著者
金井 豊 坂巻 幸雄 笹田 政克
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.143-150, 1993-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

筑波トンネルの掘削工事に伴う湧水中の, ウラン濃度, 234U/238U放射能比および水質について調査した。トンネル内では, 坑口からの距離や壁岩の岩質の変化に伴いウラン濃度や水質が変化した。234U/238U放射能比は, 壊変に伴う反跳効果でいずれも1よりも大きな値を示したが, 最大3.9という試料が見いだされた。これは比較的還元的環境下の試料であったがウラン濃度も高く, 岩石と長時間接触・滞留していたHCO3-濃度の高い深層地下水と判断された。
著者
岡崎 智鶴子 松枝 大治 金井 豊 三田 直樹 青木 正博 乙幡 康之
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7-8, pp.169-178, 2015-11-18 (Released:2016-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

北海道の然別(しかりべつ)地域で採取されたオパール転石の鉱物学 的特性並びに化学組成を予察的に調査した.熱水活動を示唆する産状を明らかにするとともに,オパールが赤色・緑色・オレンジ色・黄色・青色などの鮮やかな蛍光色を呈すること,転石類に金,銀,水銀,ヒ素,アンチモン,テルルなどが地殻平均よりも高濃度に含まれる部分もあることなどを明らかにした.
著者
金井 豊
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11-12, pp.145-155, 2014-12-26 (Released:2015-02-07)
参考文献数
20

物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)においてエアロゾル中の放射性核種の観測を2013年も継続して行った.前報告(本誌,vol.63(3/4) p.107-118,及びvol.64(5/6), p.139-150)に引き続き2013年1月から2013年12月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2013年は3月頃に幾分高まったが,4月以降は幾分低下傾向を示した.2012年も同様に4月頃より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなった気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた.2012年以降は原発からの影響よりも観測点周辺に沈積した粒子の再飛散と移動による影響因子が相対的に重要と考えられ,Cs-137濃度とCs-137/Pb-210比との関係が再飛散を示唆する有効なパラメータの一つとなる可能性があると考えられた.
著者
金井 豊
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.19-26, 2014-06-30 (Released:2014-09-04)
参考文献数
69

環境中に存在しているベリリウムの放射性同位体である 10Beおよび 7Beを,堆積学・堆積地球化学の分野に適用した研究例を紹介した.また,測定法についても解説を加えた.これらの核種は,その生成が地球大気中にあり定常的に地表面に降下して堆積していること,粒子とともに挙動するためそのトレーサーとして有用であること,放射性核種であるため「半減期」という時計を有していること,などの特質を利用して,地表堆積物や海底堆積物の年代測定,大陸侵食や土壌侵食・流出,沿岸堆積物の新旧や挙動解明などの研究例があり,Beの同位体を用いる応用研究は様々な分野で広がりつつある.
著者
金井 豊
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5-6, pp.143-157, 2015-10-16 (Released:2016-01-16)
参考文献数
19

物質循環に関する地球化学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2011年から2015年1月まで継続して行ってきた.前報告に引き続き2014年1月から2015年1月までの観測データを報告すると同時に,これまでの長期にわたる観測結果を総括した.更に,2013 年の途中から1年半以上にわたるエアロゾルの重量測定 結果も報告した.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2011年10月には4月時点より3桁ほど低下して10-4 Bq/m3 前後を推移し,2012年,2013年,2014年の春季に段階的に低下傾向を示し,2015年1月のCs-137濃度は10-5 Bq/m3 前後となった.このような春季における濃度低下は,気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた. Pb-210 とBe-7は,お互いに相関を有しながら夏季と冬季に低濃度となる傾向が見られた.また,微量のCe-141, Ce-144, Sb-125等も2011年における一部試料で検出された.
著者
金井 豊 三田 直樹 竹内 理恵 吉田 信一郎 朽津 信明
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1-2, pp.1-15, 2006-04-21 (Released:2015-12-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

洞窟内の沈殿物や河床に生成する沈殿物に棲息する微生物などを日本各地から採取し,その中の微生物のマンガン酸化活性を調べた.更にマンガン酸化能を持つ微生物の分離を行い,その分離株について分類や16S rDNA による同定を試みた.また,予察的にボーリングコア中のマンガン酸化細菌の調査を行った. その結果,洞窟や河床からの沈殿物からはグラム陽性桿菌の Bacillus や Curtobacterium,グラム陰性桿菌の Burkholderia 等が分離された.ボーリングコアでは 20 m以深においても微生物の存在が確認され,堆積性の地下環境でも微生物研究が重要であることが示された.更に,微生物生態学的に様々な条件下における微生物のマンガン酸化活性についての実験を行い,最適環境条件等を調査した. 微生物は核種移行に関わる化学環境に直接・間接的な形で影響を与えるため,微生物の総量,種類とその特質,生存環境と活性の有無とが重要な課題である.このようなデータは微生物の種類ごとに相違すると考えられるため,系統的にデータを収集してデータベース化を進める必要がある.
著者
金井 豊 井内 美郎 徳岡 隆夫
出版者
日本堆積学会
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.47, pp.55-70, 1998-04-30 (Released:2010-05-27)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

中国大陸の湖から採取した二つのコアにおける放射性核種の分布と化学組成とを調べ, 平均堆積速度の算出を行い堆積環境について予察的に検討した. その結果, 構造盆地湖である Daihai 湖では約0.3cm/y程度の堆積速度が推定され, この値は日本における湖沼の平均堆積速度の範囲内であった. 化学組成からは, 堆積物の供給源が異動してコアの化学組成にわずかな変動をもたらしたことが示唆された. また, 湿地帯の閉鎖湖である Blackspring 湖では約0.1cm/yで, 前者の1/3程度の値であった. 含水比や化学組成に変化がみられた16~18cmあたりは160~180年前と推定され, そのころから以前と異なる堆積物が供給され始めた可能性が高い. また, セシウム-137のインベントリーは, 日本における過剰鉛-210との関係から推定されるものよりも大きく, これは中国におけるセシウム-137の供給量が日本における場合よりも多かったこと, ならびに湖からの流出が少なかったことなどが原因と考えられる.
著者
金井 豊 井内 美郎 山室 真澄 徳岡 隆夫
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.71-85, 1998-05-20
参考文献数
38
被引用文献数
5

In order to study sedimentation environments and sedimentation rates in Lake Shinji, Shimane Prefecture, the Pb-210 and Cs-137 radioactivities were measured in 15 cores taken on Oct. in 1994. The sedimentation rates in the lake varied at each location; those in the western area are about 0.25g/cm^2/y, larger than in the eastern area (about 0.1g/cm^2/y), and those in the central area are the lowest (≦0.05g/cm^2/y). This fact indicates that most of the sediments supplied by the Hii river deposited in the western area and little amount was transported to the central area. The inventries of radionuclides that indicate the amount of accumulation were larger in the western area, which is the same tendency as the sedimentation rate. They are in a positive correlation (correlation coefficient (R) is 0.78), and their relationships are different from that observed in offshore sediments of Japan sea. The fluxes of excess Pb-210 and Cs-137 are large in western area, which suggests that much amount of sediment were supplied from the Hii river. The concentrations of excess Pb-210 and Cs-137 in surface sediments are in a good correlation (R=0.76), which indicates that both nuclides in sediment grains may exist in a constant ratio. The sources of radionuclides are supposed to be terrestial fallout and suspended particles carried from river. Although the latter source is not negligible, it is considered that the former is superior and that radionuclides moved and distributed heterogeneously in Lake Shinji.