著者
萱 和磨 原田 睦巳 冨田 洋之 川井 航
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.275-294, 2023 (Released:2023-10-26)
参考文献数
10

本研究では、「日本式宙返り懸垂」について局面ごとに実施者間の技術相違を探り、当該技を成功させる為の技術の一要因を考察することを目的とした。実施者については、習得者、未習得者のそれぞれ2 名ずつ4 名を選出した。習得者らの特徴として、準備局面では素早いぬき、あふりを行い、前方開脚宙返り局面では後方に移動しながら回転を行っており有用な技術であると示唆された。
著者
村川 大輔
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.177-183, 2022 (Released:2022-08-05)
参考文献数
10

本研究の目的は,作戦ボードの向きの違いが選手配置の認識に与える影響を明らかにし,より効果的な戦術ミーティングの実施方法を検討することであった.大学サッカー選手15 名を対象に,実際の試合場面を再現した選手配置の画像を用いて,再認段階の選手配置が事前に呈示される視聴段階の選手配置と同じであるかどうかを回答する同異判断課題を実施した.選手配置の画像は,縦向きと横向きの2 条件で呈示し,同異判断の決定時間と正答率について条件間で比較を行った.分析の結果,正答率に関しては,条件間で有意な差は認められなかった一方で,決定時間に関しては,縦向き条件の決定時間が横向き条件と比較して有意に早いことが示された.この結果は,サッカー選手にとって,縦向きに呈示された選手配置の認識が容易であることを示す.以上より,戦術ミーティングを行う場合には,作戦ボードを縦向きに使用することの有効性が示唆された.本研究の知見は,指導現場へ直接応用できるという点で重要な意味を持つといえる.
著者
中島 大貴 畔栁 俊太郎 安藤 優香 廖 本暠 山口 瑞生 桜井 伸二
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-12, 2022 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11

野球において,投手が投じる変化球は,“キレ”という言葉を用いて評価されることが多い.しかし,このキレに対して野球選手がどの程度共通した認識を持っているのか,また,それは客観的な指標(速度や変化量などの運動学的特徴)で表すことができるのかは明らかではない.そこで本研究では,①野球投手が投じた変化球に対する評価者のキレの評価の一致度を検証すること,②そのキレの評価と実際に投球された変化球の運動学的特徴との関係を明らかにすることを目的とした.そのために,高校生投手12名,大学生投手20名が投じた各球種の運動学的特徴を調べ,高校生,大学生それぞれ投手と同一チームに所属する複数の捕手(評価者)に各投手の各球種のキレを5段階で評価させた.そして,評価者間のキレの評価の一致度,および,キレの評価とその運動学的特徴との関係を,高校生,大学生それぞれにおいて調べた.その結果,キレという言葉に対する認識が一致している球種と,そうでない球種があることがわかった.また,カーブ,カットボールにおいては,ボールの運動学的特徴でキレを定量化することができたが,スライダーやチェンジアップにおいてはできなかった.
著者
上林 大志 森 寿仁
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.256-266, 2022 (Released:2022-11-03)
参考文献数
11

本研究では,ペップ・グアルディオラ監督が体系化した5 レーン理論に基づいたハーフスペースを利用したサッカー戦術の特徴を明らかにすることを目的とした.対象試合はイングランドプレミアリーグおよびヨーロッパチャンピオンズリーグなどの18 試合とし,ペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティFC の対戦試合11 試合およびその他のチーム同士の代表的な試合7 試合とした.そして,ハーフスペースを利用した戦術に関わると考えられる13 項目を試合映像から分析した.その結果,マンチェスター・シティFC はペナルティエリア(PA)内への侵入回数が多く,PA 内のハーフスペース(ポケット)でボールを受ける動きが多いことが明らかとなった.一方で,ポゼッションによる攻撃戦術であるため,PA 侵入前の守備選手が多いことも明らかとなった.これらのことから,ハーフスペースを利用した戦術を取ることでPA 内に多く侵入でき,シュート機会にも恵まれやすいが,守備選手が多いために難易度の高いシュート状況となり,シュートを打つ選手(フィニッシャー)のシュート能力が重要となる戦術であることが明らかとなった.
著者
福永 哲夫
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, no.SpecialContribution2023, pp.2-12, 2023 (Released:2023-12-27)

