- 著者
-
田村 雅紀
- 出版者
- 首都大学東京
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
昨年度に引き続き,「骨材回収型コンクリート」における油脂系改質処理剤を用いた改質処理効果(特許出願済)に関する応用的検討を行い,その結果なども踏まえ,骨材回収型コンクリートの運用方法についても考察した。以下に得られた知見の概要を示す。1.ZKT-206法による骨材回収型コンクリートのアルカリシリカ反応低減効果の迅速評価結果JIS A 1804 骨材試験法と比較し,コンクリート法の場合,調合の影響を考慮することができる。w/c=0.6で,普通骨材を用いた改質処理法(標準の3回塗布)で製造した供試体を,材齢2日で加圧装置にかけると,アルカリシリカ反応を示さない試料でも相対動弾性係数が低下する場合がある。w/c=0.4ではそのような結果は生じなかった。従って,ASR抑制効果を意図して改質処理をしても,迅速法の場合,調合によりその効果が十分に説明できない場合が生ずることが確認された。また,その結果により,同コンクリートの長期的な力学挙動(クリープ等)や耐久性について更なる検討が必要と考えられた。2.改質処理再生骨材を念頭に置いたモルタル部分の吸水率低減性実験再生骨材に改質処理を施して目的とする効果を得るために,吸水率低減効果を詳細に検討した。結果,モルタル部分のw/cが,0.2〜0.6範囲では,実験室結果では,3回までの処理で,吸水率を十分に低減できることが確認された。3.改質処理再生骨材コンクリートの耐久性油脂系の場合,中性化速度係数は無処理と比較して低下する(w/c=0.6の場合)。これは,再生骨材のプレウェッチングが不要となり,マトリックスが緻密になる効果が期待できるためと考えられる。乾燥収縮ひずみは,無処理よりも若干低減し,それはAIJの収縮ひずみ予測式で示される範囲の変化を示す。単位クリープひずみは一般的なコンクリートよりも増大する可能性があり,そのような物性を有するものとして位置づける必要があると考えられた。(本検討は,他の研究予算による支援も受けて実施した。)4.骨材回収型コンクリートの運用方法JIS規格(案)が検討されている再生骨材Mを対象とした技術的運用も含め,環境側面を再整理し,用途拡大の方策を検討した。そして運用面では,技術的問題以上に解決すべき問題があることが把握された。