著者
竹内 将俊 小島 宏海 渡辺 昌也 Masatoshi TAKEUCHI KOJIMA Hiromi WATANABE Masaya
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.115-122,

東京農業大学世田谷キャンパスにおいて鳥類のラインセンサスとポイントセンサスを実施し,同様の調査を行った馬事公苑と種構成や個体数を比較した。1年と3カ月にわたる両調査地の調査で,計24科42種が確認された。2つの調査地間で,2種類のセンサス法による月を単位とした種数,個体数,Shannon-Wienerの多様度指数を比較した結果,世田谷キャンパスに比べ馬事公苑で種数と個体数が多く,多様度指数が高い傾向が認められた。この理由として,馬事公苑は外周を階層構造の発達した樹林が取り囲むなど緑地の占める面積割合が高く,まとまった落葉広葉樹林や水辺,芝地など多様な環境が含まれることが影響していると考えられた。また,世田谷キャンパス全体を25m×25mの区画に区切り,シジュウカラ,メジロ,コゲラなど7種の観察総数と緑被率との関系を解析した結果,すべての種で緑被率と観察総数との間に正の相関が認められた。キャンパス内の鳥類の多様性を高めるためには,落葉層を含む下層植生の発達したまとまった樹林を設けることが有効であると考えられる。
著者
飯嶋 一浩 竹内 将俊 Kazuhiro Iijima Takeuchi Masatoshi
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-22,

クロハナムグリの生活史を屋外飼育実験により推定した。その結果,本種は年1化性であり,成虫の活動期間は4月下旬から8月下旬であった。幼虫は3齢が終齢であった。産卵は初夏に行われ,8月中旬には新成虫となり地上に出現した。しかしながら,野外において晩夏から秋季にかけて成虫を発見できないことから,自然状態では新成虫は羽化後も朽木内に留まり,そのまま越冬すると考えられる。初年度の越冬態は成虫であり,翌春に休眠から覚めた成虫は地上に出現し,摂食活動と生殖活動を行った。なお,成虫の一部は2年間生存し,2回の繁殖期があった。野外においても体表が磨耗し2年間生存していると推測される個体が時折確認されることから,一部の個体は自然条件下においても多回繁殖を行っていると考えられる。成虫の寿命は1年から2年であった。これらの結果から本種の生活史型は,年1化・成虫越冬・多回繁殖型と言える。このように,クロハナムグリは一部の成虫による多回繁殖という戦略を持つことによって,朽木という数少ない餌資源を長期に探索し,次世代を残すことが可能な能力を備えていた。なお,成虫の訪花植物について調査した結果,1綱7目8科23種が確認された。
著者
飯嶋 一浩 竹内 将俊 Kazuhiro Iijima Takeuchi Masatoshi
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.89-96,

シロテンハナムグリの生活史を,屋外飼育実験の結果を基に推定した。飼育実験の結果,本種の生活史型は,年1化・幼虫越冬・多回繁殖型であった。成虫の寿命は約1年で,活動期間は5月から9月であるが,夏季に羽化した新成虫は摂食活動の後に地中で越冬して,翌年も再び活動を行った。なお,新成虫の多くは初年度には繁殖活動を行わないが,一部は初年度と次年度の2回,繁殖を行った。幼虫は3齢が終齢であり,初年度の冬季は終齢幼虫の状態で休眠室を形成し,この中で越冬した。成虫の餌資源植物について調査した結果,餌資源植物は3綱18目25科42種であった。このうち訪花植物は2綱14目19科30種,樹液利用植物は2綱3目3科5種,果実利用植物は1綱4目5科8種であった。本研究の結果から,季節を通じ成虫が花粉・花蜜食と樹液食や果実食への切替えを行っていることが,餌資源の枯渇時期を回避することに繋がり,このことが同じハナムグリ亜科の他種に比べて成虫の活動期間と寿命が長い一因であると考えられた。
著者
入江 彰昭 原田 佐貴 内田 均 竹内 将俊 Teruaki Irie Saki Harada Hitoshi Uchida Masatoshi Takeuchi
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.9-18, 2020-06-29