本研究の目的は、元体育大学長(FT)の60 歳から80 歳までの20 年間の身体情報(体重、血圧、体調、歩数、貯筋運動等)の日間変動及び加齢変化を明らかにし、体調(関節痛や倦怠感等)と身体運動との関係を見ることである。その結果、1)精神的ストレス(配偶者死別や大学内トラブルなど)が血圧の上昇を伴う事が明らかであった。2)体重とウエスト周径囲との間には高い有意な相関関係が見られ、体重1 kg の増減はウエスト周径囲1 cm 増減を伴う事が示された。3)体重/ ウエスト周径囲比(除脂肪体重の指標)は加齢とともに減少する傾向を示したが、同年代の多くの日本人男性の平均値+ 2SDと高い値を示し、この高い除脂肪体重は日々の貯筋運動の効果によると思われた。4)64 歳~ 69 歳及び77 歳以降は関節痛等の体調不良日が少なくなったが、その理由として毎日のストレッチングの実施があげられた。5)高齢(80 歳)でも身体運動(ゴルフラウンド等)を続けられたのは、常に自らの身体情報に注意しながら実施したストレッチングや貯筋運動等、日常生活活動の工夫によるものと考えられた。
著者
中島 明香 浅沼 道成 長谷川 弓子
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.206-223, 2023 (Released:2023-09-14)
参考文献数
51

本研究の目的は,熟練競技者が競技人生において「どん底」に至った心理的・行動的特徴を明らかすることであった.社会人として3 年以上陸上競技を継続した10 名の選手を対象とし,我々は半構造化面接法によるインタビュー調査を実施した.調査後,「どん底」を学生時代に経験した事例と社会人時代に経験した事例に分類し,KJ 法を用いて分析した.その結果,学生時代にどん底を経験していた全ての事例に【受動性(指導者への依存)】と[拠り所の不在]が確認され,その他に【やるべきことの不明瞭】,【結果が出ない】,【心身の負担】,【環境の変化】が特徴として確認された.社会人時代の事例からは,【心身の負担】,【デュアルキャリア困難】,【結果が出ない】,【やるべきことの不明瞭】における[専門的知識不足]が特徴として確認された.特に[加齢による身体的変化],[心理的消耗],および【デュアルキャリア困難】は社会人時代の事例にのみ,確認された.今後,量的な調査の必要はあるが,競技を長期に継続する選手に対してはこれらの特徴を踏まえたサポートや対策の必要性が示唆された.
著者
森 誠護 永田 聡典 名頭薗 亮太
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.60-67, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
21

本研究では,バタフライ及び平泳ぎで用いるopen turnに着目し,ターン動作とジャンプパフォーマンスとの関係性について明らかにすることで,競泳選手の効果的なトレーニング方法の基礎資料を得ることを目的とした.本研究は,バタフライ及び平泳ぎを専門とする大学男子競泳選手8名を対象とし,競泳ターン測定はopen turnにて実施した.被験者の泳区間はターン前後10mとし,全力泳にて泳動作及びターン動作を実施した.被験者のターン動作を評価するため,ターン動作時の回転時間,足部接地時間,蹴り出し速度をそれぞれ計測した.ジャンプパフォーマンス測定では,スクワットジャンプ,垂直跳び,立幅跳びを計測した.この結果,ターン測定とジャンプパフォーマンス測定の変数間での関係性において,ターン時の蹴り出し速度とスクワットジャンプにおけるピークパワー(r=0.857,p<0.01)及びピーク速度(r=0.805,p<0.05)との間に有意な相関関係が認められた.以上の結果から,スクワットジャンプのピークパワー及びピーク速度を高めるためのトレーニングはターン局面のパフォーマンス向上に寄与する可能性があることが明らかとなった.
著者
中島 さち子 田中 香津生 清水 克彦 山田 浩平 山羽 教文
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.45-59, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
24

本研究の目的は,小学校「体育」で取り扱うゴール型ボール運動「タグラグビー」の新たな学習指導計画として,プログラミング的思考をとりいれた,STEAM化されたタグラグビーの学習指導計画を開発し,その学習効果を調査することである.まずは,タグラグビーを数理モデル化した碁盤ゲームを開発し,局面での認知・判断要素を抽出したAIシミュレーションツールを開発,スポーツにプログラミング的思考を導入し,多角的に戦術を考えさせる計9時間の学習指導計画を立案した.その後,公立小学校第5学年2クラス計52名を対象に本学習指導計画を実施し,事前事後の児童のライフスキルやパフォーマンスの向上,学習や運動への態度の変化,情意や認知の形成などを調査した.結果,タグ取得数やパス回数の有意な増加 (p<0.01),問題解決力や対人関係力などの有意な向上 (p<0.05) などパフォーマンスやライフスキルの向上が見られた.従って,本学習指導計画は,平成29年公示の小学校学習指導要領 (文部科学省,2018a) にて奨励されているプログラミング的思考を用いた教科等横断的な学習指導計画の一例であり,体育でも学習効果があると示唆された.
著者
小畠 翼 林 容市 高見 京太
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.388-400, 2023 (Released:2023-12-07)
参考文献数
32

