著者
竹本 稔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.690-695, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

日々の日常診療で遭遇する脂質異常症患者の中には,なんらかの原因により脂質異常症を来たす二次性脂質異常症や冠動脈疾患の発症リスクが高い原発性高脂血症患者,さらには非常に稀な原発性高脂血症があり,治療法が通常の脂質異常症とは異なる疾患が紛れている. 脂質値の異常を来たす背景因子を鑑みることが,そのような疾患を見落とさないために重要と思われる.
著者
飯村 洋平 本告 成淳 今中 景子 吉田 知彦 竹本 稔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.784-790, 2019-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
10

72歳,男性.肛門腺癌の術後リンパ節転移に対して化学療法を開始.化学療法27コース目施行後,突然の眩暈,ふらつきならびに意識障害が出現し,A病院に救急搬送され,低血糖と診断された.当院の内分泌学的検査より,インスリン自己免疫症候群(insulin autoimmune syndrome:IAS)と診断.チオール基を有するベバシズマブを中止したところ,低血糖発作の頻度は低下した.ベバシズマブ使用時の低血糖発作では,IASの発症を考慮する必要がある.
著者
前澤 善朗 竹本 稔 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.124-130, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
10

全身において,実際の年齢よりも早く老化の徴候がみられる疾患は早老症と称され,DNA(deoxyribonucleic acid)修復関連遺伝子や核膜蛋白の異常により惹起される多様な疾患を含んでいる.日本人に多いWerner症候群(Werner syndrome:WS)は,20~30代から低身長や白髪,白内障等が出現し,40代で内臓脂肪蓄積を背景に糖尿病や脂質異常症等を生じ,悪性腫瘍や難治性皮膚潰瘍を高率に合併する疾患である.RecQ型DNAヘリカーゼであるWRN遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝疾患であることが判明しており,近年の研究に基づき,診断基準や治療ガイドラインが策定されている.また,原因遺伝子であるWRN蛋白のDNA修復やテロメア維持における役割等,分子レベルの病態解明も進みつつある.超高齢社会を迎えた本邦において,「ヒト老化のモデル疾患」であるWSの研究は,一般老化のメカニズム解明のためにも重要な課題であると考えられる.
著者
竹本 稔 藤原 俊六郎
出版者
神奈川県農業総合研究所
巻号頁・発行日
no.138, pp.31-40, 1998 (Released:2011-03-05)
著者
小林 一貴 竹本 稔
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は我々が同定した筋芽細胞分泌たんぱくであるR3hdmlの骨格筋における糖取り込みにおける役割ならびにマイオカインとしての機能を明らかにすること目的としている。本年度は計R3hdmlをアデノウイルスベクターを用いて肝臓に過剰発現させた後、ストレプトゾトシン(STZ)を投与し糖尿病を惹起した際の糖代謝や生存曲線に与える影響を検討した。その結果、R3hdml過剰の有無により空腹時血糖値に差はなかったものの、R3hdml過剰マウスで有意な生存曲線の延長が観察された。以上より肝臓で過剰発現され分泌されたR3hdmlが全身の組織、細胞に影響を与える可能性が示唆され、さらに分泌されたR3hdmlと脂質代謝との関連を調べた。R3hdmlを過剰発現した肝臓では脂質代謝のマスターレギュレーター膜結合型転写因子SREBPの発現が低下することやR3hdmlを過剰発現したAd293細胞では飽和脂肪酸の一種、パルミチン添加に伴う細胞障害が軽減されることが明らかとなった。R3hdmlと全身の脂質代謝との関連が示唆され、今後さらに研究を進めてゆく予定である。
著者
竹本 稔 松尾 弘也 小黒 元春 河内 泰英
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.19, no.SupplementII, pp.249-262, 1994-10-15 (Released:2008-02-21)
参考文献数
10