本研究は,宮城県・岩手県において数百年以上の間,持続的なマネジメントによって維持されてきた屋敷林「居久根(いぐね)」の多面的機能性,特に居久根の植栽構成の工夫と生活文化的価値,防風効果の価値,および鳥類の生息環境としての価値を明らかにした。1)居久根の竹類を除いた樹木構成は針葉樹7割,常緑広葉樹2割,落葉広葉樹1割であった。居久根の北西側に枝葉の細かいスギやアスナロなど常緑針葉樹を多数植栽することで防風効果を高めると同時にこれらの樹種は建築材として活用され,スギ下に植えられたタケ類は防風用として,かつ農業・漁業の道具として活用されていた。潮風に強いヤブツバキやマサキ,湿地帯に適応したハンノキを植栽する工夫がみられた。2)居久根の内外の気象データの解析から,居久根は冬季の季節風を7-9割減速させ,居久根内の母屋に安定した居住環境をもたらしていることを明らかにした。さらに3次元GISとCFD(Computational Fluid Dynamics)による風況解析シミュレーションによって居久根の防風効果と風の流れを可視化することで,減速域が風下側に約100 m以上の距離にまで広がっていることがわかった。3)冬季鳥類の生息環境としての居久根の機能を明らかにするため,水田域内の農地,居久根が含まれる水田域内の農地,丘陵樹林地の異なる3つの環境を対象に調査した。その結果,居久根が含まれる農地で31種が確認され,地点当たりの確認種数は水田域内の農地よりも多く,居久根は樹林内や林縁を好む種の生息場所として機能していた。今日の大災害時代の我が国においてグリーンインフラとしての多面的機能性を有する居久根は,気候変動の緩和と適応や災害に対するレジリエンスをはじめ,屋敷林文化の価値,野生動物の生息場所の提供,故郷の風景の再生や愛郷心に大いに貢献できると考えられる。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.79-84, 1994-05-25
被引用文献数
5 4

1) 東京都世田谷区の東京農業大学キャンパスと神奈川県秦野市のミカン畑跡地でトホシテントウの餌植物および各発育ステージの発生消長を調査するとともに,寄主植物ごとの室内飼育より幼虫期の発育期間を求めた。<br>2) 寄主植物として世田谷ではキカラスウリなどが,秦野ではアマチャヅル,カラスウリなどが確認され,加害植物としてカボチャ,キュウリが確認された。また世田谷個体群では,羽化時期の餌不足から一部の新成虫がエノキワタアブラムシの分泌蜜およびエノキの葉を摂食した。<br>3) 各発育段階の発生消長を調査地間で比較したところ,産卵ピークから4齢幼虫ピークまでの期間が異なり,産卵時期に対する4齢幼虫の出現は世田谷で早く,秦野で遅れる傾向にあった。また世田谷の幼虫の一部は年内に羽化し,成虫で越冬した。<br>4) 室内飼育では,キカラスウリを与えた幼虫はカラスウリやアマチャヅルを与えた場合より速く成長する。このことから個体群の依存する寄主植物による発育速度の違いが両個体群の生活史の相違をもたらす主な要因と考えられる。
著者
竹内 将俊 佐々木 友紀 佐藤 千綾 岩熊 志保 磯崎 文 田村 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.89-94, 2000 (Released:2002-10-31)
参考文献数
18
被引用文献数
6 8

Seasonal use of powdery mildews by the mycophagous ladybird, Illeis koebelei, was observed in Setagaya. In the field, I. koebelei shows seasonal changes in host use and breeds regularly on Microsphaera pulchra var. pulchra that infests Benthamidia florida, Oidium sp., that infests Pyracantha coccinea in spring, Phyllactinia moricola that infests Morus australis, and Sphaerotheca cucurbitae that infests Trichosanthes kllirowii var. japonica in autumn. On these fungus species under laboratory conditions, larval development of the ladybird was completed (within 20 days at 24°C) with a high survival rate. Thus, the seasonal occurrence of I. koebelei may be synchronized with the abundance of essential fungi. This study showed that I. koebelei feeds on 11 species of powdery mildews, including Sphaerotheca, Podosphaera, Microsphaera, Phyllactinia and Oidium. However, no species of the Uncinula, Uncinuliella and Erysiphe genera were suitable food for the ladybird.
著者
入江 彰昭 原田 佐貴 内田 均 竹内 将俊 Teruaki Irie Saki Harada Hitoshi Uchida Masatoshi Takeuchi
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.9-18, 2020-06-29