本研究では,中学生年代の陸上競技の中・長距離種目の競技者を対象に,3000 m 走Time Trial(以下,TT)に向けた7 日間のテーパリングを実施し,テーパリング開始から4 日目または6 日目というタイミングで1000 m走の刺激練習を実施した場合の3000 m走タイムおよび心理的な疲労の変化を比較した.刺激練習を3000 m 走の自己最高タイムの110%の強度で実施した結果,テーパリング期間の4 日目または6 日目に刺激練習を行っても,その後に実施した3000 m 走TT タイムには有意な差異は認められなかった.また,テーパリング期間の4 日目または6 日目に刺激練習を行っても気分プロフィール検査(POMS2)で測定した3000 m 走TT 当日の疲労尺度の得点が,テーパリング初日と比較して,有意に小さい値を示していた.これらから,中学生年代の競技者が,7 日間のテーパリングの中で4 日目または6 日目に刺激練習を行っても,TT 実施日には心理的な疲労度に差がなく,走パフォーマンスを維持できる可能性が示唆された.そのため,個人の疲労度などに応じて刺激練習の実施タイミングを柔軟に決定する必要性が示唆された.
著者
阿比 留萌 金高 宏文 竹中 健太郎 下川 美佳
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.235-245, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
10

本研究は, 相手が一足一刀の間合いに入るために移動動作を起こす機会における出ばな面を習得した剣道競技者 (A 競技者) の身体知について報告した.具体的には,習得前後の運動動作と運動意識の懐古的比較から習得・指導に向けた身体知の提示を目的とした.その結果,重要な身体知は「左足母指球付近の荷重感」の意識であることが示唆された.打突前に左足の母指球付近に荷重することで,体を前に出す動作を開始する際に生じる右足から左足に体重をかけ直す動作(荷重移行)が省かれ,さらに打突の適切な距離や体勢に関する運動意識を得ることに繋がった.以上のことから,相手が一足一刀の間合いに入る機会における出ばな面を打突する場合は,左足母指球付近の荷重感を意識し打突の準備をすることが重要であると考えられる.
著者
福村 僚 甲斐 智大 塩川 勝行 高井 洋平
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.145-157, 2022 (Released:2022-07-06)
参考文献数
8

本研究は,サッカーの攻撃方向を伴うボールポゼッショントレーニングにおける集団変数とテクニカルプレーに対する競技水準の影響を明らかにすることを目的とした.22 名の大学男子サッカー選手を,レギュラー群(N = 11)および非レギュラー群(N = 11)に分けて,同一のオーガナイズで攻撃方向を伴うボールポゼッションを行わせた.ポゼッションのオーガナイズは,縦12m 横24m のコート内で4 対4 を行い,両端の短辺に2 人,コート内に1 人のフリーマンを配置した.テクニカルプレー(コントロールミス,パス本数,パッキングレート)は,記述分析で定量した.選手の位置は,ローカルポジショニングシステムによって記録された.選手の位置から攻撃および守備チームの面積を算出した.パッキングレートは,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも高かった.パス本数は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも多い傾向であった.競技水準に関わらず,攻撃時の面積は守備時の面積よりも広かった.攻撃時の面積は,非レギュラー群よりもレギュラー群のほうが大きく,守備時の面積は,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりも小さかった.本研究の結果は,攻撃方向を伴うボールポゼッションを同一のオーガナイズで実施した場合,レギュラー群のほうが非レギュラー群よりもパッキングレートが高く,それは攻撃時にボールを受けるための位置による違いである可能性が示唆された.
著者
小林 玄樹 来田 宣幸
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.140-154, 2023 (Released:2023-06-12)
参考文献数
32

