著者
甲斐 憲次 浦 健一 河村 武 朴(小野) 恵淑
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.417-427, 1995-07-31
参考文献数
13
被引用文献数
18

本研究では,東京環状八号線道路付近の上空に主として夏季に現れる列状の積雲(環八雲)の発生原因を明らかにするために,出現日の気温・風向・風速・天気図について事例解析を行った.その結果,環八雲は,環状八号線沿いにおいて,夏季の日中に風系の異なる海風の収束によって上昇気流が生じることとヒートアイランド循環によって対流活動が活発になることによって発生する雲であると推定される.都市気候学的視点からみると,環八雲は東京のヒートアイランド循環と東京湾・相模湾の海陸風循環の相互作用として説明することができる.
著者
甲斐 憲次 星野 仏方 竹見 哲也
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

世界の主要なダストとして、サハラ砂漠から発生するサハラダストとタクラマカン砂漠・ゴビ砂漠などから発生する黄砂がある。ダストは、放射・雲物理過程を通じて、グローバルな気候と地域の気候に影響を及ぼす。本研究では、砂漠域での現地観測-衛星リモートセンシング-数値モデルの研究成果を用いて、1)黄砂とサハラダストの比較研究、2)ダストフラックスの推定、3)ダストの氷晶核としての機能、4)砂漠域の地表面状態と生態系を調べた。その結果、アジア域における黄砂の氷晶核形成機能がサハラ砂漠よりも大きいことが示唆された。
著者
甲斐 憲次 徳野 正己
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 = Journal of aerosol research (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.6-12, 1997-03-20
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
常松 展充 甲斐 憲次
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.527-537, 2003-07-31
被引用文献数
5

夏の晴れた日の名古屋周辺域における収束雲の有無に着目し,それと局地的な風系および大気汚染との関係に焦点を当て,濃尾平野を中心とする地域の夏季晴天日について,統計解析,現地観測,数値シミュレーションを行った.まず,夏季晴天日として抽出した82日の,15時における統計解析の結果,伊勢湾からの南西風(海風)と,その前方の弱風域,および関ヶ原・養老山地方面からの西風が,名古屋市北部〜北東部で収束しており,同地域でSPM (Suspended Particulate Matter)の濃度が周辺地域に比べて高いことが分かった.また,気象衛星ひまわりが捉えた可視光線のアルベドを統計解析した結果,名古屋市北東部に,周辺の平野部と比べてアルベドの特に高い領域(雲の存在しやすい領域)が認められた.つぎに,夏季の晴天日に行ったSPM濃度の現地観測の結果により,名古屋市北部〜北東部においてSPM濃度が周辺地域よりも高い,という統計解析の結果を確認することができた.これらのことから,夏季晴天日の名古屋市北東部においては,風の収束に伴い,人為起源のSPMを凝結核とする収束雲が形成されやすいものと考えられる.また,この現象は南関東に発生する環八雲に類似した点があるといえよう.さらに,数値シミュレーションの結果により,伊勢湾からの海風およびその前方の弱風域との間で収束する関ヶ原・養老山地方面からの西風は,琵琶湖の影響を受けていることが示唆された.
著者
常松 展充 甲斐 憲次
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.527-537, 2003-07-31
参考文献数
20
被引用文献数
5