本研究は,宮城県・岩手県において数百年以上の間,持続的なマネジメントによって維持されてきた屋敷林「居久根(いぐね)」の多面的機能性,特に居久根の植栽構成の工夫と生活文化的価値,防風効果の価値,および鳥類の生息環境としての価値を明らかにした。1)居久根の竹類を除いた樹木構成は針葉樹7割,常緑広葉樹2割,落葉広葉樹1割であった。居久根の北西側に枝葉の細かいスギやアスナロなど常緑針葉樹を多数植栽することで防風効果を高めると同時にこれらの樹種は建築材として活用され,スギ下に植えられたタケ類は防風用として,かつ農業・漁業の道具として活用されていた。潮風に強いヤブツバキやマサキ,湿地帯に適応したハンノキを植栽する工夫がみられた。2)居久根の内外の気象データの解析から,居久根は冬季の季節風を7-9割減速させ,居久根内の母屋に安定した居住環境をもたらしていることを明らかにした。さらに3次元GISとCFD(Computational Fluid Dynamics)による風況解析シミュレーションによって居久根の防風効果と風の流れを可視化することで,減速域が風下側に約100 m以上の距離にまで広がっていることがわかった。3)冬季鳥類の生息環境としての居久根の機能を明らかにするため,水田域内の農地,居久根が含まれる水田域内の農地,丘陵樹林地の異なる3つの環境を対象に調査した。その結果,居久根が含まれる農地で31種が確認され,地点当たりの確認種数は水田域内の農地よりも多く,居久根は樹林内や林縁を好む種の生息場所として機能していた。今日の大災害時代の我が国においてグリーンインフラとしての多面的機能性を有する居久根は,気候変動の緩和と適応や災害に対するレジリエンスをはじめ,屋敷林文化の価値,野生動物の生息場所の提供,故郷の風景の再生や愛郷心に大いに貢献できると考えられる。Homestead trees and hedges, known as "Igune", have been a feature of the traditional rural landscape in the Miyagi and Iwate prefectures for at least 400 years. We evaluated the green infrastructure value of the multiple benefits provided by Igune. In particular, we concentrated on the cultural and lifestyle values, windbreak effects, and habitat for forest and forest-edge living birds. Our findings show that 1) conifer trees account for about 70% of Igune trees, evergreen broadleaved trees for about 20% and deciduous broadleaved trees for about 10% of all Igune tree types, excluding bamboos. Fine foliaged conifer trees such as Cryptomeria japonica were found to be planted on the northwest side of the Igune to enhance windbreak effects and for use in building materials. Bamboos were also planted to serve as windbreaks under the Cryptomeria japonica and are used for making agricultural and fishery implements. Camellia japonica and Euonymus japonicus are particularly robust against onshore winds, and the wetland-adapted Alnus japonica is a common Igune tree in wetter areas and is planted to improve poor soils. We found that farmers' wisdom and techniques combine to make the most of species characteristics whilst helping preserve and reinforce traditional lifestyles and cultural values. 2) Igune homestead trees, shrubs and hedgerows provide effective windbreaks : winter wind speeds were found to be reduced by 70-90%, creating a stable and habitable residential area within the bounds of the Igune. Wind dynamics were simulated by three-dimensional GIS and CFD analysis. We found that the reduced wind speed area extended more than 100 m on the leeward side of the Igune. 3) We compared bird species richness, individual abundance and species diversity index among three landscape habitats including open paddy fields, paddy fields where Igune trees and shrubs were present, and forest. These habitat types differed significantly with respect to bird species richness and diversity index. Forest and paddy fields having Igune both had higher species richness than the open paddy fields, but no significant differences in mean bird abundance were found between the habitats. These results suggets that Igune provide habitat for some forest-living birds. The green infrastructure of Igune homestead trees can clearly contribute to climate change mitigation and adaptation, and delivers simultaneous cultural, traditional, and biodiversity co-benefits, which together can support the regeneration of regional landscape identities.
著者
飯嶋 一浩 竹内 将俊 Kazuhiro Iijima Takeuchi Masatoshi
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.89-96, 2007-09

