著者
岸田 直裕 島崎 大 小坂 浩司 小菅 瑠香 秋葉 道宏 林 謙治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.579-585, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 近年注目を集めている銅を用いた水中の微生物の不活化技術の現状および課題を明らかとする。方法 国内外の学術雑誌等に掲載された文献情報を基に,銅を用いた微生物の不活化技術の歴史,不活化機構,不活化効果が確認されている微生物,水中の微生物の不活化技術について整理した。結果 銅を用いた微生物の不活化技術は古くから利用されていたが,1930年代より抗生物質の利用が広まったことから,銅を用いた不活化技術は使用されなくなった。一方で,近年は抗生物質耐性菌の存在が問題視されており,抗生物質に代わる微生物の制御アプローチの 1 つとして,銅を用いた微生物の不活化技術が再認識され始めている。不活化機構については,その詳細はいまだ明らかとなっていないものの,銅イオン自体の毒性と銅表面に生成される活性酸素による強力な酸化作用によって不活化が起こると推測されている。Legionella pneumophila, Salmonella enterica, Mycobacterium tuberculosis 等の公衆衛生上問題となる多くの病原微生物に対して不活化効果が確認されている。建物内の給水管を中心に多くの水関連設備において,近年銅を用いた不活化技術の導入が検討されており,人への健康影響がほとんど発生しないと推測される水道水質基準を満たす濃度範囲であっても,水中の微生物を不活化可能であることが一部の研究でわかってきた。一方で,不活化効果が短期間に留まることも多く,効果を長期間持続させる技術を開発することが今後の課題であるといえる。また,銅管は残留塩素の低減や消毒副生成の生成にも影響を及ぼしていると報告されており,このようなリスクと不活化効果というベネフィットのアセスメントが今後必要であろう。結論 銅を用いた水中の微生物の不活化技術には,実用上の課題は残るものの,その有用性は十分に明らかとなっており,病院施設の給水設備等での利用が今後期待される。
著者
岸田 直裕 松本 悠 山田 俊郎 浅見 真理 秋葉 道宏
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.70-80, 2015-04

目的:我が国における飲料水を介した健康危機の発生実態を明らかとすることを目的とした.方法: 1983年 1 月から2012年12月までの30年間を対象期間とし,期間中に発生した飲料水を介した健康危機事例を収集し,健康危機の発生傾向について分析を行った.結果:過去30年間に飲料水を介した健康危機事例は約590件発生しており,化学物質が原因の事例が最も多かったが,明らかな健康被害が発生した事例では,原因物質の大半は微生物であった.地下水を水源とする専用水道や飲用井戸等の小規模の施設において健康被害を伴う水質事故が高頻度で発生しており,主要な発生要因は消毒の不備であった.また,飲料水を介した病原微生物が原因の健康リスクは米国やEUと比べ低く維持できていると示唆された.結論:我が国の飲料水を介した健康リスクを減少させるためには,飲用井戸,専用水道等の小規模施設の適切な衛生管理を実施していくことが重要である.
著者
中村 怜奈 小橋川 直哉 小坂 浩司 久本 祐資 越後 信哉 浅見 真理 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_641-III_650, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
23
被引用文献数
2

カルキ臭の主要な原因物質の一つであるトリクロラミンについて,原水中での生成能を評価するとともに,トリクロラミン生成への共存物質の影響について評価した.15原水のトリクロラミン生成能は6~140μg Cl2/Lの範囲であった.一般水質項目との関係について検討したところ,アンモニア態窒素濃度と関連性が認められた.また,アンモニア態窒素濃度が同じ場合,アンモニウム水溶液中のトリクロラミン生成能の方が原水中よりも大きい値であった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に天然有機物(NOM)が共存した場合,トリクロラミン生成能は低下したことから,NOMにはトリクロラミンの生成を低下させる影響があることがわかった.対象としたNOMのうち,ポニー湖フルボ酸はトリクロラミン前駆物質でもあった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に臭化物イオンが共存した場合,トリクロラミン生成能は低下した.一方,NOM共存下で臭化物イオンを添加した場合,アンモニウム水溶液ではその影響は認められなかった.グリシン水溶液の場合,50 μg/Lまでは影響しなかったが,200 μg/Lではトリクロラミン生成能が若干低下した.原水に臭化物イオンを添加した場合,トリクロラミン生成能は影響を受けなかった.
著者
岸田 直裕 秋葉 道宏
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.195-201, 2009-12-31 (Released:2010-07-15)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1
著者
中村 怜奈 小橋川 直哉 小坂 浩司 久本 祐資 越後 信哉 浅見 真理 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_641-III_650, 2012
被引用文献数
2

カルキ臭の主要な原因物質の一つであるトリクロラミンについて,原水中での生成能を評価するとともに,トリクロラミン生成への共存物質の影響について評価した.15原水のトリクロラミン生成能は6~140μg Cl<sub>2</sub>/Lの範囲であった.一般水質項目との関係について検討したところ,アンモニア態窒素濃度と関連性が認められた.また,アンモニア態窒素濃度が同じ場合,アンモニウム水溶液中のトリクロラミン生成能の方が原水中よりも大きい値であった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に天然有機物(NOM)が共存した場合,トリクロラミン生成能は低下したことから,NOMにはトリクロラミンの生成を低下させる影響があることがわかった.対象としたNOMのうち,ポニー湖フルボ酸はトリクロラミン前駆物質でもあった.アンモニウム水溶液,グリシン水溶液に臭化物イオンが共存した場合,トリクロラミン生成能は低下した.一方,NOM共存下で臭化物イオンを添加した場合,アンモニウム水溶液ではその影響は認められなかった.グリシン水溶液の場合,50 μg/Lまでは影響しなかったが,200 μg/Lではトリクロラミン生成能が若干低下した.原水に臭化物イオンを添加した場合,トリクロラミン生成能は影響を受けなかった.
著者
小坂 浩司 浅見 真理 佐々木 万紀子 松井 佳彦 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.125-133, 2017
被引用文献数
3

全国の水道事業を対象に2009~2011年度の原水での農薬の測定計画と検出状況の関連性を水道統計のデータを基に解析した。農薬を測定した水道事業は約650, その約20%で農薬が検出された。農薬を測定した水道事業を水道水源, 農薬の測定回数と測定種類数で分類したとき, 地表水を水源とし農薬の測定回数と測定種類数が多い水道事業のグループは農薬を検出した水道事業の割合 (検出率) や検出された農薬の種類数が多かった。農薬の測定回数が1回のグループは農薬が検出された水道事業の割合は少なく, その多くは1種の農薬を単年度のみで検出していた。地下水を水道水源に使用している水道事業は総じて検出率は低かった。検出された個別農薬は77種, 比較的多くの水道事業 (10以上) で検出されたのは10種程度であった。検出される可能性がある農薬には地域多様性があるが, いくつかは全国の多くの水道事業から検出される可能性が示された。