新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により東京五輪2020 大会が1 年延期になった.本研究は,このような状況下で東京五輪2020 大会に向けた縦断的な心理的サポートが,選手の心理面にどのような影響を及ぼしたかについて事例的に検討することを目的とした.本研究の対象者は,近代五種競技選手6 名であった.心理面の評価は心理的競技能力診断検査を実施した.その結果,新型コロナウイルス蔓延によるスポーツ活動自粛等の影響により,心理的競技能力は選手によって異なった傾向を示した.また,新型コロナウイルス蔓延によるスポーツ活動停止期からスポーツ活動再開期にかけての心理的競技能力の変化も同様に,選手によって異なった傾向を示した.このことから,新型コロナウイルス蔓延による東京五輪2020 大会延期やスポーツ活動自粛等による近代五種選手の心理面への影響は個人差を有していたことが明らかになった.したがって,特殊な状況下における心理的サポートは選手の心理面を適切に評価し,個人に応じた介入が求められる.さらに,スポーツメンタルトレーニング指導士は,マインドフルネス,身体面及び心理面における目標設定,アスリートのキャリア形成などを介入することで,心理的競技能力の向上,低下の抑制に貢献できる可能性が示唆された.
著者
飯田 祐士 前田 明
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-8, 2023 (Released:2023-03-16)
参考文献数
16

本研究の目的は,大学トップレベルの女子卓球部の体力測定データから,大学女子卓球選手における体力要素の指標を示すこと,競技力にかかわる測定項目を明らかにすること,体力要素向上の一要因と考えられるトレーニングプログラムの一例を示すことであった.示されたデータから,競技力(レギュラーと非レギュラー)との関連性より,立ち幅跳びと20m 走が有効な測定項目であることが明らかとなった.またこれらの測定項目に関連する体力要素向上には,下肢の一般的なレジスタンストレーニングに加え,プライオメトリックスやダンベルを使用したウエイトリフティングエクササイズを用いて,年間を通したトレーニングプログラムを実施することが有効である可能性が示唆された.
著者
伊藤 詩織 北村 勝朗
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.9-23, 2023 (Released:2023-03-16)
参考文献数
25

女性競技者の月経に対する支援自体は存在するが,利用につながっていない点,支援を受けていると感じられていない点が課題として挙げられる.女性競技者の月経に対する考え方やその視点から見える環境などを詳細に聞き取り,知ることが重要と考えられるため,本研究では,女性競技者の月経に関わる現象を聞き取り,探求することを目的とする.経験や認知,行動といった現象を探求する目的で半構造化インタビューを実施し,個別性を明らかにするため,1 名を対象に深く考究する.質的データ分析方法に基づいた分析の結果,女性競技者と月経との関係性は,【パフォーマンスに必要な身体感覚】【試合に被って欲しくない月経】【自分に合った月経サポートが見つからない】および【競技における信念】の4 つのカテゴリーによって示された.月経に関するさまざまな経験をすることで,女性競技者の各カテゴリーは循環するように互いに影響を及ぼし合い,信念や対処方法を変化させていく点が推察された.競技者に月経という現象がただ付随しているのではなく,月経があることで生じる競技者特有の問題が生じ,競技生活を送る個人の思考や感覚,人間関係の中全体に月経が存在していることが見出され,困難や葛藤,対処が生じている点が見出された
著者
道下 慈英 中島 孝寛 八重嶋 克俊 衣笠 竜太
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.298-304, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
23

本研究では,セーリング競技のフルハイクアウトの姿勢を模したハイクアウトテストを実施し,その持続時間および下肢への負担の観点から,フルハイクアウトの有効な足首の使い方を明らかにすることを目的とした.足関節を背屈させ舟状骨上にフットベルトをかけるフォーム(NAV)と,足関節 を底屈させ中足骨上にフットベルトをかけるフォーム(MET)でのハイクアウトテストを行い,持続時間と膝関節伸展筋群の筋活動電位(EMG)を比較した.EMG の電極は内側広筋(VM),外側広筋(VL),および大腿直筋(RF)の筋腹に貼付した.MET の持続時間(95 ± 18 秒, 平均値と標準偏差)は,NAV の持続時間(73 ± 20 秒)よりも有意に長かった.全ての対象者は股関節角度を維持できなくなったことにより測定終了したことから,フルハイクアウトの持続時間を決定するのは股関節屈曲筋群の筋持久力であると考えられる.しかし,フォームによる各筋のEMG に有意な違いは認められなかった.股関節屈曲にも寄与するRF に関して,フォームに関わらず,時間経過に伴うEMG の振幅が増大することが確認された.以上のことから,フルハイクアウトの姿勢を長時間持続させるフォームとして,足関節を底屈させるMET が有効であると示された.
著者
髙橋 仁大 柏木 涼吾 岡村 修平 大澤 啓亮 村上 俊祐
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.267-276, 2022 (Released:2022-11-29)
参考文献数
21

