著者
櫻井 圀郎
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the world (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.125-135, 2012-03

法人は解散すると清算法人となり,清算結了に至るまで,清算の目的のためには存続するが,本来の法人としての事業活動はできなくなる。その点は,宗教法人で。あっても異なることはない。地下鉄サリン事件などを惹起した宗教法人オウム真理教は 1995 年 10 月 30 日の 東京地方裁判所の解散命令(1996 年 1 月 30 日確定)によって解散しているはずであるがその後の 1999 年 12 月 27 日に施行された無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律によってオウム真理教は規制対象とされており,最近では2011 年 8 月 1 日に公安調査庁が全国 27 カ所のオウム真理教施設に立入検査を行っている。この,一見,矛盾する,ありえない現象は,宗教法人の特殊性にあるのであるが 本項では,その点について言及し,宗教法人解散後の宗教活動の可能性について論及する。
著者
中澤 秀一
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.59-77, 2012-03

介護労働安定センターによる平成 21年度の実態調査では,平成 20-21 年の 1 年間における訪問介護員,介護職員の離職者の内,8 割前後は勤務年数が 3 年未満の者となっている。その上位理由は,低賃金が取りざたされているが,それ以上に事業所への不満や人間関係が挙げられている。しかし,このような状況に対する事業所及び介護福祉士養成教育における対応や教育は不十分である。そこで,これらの負担軽減を考える教育の方向性について検討することを目的とし,介護労働安定センターの平成 21 年度介護労働実態調査,厚生労働省平成 21 年度介護従事者処遇状況等調査結果,介護福祉士養成教育新カリキュラムの分析及び,現在介護福祉施,設で勤務するA大学及びB短期大学の卒業生への質問紙調査を実施した。その結果,バーンアウトの要因及び精神的負担軽減に関する教育の方向性が明らかになった。
著者
櫻井 圀郎
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
no.22, pp.125-135, 2012-03

法人は解散すると清算法人となり,清算結了に至るまで,清算の目的のためには存続するが,本来の法人としての事業活動はできなくなる。その点は,宗教法人であっても異なることはない。地下鉄サリン事件などを惹起した宗教法人オウム真理教は 1995 年 10 月 30 日の 東京地方裁判所の解散命令(1996 年 1 月 30 日確定)によって解散しているはずであるがその後の 1999 年 12 月 27 日に施行された無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律によってオウム真理教は規制対象とされており,最近では2011 年 8 月 1 日に公安調査庁が全国 27 カ所のオウム真理教施設に立入検査を行っている。この,一見,矛盾する,ありえない現象は,宗教法人の特殊性にあるのであるが 本項では,その点について言及し,宗教法人解散後の宗教活動の可能性について論及する。
著者
岩田 三枝子
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the World (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.64-87, 2015-03

覚醒婦人協会は、賀川ハル(1888-1982)ら30 代のキリスト者女性を中心発起人とし、1921 年3 月から1923 年8 月までの約2 年半にわたって展開された労働者階級の女性のための婦人運動である。労働婦人の人権問題や労働環境の改善を訴え、演説会開催や機関誌『覚醒婦人』の発行等の活動を展開し、新聞記事にも幾度も取り上げられた。大正期は、デモクラシー機運の高まりの中で、無産階級と呼ばれる庶民が社会において存在感を増す時代であったが、覚醒婦人協会は、女性の人権、キリスト教、労働者という大正期を反映する三つの要素を併せ持つという点で、大正デモクラシーを象徴する活動であるといえる。また、覚醒婦人協会の設立は、大正期から昭和初期にかけて興隆した婦人運動史の創成期にあたる点からも、その分野においての先駆的役割の一端を担ったともいえる。しかし、キリスト者が中心となって創設された活動でありながら、キリスト教の視点から活動の背景にある思想や意義を問うた研究は、管見の限りこれまでなかった。本稿の目的は、宣言文や綱領、そして機関誌『覚醒婦人』の分析から、特にキリスト教公共哲学の視点において覚醒婦人協会の性格を明らかにし、その現代的意義を提起することである。第1 節では覚醒婦人協会の概略を紹介する。次に、第2節では宣言文や綱領の内容を、そして第3 節では機関誌『覚醒婦人』の書誌内容をキリスト教公共哲学の視点から分析することで、賀川ハルが覚醒婦人協会において目指した「男女の協働」「キリスト教公共哲学的視点」等の特徴を浮き彫りにする。最後に結論として、覚醒婦人協会の今日的意義を提起したい。
著者
伊藤 明生
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界:東京基督教大学紀要 = Christ and the World (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.158-183, 2015-03

