著者
朱 成敏 小出 誠二 武田 英明 法隆 大輔 竹崎 あかね 吉田 智一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.143-156, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)
参考文献数
19

本研究では農業ICTシステムのデータ連携における標準語彙として農作業基本オントロジーを提案する.農作業基本オントロジーは,様々な農作業に対して記述論理に基づく定義と構造化を⾏うことで,農作業名称が持つ意味の多様性を明確に記述している.また,同義語や関連情報も収録されており,データ間の連携や統合における基準情報として活⽤することができる.これにより,異なる農業ICTシステムからのデータを連携させて分析することが可能となる.さらに,農作業同⼠の意味関係を論理的に定義することにより,農業データの意味把握と分析も容易となる.農作業基本オントロジーはLinked Open Data(LOD)形式でも公開されており,相互運⽤性と機械可読性が確保されている.農作業基本オントロジーは農作物に関する情報や国内外の農業に関連する情報体系とも連携されており,⾼度な知識処理が可能な農業分野における知識基盤としての利活⽤が期待される.最後に農作業基本オントロジーの応⽤事例として統計調査の⾃動化とオントロジーによる農作業の推論を紹介し,その有⽤性と可能性について検討する.
著者
鐘ケ江 弘美 松下 景 林 武司 川島 秀一 後藤 明俊 竹崎 あかね 矢野 昌裕 菊井 玄一郎 米丸 淳一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.115-123, 2022-12-01 (Released:2022-12-22)
参考文献数
30

作物の系譜情報は育種を行う上で必要不可欠であり,特に交配親の選定において極めて重要である.しかし,系譜情報の分析基盤や可視化ツールは少なく,育種家は範囲が限定された系譜図を使用せざるを得ない.本研究では,育種や作物データの解析に系譜情報を広く活用するため,系譜情報グラフデータベース「Pedigree Finder」(https://pedigree.db.naro.go.jp/)を構築した.系譜情報を整備するために語彙やデータフォーマットの統一を行うとともに,品種・系統の標準化されたIDを利用することにより,関連するゲノム情報および形質情報との紐づけを可能にした.系譜情報の整備にはデータモデルとしてリソース・ディスクリプション・フレームワーク(Resource Description Framework, RDF)を採用し,共通性と永続性を高めた上で,グラフデータベースを構築した.グラフデータベースの利用により,系譜情報をわかりやすく可視化し,セマンティック・ウエブ(Semantic Web)技術による外部データベースとの情報統合や高度な検索が可能である.本システムにより系譜情報を収集・可視化することで,系統の育成過程をたどり,遺伝的な近縁性を考慮した交配親の選定や系譜と特性との関係の把握など,品種育成や遺伝研究の意思決定における育種データの統合利用が可能になると期待される.
著者
朱 成敏 武田 英明 竹崎 あかね 杉野 利久
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.SWO-056, pp.07, 2022-03-11 (Released:2022-03-24)

本研究では,牛の飼養衛生管理に必要な共通語彙をオントロジーを用いて構築する.さらに,畜産現場における共通語彙の利活用のために情報提示サービスを開発し,公開する.最後に領域専門家による評価を通じて畜産分野における共通語彙の有用性と可能性について考察する.
著者
朱 成敏 武田 英明 竹崎 あかね 杉野 利久
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.3H1GS3d05, 2021 (Released:2021-06-14)

畜産産業において飼料は生産性と密接な関係があり、飼料の選択や配合に関するデータには重要な知識が蓄積されている。しかしながら、地域や関連団体によって様々な飼料情報が用いられており、それぞれ独自の基準で作成されている。そのため、関連ITシステム間のデータの連携・統合が困難である。そこで、本研究では国内外で主に用いられているウシの飼料情報を調査し、ウシ用飼料オントロジーの構築を行なった。さらに利活用に必要なサービスを開発し、畜産分野におけるデータ連携の総合的な手段としての可能性について考察する。
著者
竹崎 あかね 前山 薫 朱 成敏 武田 英明 吉田 智一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1F4OS17b01, 2019 (Released:2019-06-01)

作付計画の際に複数作物の経営指標を比較検討する場面を想定し,農作業基本オントロジー(AAO)を共通語彙に利用した作業時間分析を提案した.農業経営指標の作業時間は,データ名を変換しないと野菜栽培体系間で比較ができなかった.AAOに対応付けて作業時間を集計することで,データ名を変更せずに,作業目的や旬別による野菜栽培体系間の比較が可能になること,AAOの下位階層で集計すれば具体的作業の比較も可能になること,AAOに対応づけた他の基準での比較も可能であることを確認し,作業時間の分析が簡便化すると結論づけた.
著者
朱 成敏 武田 英明 法隆 大輔 竹崎 あかね 吉田 智一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

農業産業における統計は状況の把握、政策の策定、作業の最適化などにおいて重要な判断指標となる。しかし、農業現場の普及されたITシステムはそれぞれ独自のデータ項目に基づいて運用されているため異なるデータの連携が困難である。そこで、本研究は農作業基本オントロジーをデータの標準項目として定義を行う。これに基づいて異なる農業ITシステムから発生したデータ間連携を行い、データの統計を行う。
著者
竹崎 あかね 大浦 裕二 河野 恵伸 木浦 卓治 林 武司
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.47-58, 2016
被引用文献数
1

農産物関連の代表的なテキストデータであり,今後テキストマイニングの必要性が高まるであろうインターネット通販の野菜商品レビューを対象に,付属辞書を参照した形態素解析結果からレビュー内容を把握する際の問題点を明らかにした.付属辞書を参照した形態素解析では語の分割精度が低いこと,出現頻度が高い同義語が別語と扱われること,否定概念が欠落すること,形容詞の対象が不明確であることでテキストからの概念抽出精度が低くなると判断した.これらの問題解決のために,自然言語処理済みテキストから抽出すべき構文解析情報等を提案し,以下の概念抽出工程を提示した.1)解析対象に合致した参照辞書を構築して形態素解析を行う.2)構文解析後,動詞"する"は,その直前に出現する名詞と一語に集約し,具体的動作を示す動詞に変換する.3)否定概念を付与するために,助動詞"ぬ",接頭辞"無"・"不"・"低"・"未"・"非",接尾辞"ない"について語の変換,集約処理をする.4)同義語を正規化する.5)解析対象に合わせて係り受け関係の語を抽出する.
著者
竹崎 あかね 細羽見 喬 倉嶋 明子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.710-717, 2010 (Released:2010-03-01)
参考文献数
13

日本農業シソーラス(JAT)の概要とその活用場面を紹介する。JATは,農業研究関連の学術事典等からの収集用語と国際連合食糧農業機関(FAO)が管理する多言語シソーラス(AGROVOC)収録用語から成り,AGROVOCに準じて,階層・等価関係で用語が整理される。JATでは,1)複数の英語名が同一日本語名に翻訳される,2)一つの英語名が複数の日本語名に翻訳される,3)学名の日本語表記が複数ある,4)膨大な量の表記揺れがある場合に用語整理法に留意する必要があった。JATを基に作成した形態素解析辞書,同義語辞書は,各々解析精度向上,検索漏れ防止に効果が認められたため,既存システムで活用している。JATは2009年11月から一般公開し,無償でデータ提供している。