著者
稲垣 卓造
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.78-87, 1987

高層集合住宅の外部色彩に関する調査を, 名古屋市内の二つの区において実施した。その結果は次のとおりである。1)基調色については, 高明度低彩度色が全体の75%強を占めた。他の4分の1弱が中, 高彩度色であり, それらの70%強がタイル仕上げによるものであった。2)アクセント色は, バリュー・クロマ図上で基調色と比べ広く分散しているが, 低明度低彩度部分に小さな集中が見られた。またヒューのピークがYR系に移行していた。3)アクセント色の部位に関して, そのいくつかは使われる色彩の範囲がかなり限られていた。4)アクセント色のほとんどが, その基調色より低明度低彩度であったが, 二, 三の部位のアクセント色についてはそれ以外の傾向を示した。5)中, 高彩度色を基調色にもつ場合, その建築の色彩以外の属性(仕上げ, 住戸数, 竣工年, 所有形態など)によって規定されやすい。また, アクセント色の部位についても同様の傾向が強いものがあった。
著者
垣鍔 直 中村 肇 稲垣 卓造 堀越 哲美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.67-73, 2000-02-28 (Released:2017-02-03)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

Kruithof demonstrated the preferred combination of illuminance levels and color temperatures. However, as Kuller pointed out, a seasonal change and gender difference in such preference may be expected. In order mainly to observe a seasonal change in preference of color temperatures for a given illumination level, four male and female subjects were exposed to four different conditions of color temperatures of 3,000K and 7,500K combined with room temperatures of 22℃ and 30℃ at l, 5001x in summer and winter. In addition, preference of color temperature was tested under the thermally neutral condition in spring and autumn. Physiological variables such as skin temperatures, heart rate, finger blood flow, blood pressure and oral temperature were measured. Themal sensation vote, themal comfort vote, and sensation votes on illuminance and relaxation were reported at 5-min. intervals. As a result, evaluation from psychological and physiological responses indicated that 7,500K was more preferred than 3,000K at 1500lx in spring and summer.
著者
稲垣 卓造 飯島 祥二
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.308-318, 2009-12-01
被引用文献数
1

室内仕上げ面の光沢が、室内の雰囲気評価とそこで想定される行為の選択にどのような影響を与えるかを実験で確かめた。実験変数として、光沢以外にも両者に大いに影響を与えると考えられる色彩、光源、家具配置などを組み込んだ。9要因を組み合わせた27の室内模型をプロジェクターで投影し、20人の被験者を対象に実験を行った。実験計画は、直交配列により9つの主効果と2つの交互作用が吟味できるよう割り付けた。雰囲気評価の結果を因子分析にかけたところ、3因子が抽出された。ぬくもり、静穏さ、清新さと名付けた。壁と床の色相、壁の光沢、パーティションの高さと家具配置の交互作用が雰囲気評価に大きな影響力をもたらすことが明らかとなった。行為の選択についても3因子が抽出された。くつろぎ、知性、孤独と名付けた。ここでも、床の光沢の主効果と、パーティションの高さと家具配置の交互作用が目立った効果を示した。双方の結果から、半光沢の仕上げが「中途半端であいまいな」印象を与えるためか、好ましくない結果を与えることが明らかにされた。また、パーティションの高さと家具配置の交互作用も大きなウエイトを占め、光沢とともに空間構成と人間の行動に大きな影響力を与えることも明らかとなった。
著者
稲垣 卓造
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.148-156, 1989-02-10
被引用文献数
2

この研究は, 景観設計への応用を目的とし, 建築外部色彩と広告塔の色彩の視覚効果を定量化するために行ったものである。実験では, コンピュータグラフィックスにより作成された150の刺激を, カラースライドで被験者に提示した。まずファサードの色彩が異なった建築のスライドを, 17の形容詞対によりSD法で評価させた (実験1)。次に150の広告塔 (3つの規模, 10色の広告塔, 5色の下層建築の組合せ) に対する評価を「効果点」, 「不快さ」の2つの尺度で評定させた (実験2)。1) 因子分析により4因子が抽出された。第I因子は建築外観の快さに関係し, 「評価」因子と名付けた。第II因子は外観の活気の程度に関係するため, 「活動」因子とした。第III因子は「暖かい-冷たい」の尺度だけに関与し, 「暖かさ」因子と命名した。そして第IV因子は, 「明確さ」因子とした。2) 数量化I類により, 第I因子「評価」は他の要因よりも明度の影響を強く受けていることが明らかになった。また「活動」は彩度に, 「暖かさ」は色相に影響されている。すなわち, 明度が高くなるほど建築は快く感じられ, 彩度が高くなるほど活気が出てくる。3) 広告塔の「効果点」は主として, 建築との明度差に依存し, ついで広告塔の色彩自体が影響力をもつ。「不快さ」もまた, 明度差に最も大きく影響を受ける。
著者
稲垣 卓造
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.451, pp.29-39, 1993-09-30
被引用文献数
17

This study is an attempt to propose both fundamental data for color guidance of townscape ordinance and guidelines for color design of architecture. Psychological experiments were carried out for gathering data on evaluations of exterior colors of buildings and those of billboard towers ; a scale-model of street view being utilized, the above townscape elements were judged as the mode of surface color. The ranges on acceptable chroma of the townscape elements were shown by using these data as a basis. As the ranges are considerably influenced by hue and chroma, careful steps should be taken.