- 著者
-
田中 伊知郎
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.17, 2005
ニホンザルは毛づくろい中にシラミ卵をつまみ上げて食べる。その行動の形成過程B過程を調べるため、毛づくろい中におけるつまみ上げる行動について、餌付け群である志賀A-1群で横断的調査を行った。デジタルビデオカメラを用いて毛づくろい行動を撮影L録し、DVD-Rに落として、DVDプレイヤーで静止tスローを使ってつまみ上げ行動を解析した。コドモではつまみ上げた後、つまみ上げをやめ、別のところを探索することが多かったが、年齢が上昇するにつれてつまみ上げたものを食べる割合が上昇した。このつまみ上げた後でつまみ上げたものを食べる割合は年齢と相関した(Kendall順位相関、P< 0.01)。また同じ年齢群内での食べる割合の分散も年齢が上昇するにつれて、小さくなった。一方、性別による違いは見られなかった。言い換えると、コドモではよく見られるシラミ卵処理以外のつまみ上げるs動が、オトナになると毛づくろいの中で起こらなくなっていく。まとめると、毛づくろい中のつまむ行動は、大人になるにつれて、シラミ卵処理行動に収れんする。食べる割合は、子供期に個体間分散が大きく、成長するにつれて個体間分散が小さくなることから、摘み上げるものがシラミ卵になるようにニホンザルが学習獲得していくのでないかと示唆された。