著者
直井 岳人 十代田 朗 飯島 祥二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.82-87, 2013-04-25 (Released:2013-04-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究は、歴史的町並みにおいて訪問客のまなざしの対象となりうる、住民の生活の様相を抽出すること目的とする。その為、訪問客を対象に質問票調査を実施し、彼らが、魅力的だと感じた事物、及びそれを通して地元の生活を感じた事物に関する自由記述回答の内容を分析した。また、住民を対象に別の質問票調査を行い、訪問客向けの調査で抽出した事物が、どの程度、現在高山の古い町並みに住む人々の暮らしぶりを表していると思うか、またどの程度、訪問客向けのものであると思うかに関する評定を求めた。その結果、訪問客が知覚する町並みの利用方法の重要性が示された。また、何を地元の様相と感じるかについて、訪問客と住民の間に類似点と相違点が見られた。本研究の結果は、地元の生活を考慮し、生かした観光地マネジメントに貢献するものだと考えられる。
著者
堀 信行 飯島 祥二 高岡 貞夫 岡 秀一
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

色彩景観研究に取り組むに当たり、城下町起源の東西の小都市である角館と萩を対象地域に選び、平成8年度には角館、平成9年度には角館と萩の両者について現地調査を実施した。研究は大きく二つの方向で進められた。第一の方向は都市景観の色彩に関する計測的研究で、街路景観を構成する施設色彩の特性の都市間比較および自然・人工景観における輝度や色度の特性の都市間比較を試みた。当初、研究対象地域の植生の色彩がその地域の色彩景観との間に何らかの相互関係が存在するのではないかと考えたが、色彩景観として街路景観やビルの外壁など施設色彩に注目して分析を行った結果、現在のところ角館と萩の両者を比較しても、この作業仮説を積極的に支持する成果は得られていない。第二の方向は色彩民俗学的視点を取り入れた研究で、お祭りや絵図の中に現出する色彩群に社会的・文化的コードの文脈を読み取り、それを自然景観や記憶色との関係から分析した。角館の9月上旬に行われる祭りには、ヤマと呼ばれる山車が各町内から出て町を練り回る。山の象徴である山車は、きわめて濃い濃紺の布で覆われ、それに春の象徴としての桜、秋の象徴としての紅葉したモミジが飾り付けられている。さらに山の象徴に杉の樹も使われ、季節の推移に連動して山と里の間を出入りする神のイメージが植生の色彩を通して表現されている。これらの分析から、色彩景観として住民が互いに共有する記憶色といえる象徴的な色彩が意識され、それぞれが祭りの山車に表現されていることが分かった。
著者
上原 明 直井 岳人 飯島 祥二 伊良皆 啓
出版者
日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.5-18, 2021

本研究は観光目的地の認知される店舗の評価と観光者の購買行動との関係性に関するモデルを検証することを目的する。調査では沖縄県那覇市国際通り周辺に訪れている観光者を対象に調査票を同封した返信用封筒を配布した(配布:2000 部、回収:445 部、有効回答数:334 部)。その結果、店舗の全体評価である「活気のある沖縄的地元感」と普段の観光旅行で買物を楽しむ特性である「SET」が、土産物購買に関わるポジティブな感情である「PA」を媒介変数とし、土産物購買に関する促された感情である「URGE」と「再購入意向」へ影響を与えている可能性が示され、その中でも、「活気のある沖縄的地元感」の影響が強いことが示された。
著者
上原 明 直井 岳人 飯島 祥二
出版者
人間・環境学会
雑誌
人間・環境学会誌
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1-10, 2017

本研究は、観光目的地となっている商業空間における場面の特性とそこで促されうる観光活動の関係性を明らかにすること目的としている。調査では、沖縄県那覇市国際通り周辺の 10 場面に関する 60 名の県内大学生を被験者としたスライド評定実験を行い、その評定平均値を基にクラスター分析を行った。次に、分類された当該研究対象地に関して現地で 31 名の県内大学生に自由記述式の調査を行った。その結果、対象場面は、「観光者向けの場面」及び「地元の生活を感じられる場面」に区分されることが示唆された。また、「観光者向けの場面」では、「お土産を買うこと」、「よく知られた沖縄の観光情報を知ること」、「お土産店の店員との交流」という観光活動が促されうることが示唆された一方、「地元の生活が感じられる場面」では、「落ち着いた雰囲気の中で」、「観光者が地元の生活を感じながら」、「観光者が地元の人々と交流する」という観光活動が促されうる可能性が示唆された。以上のように対象商業空間の場面における印象評価の差が認められ、各場面の特性とそこで促されうる観光活動の関係性が検証された。本研究の結果は、観光目的地の場面における観光活動の特徴を分類・整理するための枠組みを構築するための有用なアプローチを示したと考えられる。
著者
稲垣 卓造 飯島 祥二
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.308-318, 2009-12-01
被引用文献数
1

室内仕上げ面の光沢が、室内の雰囲気評価とそこで想定される行為の選択にどのような影響を与えるかを実験で確かめた。実験変数として、光沢以外にも両者に大いに影響を与えると考えられる色彩、光源、家具配置などを組み込んだ。9要因を組み合わせた27の室内模型をプロジェクターで投影し、20人の被験者を対象に実験を行った。実験計画は、直交配列により9つの主効果と2つの交互作用が吟味できるよう割り付けた。雰囲気評価の結果を因子分析にかけたところ、3因子が抽出された。ぬくもり、静穏さ、清新さと名付けた。壁と床の色相、壁の光沢、パーティションの高さと家具配置の交互作用が雰囲気評価に大きな影響力をもたらすことが明らかとなった。行為の選択についても3因子が抽出された。くつろぎ、知性、孤独と名付けた。ここでも、床の光沢の主効果と、パーティションの高さと家具配置の交互作用が目立った効果を示した。双方の結果から、半光沢の仕上げが「中途半端であいまいな」印象を与えるためか、好ましくない結果を与えることが明らかにされた。また、パーティションの高さと家具配置の交互作用も大きなウエイトを占め、光沢とともに空間構成と人間の行動に大きな影響力を与えることも明らかとなった。