著者
中島 虹 高橋 日出男 横山 仁 常松 展充
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.24-42, 2018-01-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究は,東京タワーの5高度(4, 64, 169, 205, 250m)における気温観測値(2001~2010年度)を用いて,晴天弱風夜間の東京都心における温位鉛直分布の特徴を明らかにした.解析に先立ち,強風時には鉛直方向に温位が一様となることを仮定して,観測値を補正した.通年の晴天弱風夜間を対象に,毎時の温位傾度鉛直分布にクラスター分析を施し,温位の鉛直分布を類型化した.このうち,下層から上層まで安定な場合や上層が強安定で下層が弱安定な場合は,冬季(11~2月)にはその頻度が夜半前から増加し日の出頃に極大となるが,夏季(5~8月)には全く現れない.上層の強安定層は都市上空の安定層の底面とみなされ,冬季夜間の混合層高度は約200mまたはそれ以上と考えられた.この高度は1960年代の観測結果よりも高く,都市化の影響が示唆された.また,温位鉛直分布の時間変化には,鉛直混合の促進・抑制とともに上空安定層底面の上昇・低下の関与が考えられた.
著者
加藤 顕 沖津 優麻 常松 展充 本條 毅 小林 達明 市橋 新
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.169-174, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
21
被引用文献数
5 1

ヒートアイランド現象の緩和対策として,都市緑地による熱環境緩和効果が期待されている。これまでの緑化対策では樹高しか着目されておらず,樹冠構造については考慮されなかった。樹冠構造の異なる緑地を対象に,樹冠構造の発達が地表面温度に影響するか検討した。その結果,樹冠の厚みが増すと日中の表面温度を下げ,夜間の表面温度を下げないことがわかり,昼夜間の温度変化を緩和する効果があった。そのため,樹冠構造を発達することが,都市林におけるヒートアイランド現象緩和機能を強化することがわかった。
著者
山﨑 雄大 常松 展充 横山 仁 梅木 清 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
10

本研究では2020年の東京五輪のマラソンコースを例に,その温熱環境を把握することを目的として,MRT(平均放射温度)とWBGT(湿球黒球温度)の計算事例を示した。その結果,猛暑日である2015年8月7日の事例では,9時~18時でコース上のすべての地点でWBGTが熱中症の「厳重警戒レベル」とされる28℃以上となった。またコース上にできる影によってWBGTが低下するため, 日陰を選んでコース取りをすることにより,ランナーが体感するWBGTを低く抑えられる可能性が示唆された。
著者
常松 展充 甲斐 憲次
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.527-537, 2003-07-31
被引用文献数
5

夏の晴れた日の名古屋周辺域における収束雲の有無に着目し,それと局地的な風系および大気汚染との関係に焦点を当て,濃尾平野を中心とする地域の夏季晴天日について,統計解析,現地観測,数値シミュレーションを行った.まず,夏季晴天日として抽出した82日の,15時における統計解析の結果,伊勢湾からの南西風(海風)と,その前方の弱風域,および関ヶ原・養老山地方面からの西風が,名古屋市北部〜北東部で収束しており,同地域でSPM (Suspended Particulate Matter)の濃度が周辺地域に比べて高いことが分かった.また,気象衛星ひまわりが捉えた可視光線のアルベドを統計解析した結果,名古屋市北東部に,周辺の平野部と比べてアルベドの特に高い領域(雲の存在しやすい領域)が認められた.つぎに,夏季の晴天日に行ったSPM濃度の現地観測の結果により,名古屋市北部〜北東部においてSPM濃度が周辺地域よりも高い,という統計解析の結果を確認することができた.これらのことから,夏季晴天日の名古屋市北東部においては,風の収束に伴い,人為起源のSPMを凝結核とする収束雲が形成されやすいものと考えられる.また,この現象は南関東に発生する環八雲に類似した点があるといえよう.さらに,数値シミュレーションの結果により,伊勢湾からの海風およびその前方の弱風域との間で収束する関ヶ原・養老山地方面からの西風は,琵琶湖の影響を受けていることが示唆された.
著者
常松 展充 甲斐 憲次
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.527-537, 2003-07-31
参考文献数
20
被引用文献数
5

夏の晴れた日の名古屋周辺域における収束雲の有無に着目し,それと局地的な風系および大気汚染との関係に焦点を当て,濃尾平野を中心とする地域の夏季晴天日について,統計解析,現地観測,数値シミュレーションを行った.まず,夏季晴天日として抽出した82日の,15時における統計解析の結果,伊勢湾からの南西風(海風)と,その前方の弱風域,および関ヶ原・養老山地方面からの西風が,名古屋市北部~北東部で収束しており,同地域でSPM (Suspended Particulate Matter)の濃度が周辺地域に比べて高いことが分かった.また,気象衛星ひまわりが捉えた可視光線のアルベドを統計解析した結果,名古屋市北東部に,周辺の平野部と比べてアルベドの特に高い領域(雲の存在しやすい領域)が認められた.つぎに,夏季の晴天日に行ったSPM濃度の現地観測の結果により,名古屋市北部~北東部においてSPM濃度が周辺地域よりも高い,という統計解析の結果を確認することができた.これらのことから,夏季晴天日の名古屋市北東部においては,風の収束に伴い,人為起源のSPMを凝結核とする収束雲が形成されやすいものと考えられる.また,この現象は南関東に発生する環八雲に類似した点があるといえよう.さらに,数値シミュレーションの結果により,伊勢湾からの海風およびその前方の弱風域との間で収束する関ヶ原・養老山地方面からの西風は,琵琶湖の影響を受けていることが示唆された.
著者
常松 展充
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究で開発した「黄砂発生輸送モデル」を用いて、地球温暖化に伴う気候変化の情報を反映させた長期間シミュレーションを一部実施した。このシミュレーションでは、全球気候モデル「MIROC」によるSRES-A1Bシナリオ実験の結果から得られた気候予測データと、20世紀再現実験結果から得られた気候再現データをモデルに組み込んだ。具体的には、気温・比湿・ジオポテンシャル高度・風のuv成分・地表面温度について、将来(2080-2100年)と近年(1980-2000年)の差分(以下「温暖化差分」と呼ぶ)を、全球気候モデルの各グリッド毎に算出し、6時間毎の温暖化差分データを作成した。そして、作成した温暖化差分を、黄砂の発生と輸送のシミュレーション(水平解像度:20km)の初期・境界条件となる数値データに加算した。高解像度シミュレーションの初期・境界条件となる数値データに温暖化差分を加算する方法は「擬似温暖化法」と呼ばれ、それが、全球気候モデルのもつバイアスへの依存を低減させたダウンスケーリングを可能にする手法であることから、気候変化予測に関する多くの先行研究で用いられているものの、それを黄砂等の大気汚染物質動態の将来変化シミュレーションに応用した先行研究はない。これにより、本研究では、全球気候モデルのバイアスを低減させた上で黄砂発生輸送の将来変化をシミュレートした。地球温暖化の進行に伴う気候の将来変化が黄砂の発生と輸送に及ぼす影響を予測した研究は現在のところ希少であり、本研究で実施した数値シミュレーションの結果を解析することで、黄砂の発生・輸送の将来変化が量的・空間的に明らかになるとともに、黄砂等のミネラルダスト、あるいは他の大気汚染物質の動態の将来変化に関する今後の研究に資する知見が得られることが期待される。