著者
酒井 啓子 松永 泰行 石戸 光 五十嵐 誠一 末近 浩太 山尾 大 高垣 美智子 落合 雄彦 鈴木 絢女 帯谷 知可
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

総括班はグローバル関係学を新学術領域として確立することを目的とし、分担者や公募研究者、領域外の若手研究者にグローバル関係学の視座を理解しその分析枠組みをもとに研究を展開するよう推進することに力点をおいて活動を行っている。H29年度には、領域代表の酒井、計画研究A01代表の松永、計画研究B02分担者の久保が全体研究会や国内の研究シンポジウムなどでそれぞれがグローバル関係学の試論を報告、各界からコメントを受けて学理のブラッシュアップに努めた。そこでは1)グローバル関係学が、関係/関係性に焦点を絞り、その関係/関係性の静態的・固定的特徴を見るのではなく、なんらかの出来事や変化、表出する現象をとりあげ、そこで交錯するさまざまな関係性を分析すること、2)グローバル関係学がとらえる関係が単なる主体と主体の間の単線的/一方方向的関係ではなく、さまざまな側面で複合的・複層的な関係性を分析すること、を共通合意とすることが確認された。それを踏まえて9月以降、領域内の分担者に対して、いかなる出来事を観察対象とするか、主体間の単線的ではない関係性をいかに解明するか、そしていかなる分析手法を用いてそれを行うかを課題として、個別の研究を進めるよう促した。多様な関係性が交錯する出来事にはさまざまな事例が考えられるが、その一つに難民問題がある。計画研究ごとに閉じられた研究ではなく領域として横断的研究を推進するため、計画研究横断プロジェクトとして移民難民研究プロジェクトを立ち上げた。また、総括班主導で確立したグローバル関係学の学理を国際的にも発信していくため、国際活動支援班と協働しながら、海外での国際会議を積極的に実施している。H29年度はシンガポール国立大学中東研究所と共催で同大学にて国際シンポGlobal Refugee Crisesを実施、グローバル関係学の骨子を提示して海外の研究者への発信とした。
著者
石戸 光
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.20-28, 2012-03

EUや東アジア共同体の構想など国際共同体の構築が盛んであるが,これは「国家主権」を上位機構に移転する形でなされる。「主権」は旧約聖書(イザヤ書9章6節)にある通り「主のもの」であったが,近代政治思想家ホッブズの著作『リヴァイアサン』の影響を主要な転換点として,神の主権から国家の主権へと「主権」の意味合いが変遷した。歴史的に,例えば英国では,英国政府という人間の統治機構に(神の代理として,という留保は付くものの)「主権」がいわば「移譲」された。キリスト教の持つ宗教的権威すなわち神の主権が王の世俗的権威すなわち国家主権の枠(内に位置するような状況が現出したのである。しかし人のエコノミー(共同体規範)と神のエコノミー(経綸)とは等価ではありえず,現代の国際共同体は人の統治に余る諸問題を抱えている。神の経綸が人の共同体規範において再確認される必要がある。
著者
青木 寛子 石戸 光 川嶋 香菜 石戸 光 イシド ヒカリ ISHIDO Hikari 川嶋 香菜 カワシマ カナ KAWASHIMA Kana
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.20, pp.49-68, 2010-03

ブータンは、南アジアの中国とインドの間に位置する人口約70 万人、面積も九州の1.1 倍ほどしかない小国である。経済規模においてもいわゆる「途上国」と呼ばれるレベルの国であるが、興味深い概念を持つ国として国際的に注目されつつある。それこそが「国民総幸福(Gross National Happiness、GNH)」であり、国民が幸福感を持って生活できるということを理念とした独自の国づくりが行われている。アジアの小国の国王が発したこの概念は、ひたすらに近代化を善としてきた先進諸国に対するアンチテーゼとして大きなインパクトを与えた。筆者らは2009 年9月1日から8日までの約1週間ブータンに滞在し、「国民総幸福」に関する調査を行い、そしてその結果をもとに経済面、環境面からの考察を加えた。本稿は、そうした「豊かさ」と密接に関係する経済や環境という側面からGNH を紹介し、内面性を重視した「豊かさの経済」の提起を行っている。
著者
石戸 光 イシド ヒカリ ISHIDO Hikari
出版者
千葉大学経済学会
雑誌
経済研究 (ISSN:09127216)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.43-95, 2009-06

This paper addresses the diversity and scope for catalyzing further cooperation in the Asia Pacific region, as the title indicates. With the complexity of Asia-Pacific region's trade pattern and financial interdependence evolving further in this new century, the Pacific Rim region has a significant implication for formulating outward-looking economic policy. The paper provides factual information on and analytical insight into the region's diversity; and then provides practical policy recommendations. 2010 is the year in which Japan will chair all the government-level meetings under the Asia Pacific Economic Cooperation (APEC). APEC is a unique international forum in that it (1) propounds an "open regionalism" of free trade and investment, originally (albeit arguably) on a non-reciprocal basis; (2)operates in a uniquely diverse economic milieu; and (3) includes as its members the world's big economies (including the US, Russia, China and Japan). In the arena of international economic policy making, the popularity of the APEC forum had "hit the bottom" soon after the Asian Financial Crisis in 1997, at which APEC could not, at least as a general perception, prescribe any viable policy frameworks. A heart-felt cooperative spirit shared by all the member economies of APEC (including its citizens), therefore, is indispensable for achieving economic stabilityand prosperity in this region.欧文抄録: pp.99-100