著者
光本(貝崎) 明日香 田中 佐知子 沼澤 聡
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-221, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】カチノンはCatha edulis (khat)から得られるモノアミンアルカロイドである。カチノン構造類似体である合成カチノンは中国・インドで合成され、世界中に流通している。1-phenyl-2-(1-pyrrolidinyl)-1-pentanone (α-PVP)は、2013年3月に新たに麻薬指定された新規の合成カチノンである。我々は、2012年度に「ハーブ」や「バスソルト」などと称して販売されている薬物が、主に合成カチノンを含有しており、その多くはα-PVPであることを明らかにした。「ハーブ」や「バスソルト」を使用した者が、重大な交通事故を起こしたり、健康被害を被ったりする事例が相次いで報告されており、大きな社会問題となっているが、α-PVPの生体作用は明らかではない。そこで本研究では、α-PVPが中枢神経系に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】自発運動量の測定:Balb/c雄性マウスにα-PVP (25 mg/kg)または水(10 mL/kg)を21日間投与し、1, 7, 14, 21日目に自発運動量を計測した。また、D1受容体拮抗薬SCH23390 (50 µg/kg, i.p.)および/またはD2受容体拮抗薬スルピリド(50 mg/kg, i.m.)を前投与し、自発運動量を計測した。ドパミン量の測定:in vivo マイクロダイアリシス法を用いて、α-PVP投与後の細胞外ドパミン量の変動を検討した。その他、ドパミン取り込み測定、免疫組織染色を行った。【結果および考察】α-PVPは、投与後速やかに自発運動量の増加を引き起こしたが、長期投与することにより、その作用は減弱した。α-PVPは、細胞外ドパミン量の上昇を引き起こした。SCH23390およびスルピリド前処置により、α-PVPによる自発運動量の増加は有意に抑制されたことから、α-PVPはドパミン神経系を刺激し、ドパミン量を増加させることで、自発運動量の増加を引き起こすこと、また、その作用には、D1およびD2受容体が関与していることが明らかになった。
著者
榎田 めぐみ 田中 佐知子 佐口 健一
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2019-011, 2019 (Released:2019-09-19)
参考文献数
8

教育とは,学修者の行動に価値ある変化をもたらすプロセスである.教育を通じて学修者には行動変容が生じ,より望ましい状態,より高いレベルに向上する.教育効果を教育による学修者の成長の証として捉えると,それをどう測定するかが重要となる.現状,アンケートの実施やパフォーマンス評価等の量的研究が多くみられる.しかしながら,教育を通じて学修者が何を感じ,何を思い考えたか,またその経験をどう意味づけ,それをどう次に活かそうと考えたか,といった視点で学修者の成長を捉えることも教育効果を明らかにするうえで大切である.本稿では,上で述べた視点から学修者の成長を捉えようとして取組んだ質的研究の概要を紹介し,「学修成果を明らかにするための手法としての質的研究」について考えていきたい.
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019-02

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019 (Released:2019-08-10)
参考文献数
4

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
吉田 武美 小黒 多希子 田中 佐知子
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、薬毒物の投与により肝グルタチオン(GSH)の急激な減少(枯渇)が引き起こされると、肝臓内の様々な酵素やタンパク質が急速に合成されるという平成3、4年度の科学研究費助成で得られた成果を基に、その応答の多様性をさらに解明すると共に、遺伝子レベルでの機構解明を目的に進められたものである。本研究の結果、トランススチルベンオキシド(TSO)やファロンが、肝グルタチオンを減少させ、酸化的ストレスを引き起こすことにより、メタロチオネイン(MT)やヘムオキシゲナーゼ(HO) mRNAを急速に発現させることが明らかになった。この結果は、すでに明らかにしている同条件下におけるこれらタンパクの増加が遺伝子レベルでの応答の結果であることを支持している。これらの薬毒物によるHO mRNAの増加は、ヒト肝癌由来のHepG2細胞を用いる培養細胞系でも充分に観察され、今後の機構解明を進める上で有益な情報が得られた。興味深いことは、TSOの立体異性体であるシス体が培養細胞系でほとんど影響が認められなかった点である。この理由については、今後の検討課題として残された。これらの結果に加え、種々のジピリジル系化合物がHO誘導をはじめシトクロムP-450に対し多彩な影響を及ぼすことが明らかになり、とくに2、2'-ジピリジルの作用は、従来のGSH低下剤とほとんど同様であった。本化合物やフォロンは、ミトコンドリアや核内のGSH含量も顕著に低下させることが明らかになり、酸化的ストレスが細胞内各小器官に及んでいることが解明された。酸化的ストレス応答が細胞内のどの小器官のGSH低下と関連しているかについては今後の検討課題である。本研究と関連して、ピリジンやイミダゾール含有化合物の多彩なP-450誘導作用を明らかにし、1-ベンジルイミダゾールのP-450誘導がテストステロン依存性であることなど大きな成果も得られた。本研究課題の遂行により、薬毒物による肝GSH枯渇に伴い、様々なストレス応答が遺伝子レベルで発現していることを明らかにした。