著者
杉山 幸丸 三谷 雅純 丸橋 珠樹 五百部 裕 ハフマン マイケル A 小清水 弘一 大東 肇 山越 言 小川 秀司 揚妻 直樹 中川 尚史 岩本 俊孝 室山 泰之 大沢 秀行 田中 伊知郎 横田 直人 井上(村山) 美穂 松村 秀一 森 明雄 山極 寿一 岡本 暁子 佐倉 統
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2000-09

食う-食われる,エネルギー収支,どうやって子孫を残すか……サルたちはさまざまな生物的・非生物的環境とどのように関わりながら暮らしているのだろうか.本書によって,霊長類社会の研究者はその社会の生物学的背景をより深く理解でき,他の生物の生態研究者は霊長類における生態学的研究の最前線に触れられる.
著者
小川 秀司
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-158, 2010-12-20 (Released:2011-02-01)
参考文献数
31

I studied huddling groups of Japanese macaques (Macaca fuscata) in the Arashiyama E troop at the “Arashiyama Monkey Park Iwatayama” in Kyoto, central Japan. Japanese macaques made physical contact with other individuals and formed huddling groups when air temperatures were low. The 99-101 adult females and 26-36 adult males in the study troop formed 345 huddling groups during 42 scan samplings in the winter of 2001, and 376 huddling groups during 52 scan samplings in the winter of 2002. The average size of huddling groups was 2.34 (range: 2-7) individuals in 2001, and 2.31 (range: 2-6) individuals in 2002. There was no huddling group of two males. Females more frequently huddled with females than with males. Two maternal kin related females huddled more frequently than unrelated females did. Mother-daughter pairs huddled most frequently. Two individuals usually huddled ventrally-ventrally, ventrally-laterally, and ventrally-dorsally. The distribution of huddling group sizes shows that the approaching individuals did not choose a particular size of huddling. However, the approaching individuals chose locations where they simultaneously contacted with two individuals 1.5 times more frequently than locations where they contacted with only one individual. This choice made the shape of huddling groups triangular and diamond-shaped more frequently than expected. By decision making of each individual, specific patterns emerged in the shape, composition, and position of each individual in huddling groups. As well as huddling behaviors, two and more primate individuals were involved in various social interactions. During the interactions, primates make their decision based on complex cognitive mechanisms and non-linear functions, compete and cooperate with the same opponents in their troop, and predict and manipulate the opponent’s behavior. These traits in social interactions among primates might make their society more complex and interesting.
著者
小川 秀司 CHALISE Mukesh K. MALAIVIJITNOND Suchinda KOIRALA Sabina 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第33回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.66-67, 2017-07-01 (Released:2017-10-12)

マカク属における社会行動の進化を考察するために,アッサムモンキー(Macaca assamensis)とチベットモンキー(Macaca thibetana)のブリッジング行動や他の親和的社会行動の種類や頻度を比較した。アッサムモンキーは(1)タイのチェンライにあるTham Pla寺院(北緯20°20′,東経99°51′,高度843m)で2009~2012年にと,(2)ネパールのカトマンドゥー近郊のShivapuri-Nagarjun国立公園西部のNagarjun地域(北緯27°44′,東経85°17′,高度1300~2100m)で2014~2015年に,チベットモンキーは中国安徽省の黄山(北緯30°29′′,東経118°11′,高度700~800m)で1991~1992年に,餌づけされた複雄複雌郡内の数頭のオトナオスとオトナメスを交尾季と出産季にそれぞれ各10時間個体追跡した。ブリッジング行動は,チベットモンキーと(1)タイのアッサムモンキーにおいて観察されたが,(2)ネパールのアッサムモンキーにおいては観察されなかった。(ブリッジング行動とは,2頭のオトナが一緒にコドモを抱き上げる行動であり,その際オトナは抱き上げたコドモの性器をしばしば舐めたり触ったりする。コドモを抱いているオトナに別のオトナが近づいていって行われる場合と,あるオトナが抱いたコドモを別のオトナに運んでいって行われる場合がある。)また,オトナオス間のペニスサッキング行動は,チベットモンキーにおいて観察されたが,(1)と(2)両国のアッサムモンキーにおいては観察されなかった。アッサムモンキーとチベットモンキーが含まれるマカク属のシニカ種群においては,まずアッサムモンキーのうちの東の分布域に生息する個体群においてブリッジング行動が生じ,そこから分岐していったチベットモンキーにおいてはさらにオトナオス間のペニスサッキング行動が加わったと考えることが可能であろう。
著者
小川 秀司 伊谷 原一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第21回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.47, 2005 (Released:2005-06-07)

