- 著者
-
竹中 健
- 出版者
- Hokkaido Sociological Association
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.39-59, 2010
ボランティア組織を政策的な意図をもって立ちあげ,そのなかへ人びとを動員しようとする様ざまな行政によるしかけと,その網に乗って真に他者のために活動したいと望む人びとの諸行為の連関を明らかにすることは重要である。それにより日本における相互扶助の社会関係が,制度的・非制度的な両面において今後どのような展開をもって進んでいくのかを予測し,より好ましい福祉社会のありかたを検討できるからである。<br> 多くの病院ではボランティア組織が導入されて 10年以上が経過している。それにもかかわらず,日本においては必ずしも十分に定着や拡大をしていない状況があるとするならば,その実態をていねいに把握し,分析する必要がある。<br> 本稿においては,行政主導によって 90年代後半以降に設立された病院ボランティアの典型として長野県にあるひとつの市立病院に存在する2つのボランティア組織と1つのボランティアグループの定着過程をみる。それにより,病院におけるボランティア組織導入後の展開可能性および病院内にボランティア組織が存在することの意義をもう一度実証的な見地から捉え直し,考えていく。行政による誘導後の病院ボランティアに展開の可能性はあるのか。そしてどのようなかたちで,定着または衰退していくと予想されるかを論じる。