パピルス46番は、最古のパウロ書簡集の写本で、チェスタービーティー図書館とミシガン大学図書館に所蔵されている。業者が販売したものなので、出処の詳細は不明であるが、紀元200年が作成年代と想定される。初期キリスト教会作成の写本として一般的であった、パピルス紙製のコデックス形態の写本で、ノミナ・サクラも見出される。最古の写本であるが、最も良い読みが保存されている訳ではない。様々な角度から、当時の書写の過程を窺い知ることができる貴重な写本である。写字生が書写する際に、どのような間違いをし、その間違いがどのように訂正されるか、など当時の写本作成の過程が垣間見ることができる。
著者
坂本 正路
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.81-112, 2009-03

憲法89条には「公の支配に属しない慈善事業に対し、これ(公金)を支出してはならない」いう条文があるため、キリスト教社会事業が國の補助金を受けるのは誤りであるという論がある。しかし、同じ条文の許にある私学が国の補助金を受けることが認められているのならば、キリスト教社会事業も同じように受ける事が出来ると考える。キリスト教社会事業には自由権があり、法の規制は受けないが、施設利用者にも宗教に対する自由権が存在するので、その権利を侵害しない範囲での自由権である。89条は「慈恵事業」から「社会事業」への条文の訂正、あるいは20条の補足的条文であるので削除も考えられる。
著者
加藤 喜之
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the World (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.28-63, 2015-03

本稿は、十七世紀後半のネーデルラント連邦共和国において最も重要な神学者のひとりであったクリストフ・ウィティキウス(Christoph Wittichius、1625–87)の神学・哲学思想を、当時の文脈のなか、とくにスピノザ哲学との関係のなかで読み問いていくものである。具体的には、スピノザの『エティカ』(1677 年)の詳細な論駁がなされるウィティキウスの『スピノザ反駁』(1690 年)に注目することによって、当時のデカルト哲学の多様性、神学と哲学の関係、そしてスピノザの哲学がどのように彼の批判者によって読まれていたかを明らかにしていく。さらに、ウィティキウスの試みが、スピノザのラディカルな思想、特にその神の概念に応答する神学的に重要なレスポンスのひとつであることを示していく。まず第1 節では、ウィティキウスに関する研究動向を紹介していき、第2 節では、現代においては忘れられてしまったこの哲学・神学者の生涯と思想に光をあてていく。さらに第3 節では、『スピノザ反駁』の背景を明らかにし、第4 節では、ウィティキウスの『スピノザ反駁』のなかに現れる二つの論点を分析していく。
著者
岡村 直樹
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the world (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.78-104, 2012-03

ラポールとは,日本で主に心理学の分野で用いられている言葉で,多くの場合それはカウンセリングの場面におけるカウンセラーとクライアントの間に存在する人間関係等を指す。本研究は,ラポールの形成という側面から,クリスチャンユースが,どのようなクリスチャンリーダーとの関係性によってサポートされ,ポジティブな変化を遂げるのかを,質的研究の方法を用いて考察したものである。研究の結果,クリスチャンユースとクリスチャンリーダーの間のラポール形成は,年齢差や役職よりも,非言語コミュニケーションのスキルを用いた共感力の有無によって左右されるということが判明した。
著者
櫻井 圀郎
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the world (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.125-135, 2012-03

法人は解散すると清算法人となり,清算結了に至るまで,清算の目的のためには存続するが,本来の法人としての事業活動はできなくなる。その点は,宗教法人で。あっても異なることはない。地下鉄サリン事件などを惹起した宗教法人オウム真理教は 1995 年 10 月 30 日の 東京地方裁判所の解散命令(1996 年 1 月 30 日確定)によって解散しているはずであるがその後の 1999 年 12 月 27 日に施行された無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律によってオウム真理教は規制対象とされており,最近では2011 年 8 月 1 日に公安調査庁が全国 27 カ所のオウム真理教施設に立入検査を行っている。この,一見,矛盾する,ありえない現象は,宗教法人の特殊性にあるのであるが 本項では,その点について言及し,宗教法人解散後の宗教活動の可能性について論及する。This article is focused on the religious corporation specifically under the.Japanese Religious Corporation Law.
著者
岩田 三枝子
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.53-79, 2014-03

1990 年TCU 設置と同時に開設された国際キリスト教学科(以下、国キ)は、2013 年3 月には第20 期生の卒業を迎え、国キ卒業生は総計276 名となった。 TCU が掲げるキリスト教世界観を土台として国際化時代にふさわしい人材育成を目指してきた国キであるが、この20 期生の卒業を一つの節目として、国キ学が掲げてきた理念が卒業生たちにどのような形で実現されているかを知るためのアンケート調査を実施した。 本調査報告では、初めに、これまでの刊行物等の資料をもとに、国キがどのような理念のもとに創設されたのかを探り、その理念がどのように国キ生たちに反映されてきたかを卒業生の進路結果から検討する。それにより、国キ創設期から現在まで受け継がれてきた国キの使命を確認する。その後、国キ卒業生へのアンケート結果から、国キの特色でもある異文化理解科目や語学科目、また海外語学研修や異文化実習の経験が、卒業生たちの卒業後の歩みの中でどのような形で有効化されているかを探り、その特徴的な点を検討する。以上を踏まえて、最後に国キ専攻の今後のさらなる発展のための課題を述べる。
著者
大和 昌平
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 = Christ and the world (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.109-139, 2014-03

