体時と着衣時の対流熱伝達率を示す。裸体では、足、下腿で特に大きい。また、手や前腕でも胸や背中に比べ大きい。着衣時では、全般的に裸体時より大きくなる傾向がある。特に頭や胸では裸体時の2倍近くになる。さらに、腰、胸、背中で温度差の増大に伴う対流熱伝達率の急激な増加が見られる。図-3に座位の裸体時と着衣時の対流熱伝達率を示す。着衣時では、立位と同様に全般的に裸体時より大きくなる傾向がある。特に腰、頭、胸、背中では裸体時の2倍以上になり、立位の時よりさらに大きな着衣の影響がみられる。全身でみても、立位・座位とも着衣の影響は大きい。また、立位の方が着衣時における温度差の影響が顕著である。(2)対流伝達率のモデル 表-5、6に対流伝達率のモデルを示す。モデルはべき乗則(h_c=a(v)^b)または対数則(I_<cl>=a ln(v)+b)で近似される。裸体部位別では、円筒に対するべき指数0.25に比べ、大きくなる傾向があり、結果として、全身立位が0.43、全身座位が0.59となった。着衣時では、裸体時に比べ全身立位が41%増加、全身座位では53%増加となった。(3)着衣熱抵抗 着衣熱抵抗の測定結果を図-5〜7に示す。立位では、温度差の増大に件い、着衣抵抗は低下する。特に着衣熱抵抗の高い頭、胸、背中、腰で低下が著しい。一方座位では、それらの部位を含め着衣抵抗の低下は立位と比べ緩やかである。全身でも同様の傾向がみられた。また、着衣抵抗の算出方法による差異が見られ、特に、部位別では非常に大きな差になる場合がみられる。5.まとめ 無風時の部位別の着衣抵抗と着衣表面の対流熱伝達率を着衣の表面温度計測により求めた。着衣時は裸体時に比較して対流熱伝達率の増大が認められた。特に頭、腰、胸、背中で大きくなる傾向がみられ、全身では40〜50%程度の増大がみられた。着衣熱抵抗については、算出方法による差異が見られ、特に部位別では非常に大きな差になる場合がみられた。最後に、実用に供するため、対流熱伝達率について近似モデル式を作成した。なお、本論文で求めた対流熱伝達率や着衣抵抗は通気の影響を含むものであり、同タイプの着衣にのみ適用すべきである。
著者
堤 純一郎 片山 忠久 石井 昭夫 西田 勝 北山 広樹
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.389, pp.28-36, 1988-07-30 (Released:2017-12-25)
被引用文献数
1 1

Passive utilization of natural energy is one of the most reasonable way to improve the urban thermal environment in the warm season. The sea-land breeze is an appropriate energy source for this purpose. Statistical method to extract and express the sea-land breeze component from the wind data and the relation between that and the solar radiation data are described in this paper. The AMeDAS and the SDP data, from 1980 to 1984, in 12 cities which are scattered in the whole country are used. The analysis period, which means the warm season, is fixed on condition that the 7-day moving average of daily mean air temperature is above 20℃. The sea-land breeze axis is decided from the wind rose in the analysis period. The sea-land breeze component means the wind vector component of this axis. Sea breeze hours and land breeze hours are fixed by the average sea-land breeze component at each time. The characteristics of the wind direction and speed in the sea and the land breeze hours correspond to the general nature of the sea-land breeze. The sea-land breeze intensity is defined as the difference between the average sea-land breeze component in the sea breeze hours and that in the land breeze hours. The sea-land breeze stability is defined as the ratio of the sea-land breeze intensity to the sum of the average scalar speed in these hours. The relation between the solar radiation and the sea-land breeze intensity or the sea-land breeze stability is examined.
著者
大黒 雅之 アレンズ エドワード デディア リチャード チャン ウイ 片山 忠久
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.561, pp.21-29, 2002
被引用文献数
2 22