タンザニアにおけるチンパンジー(Pan troglodytes)の生息地の現状について報告する。 1960年代に行われた調査によると,東アフリカのタンザニア西部にはヒガシチンパンジー(Pan t. schweinfurthii)がタンガニイカ湖に沿って,ゴンベ国立公園・リランシンバ地域・マハレ国立公園からカサカティやフィラバンガを経てチンパンジー分布の東限であるウガラ川に至る地域一帯(カロブワ地域・マハレ国立公園・ムクユ地域・マシト地域・ウガラ地域)・ワンシシ地域で生息しているとされていた(Kano, 1972)。われわれは1994年から2003年までにタンザニア各地で聞き込み調査やベッドセンサス等の広域調査を行い,これらの地域には現在でもチンパンジーが生息していることを確認してきた。またルクワ南西部のルワジ地域においてチンパンジーの新たな生息地を発見した(Ogawa et. al, 1997)。 しかしながら,現在タンザニアの国立公園以外の地域では,木材利用のための特定樹種の伐採とそのための道路の拡張,他国からの難民や道路沿いに移住してきた人達による畑の開墾・薪炭燃料確保のための樹木の伐採・チンパンジーや他の動物を対象とした密猟,鉱山会社による鉱物資源の調査等,様々な人間活動が活発に行われている。そのため,チンパンジーの生息密度や生息状況はこれらの人間活動から多大な影響を受け,チンパンジーの生息環境は悪化しつつあることが予想される。タンザニア西部の乾燥疎開林帯におけるチンパンジー存続の可能性を探り,早急に対応策を講じることが望まれる。
著者
小川 秀司
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-158, 2010-12-20
被引用文献数
1

I studied huddling groups of Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>) in the Arashiyama E troop at the "Arashiyama Monkey Park Iwatayama" in Kyoto, central Japan. Japanese macaques made physical contact with other individuals and formed huddling groups when air temperatures were low. The 99-101 adult females and 26-36 adult males in the study troop formed 345 huddling groups during 42 scan samplings in the winter of 2001, and 376 huddling groups during 52 scan samplings in the winter of 2002. The average size of huddling groups was 2.34 (range: 2-7) individuals in 2001, and 2.31 (range: 2-6) individuals in 2002. There was no huddling group of two males. Females more frequently huddled with females than with males. Two maternal kin related females huddled more frequently than unrelated females did. Mother-daughter pairs huddled most frequently. Two individuals usually huddled ventrally-ventrally, ventrally-laterally, and ventrally-dorsally. The distribution of huddling group sizes shows that the approaching individuals did not choose a particular size of huddling. However, the approaching individuals chose locations where they simultaneously contacted with two individuals 1.5 times more frequently than locations where they contacted with only one individual. This choice made the shape of huddling groups triangular and diamond-shaped more frequently than expected. By decision making of each individual, specific patterns emerged in the shape, composition, and position of each individual in huddling groups. As well as huddling behaviors, two and more primate individuals were involved in various social interactions. During the interactions, primates make their decision based on complex cognitive mechanisms and non-linear functions, compete and cooperate with the same opponents in their troop, and predict and manipulate the opponent's behavior. These traits in social interactions among primates might make their society more complex and interesting.
著者
吉川 翠 小川 秀司 伊谷 原一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.35, pp.59, 2019

<p>タンザニア西部ウガラ地域の乾燥疎開林地帯でチンパンジー(<i>Pan troglodytes</i>)を直接観察した事例をまとめた。疎開林地帯では疎開林が全面積の86%を占め,他に常緑林と草地が点在している。1995年から2012年に収集した観察事例を分析した結果,(1)パーティ(遊動集団)サイズの平均は3.9頭(SD=2.8,Range=1-14,n=53)で,乾季は平均4.4頭(SD=3.1,Range=1-14,n=37),雨季は平均2.6頭(SD=1.3,Range=1-6,n=16) だった。(2)パーティの構成は,オトナオス(以下オス)のみが11.3%,オトナメス(以下メス)のみが1.9%,オスとメスの混合パーティが66.0%だった。オスとメスの混合パーティの内,コドモかアカンボウが含まれるパーティは34.0%だった。(3)1-5頭で構成されるパーティが75.5%と最も多く,次いで6-10頭のパーティが20.8%だった。10頭以上のパーティは3.8%で,いずれも乾季に観察された。(4)チンパンジーと遭遇した際,彼らは樹上を60.4%,地上を39.6%利用していた。また,利用植生の62.3%が常緑林,37.7%が疎開林だった。(5)発見時の行動は,採食35.8%,休息30.2%,移動30.2%,その他(グルーミングなど)3.8%だった。(6)1回の観察継続時間は10分以内が50%以上を占めた。本地域は,他の地域に比べて平均パーティサイズや最大パーティサイズが小さかった。また5頭以下のパーティの割合は他の地域の2倍だった。疎開林地帯では雨季よりも乾季の方がわずかにパーティサイズは大きくなるが,相対的にパーティサイズを小さくすることで,限られた果実量の採食競合を回避していると考えられる。また,ライオンやヒョウなどの捕食者の存在が,チンパンジーのパーティサイズや警戒心の強さに影響していると考えられた。</p>
著者
小川 秀司
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.22-38, 1997 (Released:2019-04-23)
被引用文献数
1
著者
丸橋 珠樹 岡崎 祥子 小川 秀司 Nilpaung Warayut 浜田 穣 Malaivijitnond Suchinda
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