日本におけるキリスト教と仏教の出会いは、16 世紀半ばのフランシスコ・ザビエル来日に遡る。本稿は、イエズス会宣教師の書簡を主な資料としての、キリシタン時代最初期におけるキリスト教と仏教の対論についての考察である。
著者
稲垣 久和
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-19, 2012-03

人間が生きること,それも「善く生きること」は哲学の出発点にあった。そのために,今日では道徳,倫理だけでなく,政治,経済,教育,福祉が関わる。これら全体が関わるところに現代人の「幸福な生活」が可能になる。21世紀の文明の変転期には,枢軸時代の大思想を再解釈していく必要性が出てきている。キリスト教と同時に,東アジアの伝統と対話しつつ儒教の「天と良心」,仏教の「慈悲と四諦(=苦集滅道)」の認識を深めて欲望をコントロールしつつ,他者と地球環境を配慮(ケア)するような「ケアの倫理」の確立に向かいたい。倫理を発想するスタイルとしては,「正義の倫理」は孤立した抽象的個人の見地に立ち,普遍的原理を結論するだが「ケアの倫理」は,具体的状況における対人関係を前提として,奉仕と同情に基づいた判断をする。 学問は内容が学際的であればあるほど哲学的な認識論と存在論が明らかにされなければ,ただの総花式の寄せ集めになってしまう。経済,政治,法律,道徳,倫理。宗教まで扱わねばならない今日の福祉学には,ますますその傾向が強くなっている。では今日の福祉学の背景となる哲学とは何か。われわれは公共哲学に基づいた福祉。すなわち公共福祉を提起したい。 キリスト教の果たすべき社会的責任とは,十字架の贖罪愛を通した common grace から来る。アリストテレス的な「友愛」をさらに上から"引っ張る"アガペーの隣人愛をもって,キリスト者は「よきサマリア人」としてのケアの倫理を社会に実践する主体となるべきだ。これは NPO 等の中間集団で発揮され市民社会の原動力となる。賀川豊彦の協同組合運動も現代の市場経済のゆがみを是正しようとした。そして彼の行動はキリストの十字架の贖罪愛から来ているのであり,すべての現代の希望もまたここから出てくるのである。
著者
伊藤 明生
出版者
東京基督教大学
巻号頁・発行日
no.27, pp.62-83, 2017-03
著者
石戸 光
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.20-28, 2012-03

EUや東アジア共同体の構想など国際共同体の構築が盛んであるが,これは「国家主権」を上位機構に移転する形でなされる。「主権」は旧約聖書(イザヤ書9章6節)にある通り「主のもの」であったが,近代政治思想家ホッブズの著作『リヴァイアサン』の影響を主要な転換点として,神の主権から国家の主権へと「主権」の意味合いが変遷した。歴史的に,例えば英国では,英国政府という人間の統治機構に(神の代理として,という留保は付くものの)「主権」がいわば「移譲」された。キリスト教の持つ宗教的権威すなわち神の主権が王の世俗的権威すなわち国家主権の枠(内に位置するような状況が現出したのである。しかし人のエコノミー(共同体規範)と神のエコノミー(経綸)とは等価ではありえず,現代の国際共同体は人の統治に余る諸問題を抱えている。神の経綸が人の共同体規範において再確認される必要がある。
著者
大和 昌平
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
no.24, pp.109-139, 2014-03

日本におけるキリスト教と仏教の出会いは、16 世紀半ばのフランシスコ・ザビエル来日に遡る。本稿は、イエズス会宣教師の書簡を主な資料としての、キリシタン時代最初期におけるキリスト教と仏教の対論についての考察である。
著者
稲垣 久和
出版者
東京基督教大学
雑誌
キリストと世界 : 東京基督教大学紀要 (ISSN:09169881)
巻号頁・発行日
no.24, pp.140-164, 2014-03

日本のプロテスタントはその神学の営みの初期から世界観的思考を排除してきたし、そのことに気づいてこなかった。プラグマテイズムというよりもむしろ日本的霊性に影響されていたのである。民衆は仏教的救済観つまり「此岸から彼岸への移行」というレベルの福音の提示には何の魅力も感じていない。救済論中心の福音把握では仏教に基いた"日本的霊性"を凌駕することは不可能である。人間観と社会観と自然観において福音の包括性の豊かさを日本人民衆のニードに応じて提示する努力が必要であり、そのために十字架の贖罪愛を強調した賀川豊彦はモデルとなる。かつ、少子超高齢化社会に合ったケアの神学の開発が望まれる。またそれに見合う"愛の実践"が今後の日本宣教の課題である。