1.はじめに 裸体人体については、部位別の対流熱伝達の研究例も多い。しかし、着衣人体について、有風時を対象として部位別の着衣表面での対流熱伝達率や着衣熱抵抗を測定した例は非常に少ない。2.研究方法 (1)直接法による着衣熱抵抗の評価 人体各部の熱抵抗は(1)式で表され、サーマルマネキンで熱量と皮膚温度が解っていれば、着衣の表面温度を測定することにより、着衣抵抗が直接算出できる。(2)対流熱伝達率の評価 サーマルマネキンにおける人体各部の熱損失は(2)(3)式で表され、各部の総合熱伝達率から放射熱伝達率を差し引くことにより各部の対流伝達率が算出できる。(3)放射熱伝達率の評価 サーマルマネキンにおける人体各部の放射熱伝達率は(4)式で表され、有効放射面積率より各部の放射熱伝達率が算出できる。3.計測方法 (1)サーマルマネキン 計測に用いたマネキンは皮膚温度可変型の女性体のサーマルマネキンで、主に室内の不均一温熱環境の評価用として開発されたものである。部位の分割数は16であり、表面積は表-1、有効放射面積率は表-2のよう求められている。(2)着衣 計測に用いた着衣は下着、綿100%の長ズボン、および綿100%の長袖シャツ、靴下、靴である。頭にはセミロングのかつらを取りつけ、着衣の一つとして評価した。また、人体各部の着衣からの熱損失量を明確にするため、マネキンの各部位の境界をビニールテープで縛り、着衣内での部位間の熱の移動がないよう配慮した。図-1に写真を示す。(3)着衣面積率の計測 立位マネキンを対象とし、2m離れた位置から、裸体、着衣時の双方について、水平方向に45°毎に8方位から撮影し、投影面積の比を平均することにより着衣面積率を算出した。(4)風洞実験手順 風洞の測定部(高さ1.5m、幅2.1mにマネキンを設置した。風洞上流側には、乱れをつくるための高さ1m、直径0.5mの円柱を測定部の上流7mの位置に設置した。表面温度測定は、熱画像をマネキン正面と背面から測定した。熱画像を解析することにより、各部位の正面と背面の着衣表面温度を求め、それらを平均することにより各部位の着衣表面温度とした。実験条件としては、裸体および着衣のマネキンそれぞれについて、正面および背面から風を当てて測定した。設定風速は0.2、0.5、0.8、1.2、2.0、3.0、5.5m/s (裸体では0.8、2.0、5.5m/sのみ)である。4.結果および考察 (1)着衣面積率 部位毎の着衣面積率を表-3に示す。(2)立位の対流熱伝達率 図-2(a)(b)に立位での前方からの風および後方からの風の時の、裸体時と着衣時の対流熱伝達率を示す。裸体では、手の値が大きい。着衣時は全般的に裸体時より大きくなる傾向がある。特に頭や風に対抗した時の胸や背中では裸体時の2倍以上になる。0.8m/s程度ではその差は小さいが、風速が大きくなるに従い、その差は大きくなる傾向にある。その差は正面からの風の時の頭が最も大きい。その他の部位では正面からの風の時の胸、および背後からの風の時の背中での差が他の部位に比べると大きい。(3)座位の対流熱伝達率 図-3(a)(b)に座位の対流熱伝達率お結果を示す。着衣時については、立位と同様裸体時より大きくなる傾向がみられる。着衣時については、立位と同様裸体時より大きくなる傾向がみられる。立位との主な差異は、前方からの風で大腿での裸体時との差が大きい点と、後方からの風の時に頭の裸体時との差が小さい点である。全身の値で比較すると裸体時、着衣時とも、立位と座位あるいは前方からの風と後方からの風で大きな差はみられない。一方、着衣時の値は裸体時より30〜50%大きい。(4)着衣熱抵抗 着衣熱抵抗の測定結果を図-5、6に示す。前方からの風での部位別(図-5)では、大腿、胸、上腕では座位の方が熱抵抗が高く、腰、頭、前腕では座位の方が低い。全身(図-6)の値で比較すると立位と座位で大きな差はみられない。(5)対流熱伝達率と着衣熱抵抗のモデル 表-4〜7に対流伝達率のモデルを示す。モデルはべき乗則(h_c=a(v)^b)で近似される。部位別ではべき指数bが0.4〜0.8とばらつく。全身ではべき指数0.60〜0.69と立位と座位、風向、裸体と着衣で大きな差はない。対流熱伝達の裸体と着衣の差は主に定数aに反映されている。着衣熱抵抗のモデルを表-8、9に示す。モデルは対数則(I_<cl>=a ln(v)+b)で近似される。部位別では定数aが-0.01〜-0.26とばらつく。全身では-0.076〜-0.096と立位と座位、風向、裸体と着衣で特に大きな差はない。5.まとめ 有風時の部位別の着衣抵抗と着衣表面の対流熱伝達率を着衣の表面温度計測により求めた。着衣時は裸体時に比較して対流熱熱伝達率の増大が認められた。また、部位別および全身について対流熱伝達率と着衣抵抗の近似モデルを示した。本論文で求めた対流熱伝達率や着衣抵抗は通気の影響を含むものであり、同タイプの着衣にのみ適用すべきである。
著者
片山 忠久 石井 昭夫 西田 勝 堤 純一郎 森川 明夫 橋田 光明
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.372, pp.p21-29, 1987-02
被引用文献数
7