夏の晴れた日の名古屋周辺域における収束雲の有無に着目し,それと局地的な風系および大気汚染との関係に焦点を当て,濃尾平野を中心とする地域の夏季晴天日について,統計解析,現地観測,数値シミュレーションを行った.まず,夏季晴天日として抽出した82日の,15時における統計解析の結果,伊勢湾からの南西風(海風)と,その前方の弱風域,および関ヶ原・養老山地方面からの西風が,名古屋市北部~北東部で収束しており,同地域でSPM (Suspended Particulate Matter)の濃度が周辺地域に比べて高いことが分かった.また,気象衛星ひまわりが捉えた可視光線のアルベドを統計解析した結果,名古屋市北東部に,周辺の平野部と比べてアルベドの特に高い領域(雲の存在しやすい領域)が認められた.つぎに,夏季の晴天日に行ったSPM濃度の現地観測の結果により,名古屋市北部~北東部においてSPM濃度が周辺地域よりも高い,という統計解析の結果を確認することができた.これらのことから,夏季晴天日の名古屋市北東部においては,風の収束に伴い,人為起源のSPMを凝結核とする収束雲が形成されやすいものと考えられる.また,この現象は南関東に発生する環八雲に類似した点があるといえよう.さらに,数値シミュレーションの結果により,伊勢湾からの海風およびその前方の弱風域との間で収束する関ヶ原・養老山地方面からの西風は,琵琶湖の影響を受けていることが示唆された.
著者
岡田 菊夫 甲斐 憲次
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.947-957, 1995-10-25
参考文献数
35
被引用文献数
9

中国北西部の張掖とその周辺において、1990年、1991年の春および1990年夏にエアロゾル粒子を採集した。粒子に含まれる元素(原子番号11以上)の重量割合は、電子顕微鏡とそれに付属のエネルギー分散型X線分析器を用いて調べた。また、この結果を使用して、粒子の分類を行った。なお、分析には、3試料(春)と1試料(夏)を用いた。春期において、鉱物粒子が半径0.1-6μmのエアロゾル粒子の97-98%を占めていることが分かった。鉱物粒子の60-70%がアルミノ珪酸塩を主体とするものであった。また、Caを多く含む粒子の割合は10-20%であり、そのうち、石膏(CaSO_4・2H_2O)と考えられるSを含む粒子が存在した。しかし、ほとんどの鉱物粒子中でのS/Ca重量比はO.1未満であった。また、炭酸カルシュウム(CaCO_3)を主に含有すると考えられる粒子がサブミクロン領域に集中して存在していた。夏期の風が強い状態(風速8ms^<-1>)で採集された試料においても、鉱物粒子がエアロゾル粒子(半径0.1-5μm)のなかで98%を占めていた。このことは、夏においても鉱物粒子が重要なエアロゾル粒子であることを示唆するものである。
著者
木村 富士男 甲斐 憲次
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

雷雨がどこでいつ発生するか正確に予報することは,数値予報をもってしても難しい.気象レーダは現状をとらえる有効な手段であるが,雨粒からのエコーをとらえているため,降水が発生してからでないと観測できない.雲や降水になる前の水蒸気の動態をとらえることが,雷雨をはじめとするメソ擾乱のメカニズム解明と予報のための重要な鍵の一つになっている.本報告では山岳や海陸のコントラストによる熱的局地循環による水蒸気輸送と降水頻度の関係を,野外観測,既存データの解析,数値モデルにより解明しようとしたものである.この研究がスタートした時期にGPSによる可降水量の観測が気象学的解析に耐えうる十分な精度を持っていることが明らかになり,本研究でもこれらのデータを積極的に活用した.この結果,関東地域における夏の一般場が弱く,総観規模の擾乱が弱いときの局所的な降水には以下の特徴があることが示された.1. 内陸では午後から夜に降水頻度が最大となるような日変化を持っている.2. 降水頻度の分布は地形とよい対応が見られる.3. 特に起伏との対応が良く,海陸のコントラストの影響を上回る.4. 山岳地では午後になると降水頻度が高まり,その後次第に平野部に降水頻度の大きな領域が広がる.これらの結果から,夏の関東周辺の山岳地に発生する対流性降水と局地循環による水蒸気輸送は極めて深い関係があることが明確となり,局地循環の活動とそれによる水蒸気輸送を的確に把握することが夏の雷雨を予報する上で重要であることが明らかになった.今後,陸上ではGPS,海上ではSSM/1による可降水量の常時監視ができるようになると,局地循環による水蒸気輸送ばかりでなく,降水に関する短時間予報の精度が大幅に向上する可能性がある.