著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.78-86, 2005-03-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

目的; 食物アレルギーの実態調査は, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者側の行動に着目した原因食品の販売形態や発症場所, 発症時の対処方法に関する調査研究はないので実態調査を行った.方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1,510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答を得た.結果; アナフィラキシーの原因食品の販売形態は,「容器包装加工食品」,「店頭販売品」「レストラン (食堂) での食事」の順となっていた. 発症場所と販売形態の関係では,「自宅」で「容器包装加工食品」や「店頭販売品」による発生が最も多く, ほぼ毎日摂食している「学校給食」よりも「レストラン」での食事,「ファーストフード」での「店頭販売品」による発生が多い結果となった. アナフィラキシー発症時の軽快までの時間では, そば, 落花生が乳, 卵, 小麦よりも長く発症件数の多さの順とは異なっていた.
著者
上ノ土 武 飯尾 靖枝 只熊 幸代 原塚 柳子 神奈川 芳行 今村 知明 古江 増隆
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡醫學雜誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.183-184, 2005-05-25

ダイオキシンやダイオキシン関連化合物の,次世代に対する影響について社会的関心が高まっている.吉村らは1968年から1977年の間に,油症患者から出生した85人の性比を,一般人の期待される男女比0.514と比較し,明確な差はない,と報告した.しかしながら,曝露者が父親か母親かと,親の曝露時の年齢との関連についての検討は,油症ではまだ行われていない.油症と同様に,PCBやダイオキシン関連化合物が食用油に混入した例としては,台湾で発生したYuchengがある.Yu-chengの原因物質は,油症の原因物質と極めて類似しており,Polychlorinatedbiphenyls(PCBs)やPolychlorinateddibenzofurans(PCDFs)が主なものである.ダイオキシンやダイオキシン関連化合物質に曝露された例は,イタリアのSevesoをはじめ複数の国から報告がある.Yu-chengや,Seveso,ロシアやオーストリアの塩素ざ瘡コホートでは,20歳前や20代の前半に,ダイオキシンやダイオキシン類関連化合物に曝露した男性が父親である児の男女比は有意に低下している,との報告されている.一方で,曝露した女性が母親である児の男女比については影響が認められない,との報告がYu-chengやSevesoからなされている.
著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-77, 2005-03-01
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

目的; 食物アレルギーの実態調査について, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者家族の食品の購買行動に着目した実態調査は充分には行われていないので, その実態を調査した.<br>方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答が得られた.<br>結果; 食品の購入先は,「生協」「スーパー」,「自然食品店」の順である. 99%の家族では, 食品購入時に表示を確認している.「可能性表示」がなされた場合には, 原材料に含まれているものと解釈され, 購入を回避する可能性があると推察された.<br>患者家族は, 表示内容からその食品中に含まれる食物抗原量を推定し, 食品を選択しているが, その情報提供の機会や内容は十分ではないと考えており, 今後, インターネットの活用など, 表示以外の方法を用いて, より詳細な原材料等の情報提供を必要としている.
著者
神奈川 芳行 赤羽 学 今村 知明 長谷川 専 山口 健太郎 鬼武 一夫 髙谷 幸 山本 茂貴
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.100-109, 2014 (Released:2014-04-16)
参考文献数
16

目的 世界的に人為的な食品汚染についての関心が高まるに伴い,G8 では専門家会合が開催されたり,米国では多くの対策•方針案等が策定されている。しかし,日本では,食品企業の食品テロに対する認識が低く,その脆弱性が危惧されている。今回我々は,日本の食品企業に食品防御対策を普及させるためのガイドライン等を作成した。方法 すでに作成されている食品工場用チェックリストに示されている食品防御対策について,費用対効果を考慮した「推奨度」を整理した。その推奨度(費用対効果の高い対策順)を基に,「食品防御対策ガイドライン(案)」を作成し,食品工場に対して聞き取り調査を実施した。また,食品防御の観点から,食品工場用チェックリストやガイドラインと「総合衛生管理製造過程承認制度実施要領(日本版 HACCP)」を比較した。結果 推奨度を基に試作したガイドライン(案)に対する食品工場への聞き取り調査を踏まえて,「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)」とその解説を作成した。また,食品企業に普及させるために,HACCP における食品防御の観点からの留意事項を作成した。結論 食品防御対策を普及させるためには,食品事業者が使用しやすいガイドラインが有用と考えられた。