著者
上原 秀一郎 田附 裕子 山中 宏晃 上野 豪久 有光 潤介 小川 恵子 奥山 宏臣
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.960-963, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
7

腸管不全症例において不安定な経口摂取や経腸栄養管理に漢方薬が有効であった自験例を報告し、漢方薬の臨床栄養への貢献を考察する。人参湯は腸管不全7例に、また五苓散は難治性下痢2例に投与した。人参湯の効果について、投与前と3ヶ月継続服用後の腹部症状についてVisual analogue scale(VAS)や症状の変化で評価したところ、7例中6例で腹部膨満と腹痛の改善が認められた。また下痢についても同様であった。人参湯の投与中、経腸栄養の中断はなく、腹部レントゲン像で腸管拡張の改善が認められた。また吸収不良による水様性下痢の症例に対しては、五苓散投与により2例中2例で便性の改善が得られ、血清アルブミン値も改善した。在宅静脈・経腸栄養を必要とする腸管不全症例について、西洋医学のみで管理することが困難な栄養管理上の問題に対して漢方薬が有効なこともあり、Quality of Lifeの上昇に寄与するものと考えられた。
著者
鈴村 和大 飯干 泰彦 澤井 利夫 田附 裕子 関 保二 藤元 治朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.678-681, 2006
参考文献数
9
被引用文献数
2

小児の刺杭創は稀である.今回われわれは肛門より小腸脱出をきたした小児の直腸刺杭創の1例を経験したので報告する.症例は8歳男児.入浴中,シュノーケルで遊んでいたところ転倒し,肛門に突き刺さり,腸管が脱出しているとのことで当科受診となった.来院時,肛門より長さ約30cmの小腸が脱出しており,うっ血をきたしていたため用手的に直腸内に還納した.大腸以外の臓器損傷を精査すべく尿検査,CT検査を施行するも,明らかな損傷を思わす所見はなかった.大腸損傷の診断で緊急開腹術施行したところ,損傷部は直腸で挫滅の程度は軽度であり,また腹腔内の汚染も軽度であったため,人工肛門を造設せず1期的に縫合閉鎖した.経過は良好で術後17日目に退院した.文献的に検索しえた本邦小児報告例49例について検討を加えた.刺杭創は受傷状況を十分に把握し,刺入路を明確にしたうえで,損傷臓器を的確に診断することが重要である.
著者
田附 裕子 米山 千寿 塚田 遼 當山 千巌 東堂 まりえ 岩崎 駿 出口 幸一 阪 龍太 上野 豪久 和佐 勝史 奥山 宏臣
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.100-106, 2021 (Released:2021-05-15)
参考文献数
16

われわれは, 2019年の市販セレン製剤の販売まで, 低セレン血症を認める在宅中心静脈栄養(HPN)患者に対して院内調剤のセレン注射剤(セレン製剤)の提供を行ってきたので, その投与量と安全性について報告する. 対象および方法 : 2019年末においてセレン製剤を6カ月以上当科で継続処方している27名のHPN患者を対象とし, セレン製剤の使用量, 使用期間, 血清セレン値の変動, 有害事象の有無などを後方視的に検討した. 結果 : 患者の年齢は2~78歳(中央値22歳)で, うち16歳以上は17例であった. 基礎疾患の内訳では短腸症が13例と最も多かった. 血中セレン値をモニタリングしながら正常値を目指して投与した. 最終的に1日のセレン投与量は, 市販製剤の推奨(2μg/kg/日)より多く, 25~200μg/dL/日(4μg/kg/日)で, 血清セレン値(正常値:13‐20μg/dl)は8.3‐23μg/dL(中央値14.8μg/dL)で調整された. 血清セレン値に変動はあるが有害事象は認めなかった. まとめ : HPN患者におけるセレン製剤の必要量は市販製剤の推奨量より多く, また長期投与が必要であった. 市販セレン製剤の販売によりセレン製剤の供給は安定したが, 長期投与の症例では今後も血清セレン値を定期的に確認し, セレン製剤の投与量の調整が必須と思われる.
著者
田附 裕子 前田 貢作 和佐 勝史 飯干 泰彦 藤元 治朗
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.929-934, 2010 (Released:2010-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

小児外科外来では、ヒルシュスプルング病・類縁疾患などとの鑑別を含め慢性便秘症の症例に多く遭遇する。基礎疾患が除外された慢性便秘症の多くは生活習慣による機能性便秘であり、排便習慣が確立するまでの根気強いフォローが必要となる。近年、予防医学の観点からプロバイオティクスの効果が報告されている。小児の慢性便秘に対してもプロバイオティクスの臨床的な投与効果が期待される。
著者
梅田 聡 窪田 昭男 合田 太郎 田附 裕子 米田 光宏 川原 央好
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.259-262, 2015

外鼠径ヘルニア修復術後の子宮円靭帯血腫のために行った再手術の際に内性器を腹腔鏡下に観察し,内鼠径輪近傍で卵管の屈曲を認めた1 例を経験したので報告する.症例は1 歳女児.右外鼠径ヘルニアに対しMitchell-Banks 法を施行した.術後2 日目より創部の膨隆が出現し,術後8 日目の超音波検査で右鼠径部に腫瘤像を認め,血腫が疑われ再手術を行った.開創すると,遠位側ヘルニア囊内に子宮円靭帯の血腫を認めた.腹腔鏡で観察すると,卵管は内鼠径輪の近傍に鋭角に屈曲し癒着していた.腹腔鏡下に卵管の屈曲を解除後,ラパヘルクロージャー<sup>TM </sup>を用いて腹膜鞘状突起を再修復した.鼠径管を開放せず外鼠径輪の外で高位結紮を行うMitchell-Banks 法術後においても年少女児では卵管を巻き込む危険性があり,女児の外鼠径ヘルニア修復術の際には,年齢に応じたヘルニア囊内腔の十分な確認による高位結紮が肝要であると考えられた.