The antigenicity tests of Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC), tazobactam (TAZ: β-lactamase inhibitor) and piperacillin (PIPC: penicillin antibiotic) were performed in mice and guinea pigs. The following results were obtained. 1. TAZ/PIPC, TAZ or PIPC had no immunogenicity and allergenicity in either passive cutaneous anaphylaxis (PCA) test using BALB/c and C3H/He mice or in PCA test using guinea pigs. 2. Guinea pigs sensitized with TAZ/PIPC, TAZ or PIPC showed no anaphylactic symptons in active systemic anaphylaxis (ASA) test. 3. Guinea pig PCA tests using protein conjugates as sensitizing and challenging antigens showed positive reactions. Immunological cross-reactivity tests were performed by using these conjugates in guinea pig PCA reaction. Results showed that TAZ/PIPC and PIPC cross-reacted with penicillin G (PCG) and ampicillin (ABPC), but not with cephalothin (CET) and cephmetazol (CMZ). TAZ did not cross-react with PCG, ABPC, CET or CMZ. 4. From the results of the passive hemagglutination (PHA) test, no antibody against TAZ/PIPC, TAZ or PIPC was detected. 5. In direct Coombs' test using human blood, TAZ/PIPC, TAZ, PCG and CET showed positive reactions at 20∼80, 5∼20, 80 and 10∼20 mg/ml, respectively. 6. The results of a test on in vitro covalent binding activity with human serum albumin indicated that the order of binding potency was CET>CMZ>ABPC>PCG=PIPC>TAZ under the physiological condition (pH 7.2∼7.4), and was CMZ>CET>ABPC>PIPC>TAZ>PCG under the alkaline condition (pH 10.0∼10.5), respectively.
著者
横手 幸太郎 竹本 稔 藤本 昌紀
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、リンパ管の生活習慣病への関与を明らかにするため検討を行った。肥満2型糖尿病モデルマウスの膵臓ではリンパ管が増生しており、膵島においてVEGF-Cの発現が上昇していた。In vitroでの検討では、IL-1βやTNF-αにより膵α・β細胞でのVEGF-Cの発現が誘導された。以上より、糖尿病、肥満で発現が上昇する炎症性サイトカインが膵島でのVEGF-Cの発現を誘導し、膵リンパ管の増生をもたらすことが示唆された。
著者
佐久間 一基 石川 崇広 藤本 昌紀 竹本 稔 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.617-621, 2012 (Released:2013-03-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

健康食品,新五浄心の長期摂取により偽性アルドステロン症をきたした高齢者の1例を経験した. 症例は67歳の男性.高血圧症,脂質異常症,高尿酸血症に対し近医にて内服加療中であった.2007年4月に低カリウム血症(3.0 mEq/l),下腿浮腫が出現したため,スピロノラクトン,L-アスパラギン酸カリウム内服を開始するも,血清カリウムは低値(2.8~3.2 mEq/l)で推移した.その後,動悸,こむら返りも頻繁に出現するようになり,2009年12月低カリウム血症の精査目的に当科紹介となった.当科受診時の血清カリウム2.4 mEq/l,血漿レニン活性0.1 ng/ml/hr以下,血中アルドステロン濃度34 pg/mlと低下を認めた.外来における病歴聴取では甘草,グリチルリチンを含有する医薬品の摂取歴はなく,偽性アルドステロン症が疑われ,精査目的に2010年2月当科に入院となった.入院時の詳細な病歴聴取により2007年2月より健康食品である新五浄心を摂取していることが判明した.入院後,新五浄心を中止し,カリウム製剤の補充を継続したところ,低カリウム血症は改善し,カリウム製剤補充も中止した.精査の結果,他に偽性アルドステロン症をきたす疾患は否定的であり,新五浄心による,偽性アルドステロン症と考えられた.これまで新五浄心による偽性アルドステロン症の報告はない.さらに高齢者の偽性アルドステロン症では,甘草,グリチルリチンを含有する医薬品だけではなく,一般市販薬,健康食品を含めた詳細な服薬歴の問診も大切であると思われ報告する.