Simultaneous observations of the profiles of wind velocity and air temperature are conducted at three points in an urban area with a large pond by the kytoons. From the results of observations, convective heat flux from the ground surface to air is calculated by the traverse-method. Heat flux from the pond is negative, that is, cooling. The relation between convective heat transfer coefficient and wind velocity is obtained in extensive built-up areas. Thermal environment is observed, formed at the height of 1 meter from the ground surface in the built-up area and the large pond. New standard effective temperature of the ASHRAE, SET, is calculated as the over all thermal index at the both sites. The effects of a shade tree and wisteria trellis on thermal environment are discussed.
著者
谷本 潤 藤井 晴行 片山 忠久 萩島 理
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.547, pp.255-262, 2001
被引用文献数
10 2

An ultimate objective of this study is not only to depict the reality of academic society, possibly embracing some sort of ambiguous degrade in its stable and established environment, but also to propose a certain strategy to avoid this, overcome this and build a better preferable future. First of all this study, in this report, a really challenging trial to build a human-academic society model dealing with the future prospect of its activity based on so-called Complexity Model, was done. Mathematical framework of the model was precisely described. And actual calculations of its artificial society were carried out on a particular Discrete Type Simulator. Results of simulations led to consider much interesting and marvelous facts.
著者
萩島 理 谷本 潤 片山 忠久 大原 健志
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.550, pp.79-86, 2001
被引用文献数
26 10

As a marvelous predicting and estimating methodology for the Heat Island in an urban area, Architecture-Urban-Soil Simultaneous Simulation Model, AUSSSM was entirely established. The revised AUSSSM is evolved from the former proposed AUSSSM by not only replacing but also newly adding several sub-models. Each sub-model expresses complex phenomenon such as one-dimensional vertical distribution of air temperature, wind velocity and humidity ratio in urban canopy, artificial heat generation from buildings and traffic, evapotranspiration from vegetation, transient evaporation from artificial surfaces shortly after precipitation, dynamic performance of cooling load and HVAC system in buildings. These sub-models have been developed in authors' former works. One of the most important features of AUSSSM is the fact that each sub-model has relatively same level of its accuracy, which leads practically correct and significant solution under the constraint of limited computational resource. And following theoretical description, the Standard Solution assuming a business district in Tokyo was presented.