本研究は,大学女子テニス選手1 名を対象に,サービスのパフォーマンス向上を目的とした取り組みとその効果を事例的に検討したものである.対象とした女子選手は,比較的身長が高く,サービスを自身の武器として認識しており,そのパフォーマンスをさらに向上しようとする意欲を持っていた.指導者は対象とした選手のサービスの能力について高く評価しており,そのパフォーマンスをより良くすることを目指した.サービスのパフォーマンスを向上するための主な取り組みとして,技術面の具体的目標は1st サービスのスピードを上げることと,2nd サービスの回転数を増やすことを目指すものであった.およそ5 ヶ月間の取り組みの中では,スイングスピードを向上することや,回転数を増やすためにスイングの方向やラケットとボールの当て方を修正することなどを試みた.取り組みの前後で,対象選手の1st サービスのスピードは速く,2nd サービスのスピードは遅くなっていた.2nd サービスの回転数は大きくなる傾向にあった.また打点の高さが有意に低くなっており,1st サービスのスピードの向上に貢献していると考えられた.2nd サービスの回転数の増加には技術的課題の克服が貢献していると考えられた.
著者
小澤 雄二 小崎 亮輔 藤田 英二
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.158-163, 2022-07-21 (Released:2022-07-28)
参考文献数
15

本研究では,柔道選手が「積極的に前に出て相手を押し込んで試合を展開することの利点」と「握力発揮の影響」を明らかにするために,重心位置の相違や,握力発揮の有無を設定した条件下における単純全身反応時間を検証し,柔道のコーチングに活かすことを目的とした.結果は,以下に示すとおりである. 1.単純全身反応時間は,握力発揮の有無に関わらず,重心位置が前方,自然体,後方の順に速かった. 2.単純全身反応時間は,重心位置に関わらず,握力発揮なし時に比べ,握力発揮あり時には遅延した. 以上のことから,試合において積極的に前に出て相手を押し込むことや,組み手の工夫によって柔道衣の握り方に強弱を付けることは,より素早い反応による素早い技出しや防御動作が期待できるという点において,有利に試合を進めるための戦術となり得るものと考えられる.
著者
吉本 隆哉 杉田 早登 竹内 郁策
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-44, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
15

本研究では,ハンマー投げを模したスイングトレーニングが,外側腹筋群の形態とスイング速度に与える影響を明らかにすることを目的とした.被検者は,大学硬式野球部に所属する野手17名(年齢19.5 ± 1.5歳,身長169.8 ± 4.0 cm,体重66.9 ± 6.4 kg)とし,トレーニング群8名とコントロール群9名に分けた.スイング速度の測定は,慣性センサユニット,アタッチメントおよびスマートフォンのアプリケーションから構成されるバットスイング解析システムを用いて測定した.加えて,踏み出し脚側の外側腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋および腹横筋)の筋厚を測定した.トレーニングは,5 kgメディシンボールとネットを組み合わせたものを用い,ハンマー投げのトレーニングを模した上肢および体幹を回旋させながら歩行するスイング歩行を実施した.その結果,スイング速度は両群間で有意な交互作用が認められ,トレーニング群のみ有意な増大がみられた.以上のことから,ハンマー投げを模した体幹回旋トレーニングは,野球のバッティングにおけるスイング速度の向上に有効となることが明らかとなった.
著者
山地 啓司 高山 史徳 鍋倉 賢治 YAMAJI Keiji TAKAYAMA Fuminori NABEKURA Yoshiharu
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 = Research journal of sports performance (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.375-387, 2016

これまで呼吸筋トレーニングが非運動時に一定のリズムで深くゆっくりした速さで繰り返す呼吸法で行われているが、必ずしも一致したトレーニング効果が得られていない。そこで、本研究はランニング中にノーズクリップを鼻部に装着して行う呼吸筋トレーニングが生理的機能の改善やランニングのパフォーマンスの向上に有効であるか否かを追究した。被験者はランニング習慣を有する大学生及び院生8名(男子3名、女子5名)とし、ノーズクリップを装着する4名(ノーズクリップ群)と装着しない(コントロール群)4名に区分し、4週間後に両群が交代してさらに4週間トレーニングを行うクロスオーバー実験を行った。トレーニング前・4週間後・8週間後の3回にわたり、トレッドミルを用いた漸増負荷テストを実施した。その結果、ノーズクリップ群にのみall-outに達した時の走速度が6m(2.4%)、持続時間が0.6分(4.8%)それぞれ延長し、さらに喚起性閾値の走速度が13m/min(7.6%)増加した(p<0.05)。しかし、有酸素的な生理的応答ではその増加を証明する原因を明らかにできなかった。今後は呼吸筋のトレーニング期間(1か月以上)を長くして、パフォーマンス向上の生理的メカニズムを究明する必要があろう。