2007年12月5日から2008年2月10日までの乾季66日間、158時間の観察時間のデータから、樹上活動時間割合は3%で、ほとんどすべての時間を地上で過ごし、移動は地上移動である。採食部位別時間構成は、果実50%、葉25%、種子24%である。昆虫食は頻繁にみられる。なお、石をひっくり返してカタツムリを採食しようとする行動がみられるが、実際に採食したのは観察158時間で4回に過ぎなかった。また、カエル(未同定)採食も1度観察され、内臓の一部を食べて遺棄した。<br> このような採食生態をもっているベニガオザルの、ウサギの捕獲、肉食が観察された。ウサギ捕食あるいは試みの3例の事例を報告する。2008年1月9日に、何か振り回して捨てていった所に近づいたところ、背中の皮を剥がれたウサギが残され、ウサギは飛び跳ねて森へ逃げていった(丸橋)。2011年10月14日、5歳雄のウサギ捕獲・肉食のVIDEO撮影に成功した(岡崎)。また、2011年12月29日にオトナ雌のウサギ肉食が観察され短時間のVIDEO撮影に成功した(小川)。<br> ベニガオザルのウサギ肉食行動観察の特徴として以下の点を指摘できる。1)肉食対象種はビルマノウサギ (<i>Lepus peguensis</i>) Blyth. 1855 (from Mammals of Thailand) である。2)ウサギが生きている状態で肉食が始まり、つまり捕獲し、その時点でウサギは断末魔の悲鳴を上げていた。3)ウサギの大部分、内臓も含めて消費され、観察時間内では、毛皮は食べられなかった。4)捕獲した個体がだけが継続して、移動しながら肉食し、最低7分半は継続していた。5)他個体の近接や近接個体の追随は見られるが、他の優位個体による奪取や残渣の拾い食いなどは見られなかった。議論では、同じ程度の大きさであるロリスとベニガオザルとの異種間行動についても報告し、反撃を行うロリス<i>Nycticebus coucang</i> (from Mammals of Thailand) では捕食にいたらなかった事例観察(丸橋)との比較を行う。<br> ベニガオザルにとって、ウサギ肉食行動は頻度が低い行動であると考えられ、群のなかで肉食経験のある個体は少なく、食物としての共有認識は低いと考えられ、その影響は個体間での競争や追随はほとんどみられなかったことにも現れている。
著者
小川 秀司
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ネパールの主にShivapuri Nagarjun国立公園でアッサムモンキー(Macaca assamensis)を観察した.同地域のアッサムモンキーは,他のマカカ属の種と同様に母系の複雄複雌群を形成し,オスはマウンティングや抱き合い行動を行って,その際相手のペニスを触る事があった.また,オスは群れのコドモを抱く事もあった.しかし,タイに生息するアッサムモンキーやアッサムモンキーと近縁なチベットモンキー(M. thibetana)とは異なり,相手のペニスを舐める行動やブリッジング行動(2頭のオトナが一緒にコドモを持ち上げる行動)は,ネパールのアッサムモンキーでは観察されなかった.
著者
小川 秀司
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東アフリカのタンザニア西部のサバンナウッドランド地帯で霊長類の生息状況を調査した.サバンナウッドランド地帯には,落葉樹がまばらに生えるウッドランドが広がり,常緑林と草地が点在している.調査地にはサバンナ性と森林性の哺乳類が共に生息していた.アカコロブスやアカオザルやアオザルは常緑林で,サバンナモンキーやキイロヒヒはサバンナウッドランドで多く発見された.チンパンジーは両植生を利用していたが,GIS解析によると常緑林割合が高い斜面に多くベッドを作っていた.