- 著者
-
田村 忠久
- 出版者
- 神奈川大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究ではオーストラリアで稼働中の3.8m鏡のカメラに取り付ける集光器を開発した。まず集光器の形状をシミュレーションによって決めた。今回は反射面を曲面状にすることは考えずに、全面が平らなものを設計した。反射面の反射率を90%と仮定して、いろいろな形状についてシミュレーションを行った結果、1.8倍の光量を得られることが判った。はじめ、金属を打ち出して成形し反射面にアルミ蒸着を施すことを考えたが、打ち出し用の型代が予算に収まらないため、ABS樹脂を成形して表面に金属メッキを施すことにした。クロムをメッキしたABS樹脂の平板の反射率を測定したところ86%であり、シミュレーションの仮定をほぼ満たしていた。メッキ金属はクロム、ニッケル、スズ・コバルト合金が考えられたが、集光率はどれもほぼ同じであったので、生産の歩留まりや耐久性からスズ・コバルト合金を採用した。3/8インチ光電子増倍管に集光器を取り付けて光量を測定したところ単体での集光率は1.5倍であった。この集光器を16×16のマトリックス状に組み上げてオーストラリアの3.8mCANGAROO望遠鏡に取り付け、95年11月、12月にCrabの観測を行なった。Crabについては93、94年の観測で、エネルギー閾値7TeVでガンマ線を検出している。今回取り付けた集光器で光量が増加していれば、エネルギー閾値が下がってガンマ線の計数率が増えているはずである。95年の観測は天候状態が不安定であったため、Crab方向に雲がかかっている時間帯を除いた解析によって集光器の総合的な性能評価を行なわねばならず、現在その解析を行なっているところである。