シロテンハナムグリの生活史を、屋外飼育実験の結果を基に推定した。飼育実験の結果、本種の生活史型は、年1化・幼虫越冬・多回繁殖型であった。成虫の寿命は約1年で、活動期間は5月から9月であるが、夏季に羽化した新成虫は摂食活動の後に地中で越冬して、翌年も再び活動を行った。なお、新成虫の多くは初年度には繁殖活動を行わないが、一部は初年度と次年度の2回、繁殖を行った。幼虫は3齢が終齢であり、初年度の冬季は終齢幼虫の状態で休眠室を形成し、この中で越冬した。成虫の餌資源植物について調査した結果、餌資源植物は3綱18目25科42種であった。このうち訪花植物は2綱14目19科30種、樹液利用植物は2綱3目3科5種、果実利用植物は1綱4目5科8種であった。本研究の結果から、季節を通じ成虫が花粉・花蜜食と樹液食や果実食への切替えを行っていることが、餌資源の枯渇時期を回避することに繋がり、このことが同じハナムグリ亜科の他種に比べて成虫の活動期間と寿命が長い一因であると考えられた。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.221-226, 1993-11-25
被引用文献数
1 2

1) ウリキンウワバ幼虫のトレンチ行動を野外および室内で観察し,ククルビタシン,師管液,隠蔽との関連性について検討した。<br>2) 幼虫のトレンチ部位は,発育に伴って葉端から葉脈基部へ変化した。<br>3) 寄主植物に対する人為的な処理がトレンチ率へ与える影響を調べた結果,野外の自然状態の葉に対し,茎を切って水差し状態にした無傷の葉ではトレンチ率は低かった。<br>4) 師管液の量は野外状態の葉で多く,また茎を切って水差し状態にした無傷の葉では切断からの放置時間が長いほど少なかった。<br>5) 葉の表に細く切った紙を貼り,葉の強度を増した条件でのトレンチ率を調べたところ野外状態では100%のトレンチ率を示したが,室内において切断から2時間経った葉ではトレンチを描かずに摂食した。<br>6) ウリキンウワバ幼虫のトレンチ行動は,ウリ科植物の師管液に対する適応的行動である可能性が示唆されたが,師管液説,ククルビタシン説のいずれかに断定することはできなかった。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-23, 1995-07-20
参考文献数
16
被引用文献数
3

東京都世田谷区の大学構内で同所的に棲息するチャコウラナメクジ,オナジマィマイ,ウスカワマイマイの季節的発生経過,日周活動,利用食物について調査を行った。発生量はチャコウラが最も多く,夏期以外の季節に活動し,カタツムリ類は春期と秋期に活動した。活動時間は3種類とも体サィズに関係なく日没から明け方までで,カタツムリ類は活動個体の出現頻度に変異が大きく,明確なピークは認められなかった。また糞の内容物の解析の結果,野外で利用している食物は3種間で大きな違いは認められなかった。
著者
竹内 将俊 田村 正人
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.122-126, 1993

1)東京都世田谷区の大学キャンパス内で,チャコウラナメクジの発生経過と日周活動について野外調査を行った。2)発生量は,大型個体,小型個体とも5,6月が最も多く,夏期にはほとんど出現しなかった。また,大型個体は冬期にも活動し,産卵も認められた。3)活動時刻は日没から明け方まで続き,湿度が高い時は活動時刻に明瞭なピークはなかった。4)家屋への侵入と関連して,建造物の壁面や樹木の幹を這っていた個体の割合は季節的には春期と秋期に多く,時間的には終夜観察された。