著者
前田 悠一 熊ノ郷 淳 竹田 潔
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.59-63, 2016 (Released:2016-05-14)
参考文献数
16
被引用文献数
3 15

関節リウマチに代表される自己免疫疾患の発症には遺伝的要因,環境要因の関与が示唆される.環境要因の一つとして,腸内細菌叢の変化について研究が進められている.腸内細菌が注目されている理由の一つに解析方法の進歩が挙げられる.16S rRNAを標的とした次世代シークエンス法により,難培養細菌のDNA配列レベルでの菌種同定が可能になった.本論文では,腸内細菌叢とマウス及びヒト関節炎との関連について紹介する.腸内細菌叢は,関節炎モデルマウスにおいて重要な役割を示す事が明らかにされている.K/BxNマウス,IL-1受容体アンタゴニスト欠損マウスのような関節炎モデルマウスは腸内細菌叢がないと関節炎を発症しないが,特定の腸内細菌の定着により関節炎を発症する.また,ヒト関節リウマチ患者においても腸内細菌叢の異常がフィンランド,アメリカ合衆国,中国において認められた.腸内細菌叢の異常と宿主の免疫異常の関係を明らかにすれば,腸内細菌叢を対象にした新たな治療あるいは発症を予防する戦略が期待される.
著者
竹田 潔
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.1-6, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

生体防御を担う免疫系は自然免疫系と獲得免疫系から成り立っている. 抗原を非自己として認識する獲得免疫系に対し, 自然免疫系では, Toll-like receptor (TLR), RIG-I-like receptor (RLR), NOD-like receptor (NLR) などのパターン認識受容体が, 私たち哺乳類には存在せず, 微生物の生命維持に必須の構造を認識していることが明らかになってきた. これらパターン認識受容体による自然免疫系の活性化が, 抗原特異的な獲得免疫系の活性化も制御し, 生体防御を担っている. さらには, 自然免疫系の過剰活性化が, 種々の免疫疾患の発症にも関与していることが明らかになりつつある.
著者
香山 尚子 竹田 潔
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.741-752, 2013 (Released:2013-05-07)
参考文献数
98

消化管に慢性の炎症が生じる潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)は,食生活やライフスタイルの欧米化にともないわが国において急激な増加傾向を示す難治性疾患である.慢性炎症は多様な疾患に共通する基盤病態であり,腸管組織においても大腸癌リスク増大に関与する.近年,腸管組織において多様な自然免疫細胞が同定されるとともに,獲得免疫系の活性化を制御することで腸管組織の恒常性維持に寄与することが明らかとなった.今後,自然免疫系を標的としたIBDの病態解明および新規治療法の開発が期待される.
著者
竹田 潔
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.309-317, 2005 (Released:2005-11-05)
参考文献数
30
被引用文献数
7 8

自然免疫系においてファミリーを形成するToll-like receptor (TLR)が病原体の構成成分を特異的に認識し,免疫応答の引き金を引くことが明らかになった.11種のTLRの各メンバーがそれぞれ異なる病原体構成成分を認識し,遺伝子発現を誘導する.TLRを介したシグナル伝達経路では,TIRドメインを有するアダプター群(MyD88, TRIF, TIRAP, TRAM)が重要な役割を担っていて,この使い分けによりTLRごとに異なる遺伝始発現が誘導される.そして,TLRを介した自然免疫系の活性化は,過剰になると,慢性炎症性腸疾患の発症につながることも明らかになった.そのため,自然免疫系の活性は様々なメカニズムで負に制御されている.その分子機構の一端として核に発現するIκB分子(Bcl-3, IκBNS)がTLRを介したサイトカイン産生を選択的に抑制していることが明らかになった.
著者
竹田 潔 前田 悠一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.256a-256a, 2017 (Released:2017-11-23)

近年,腸内細菌叢の割合の変化(dysbiosis)が様々な疾患で報告されるようになってきている.その中には,dysbiosisが疾患の原因になるものもあることが報告されている.関節リウマチ(RA)は,遺伝的素因だけでなく,様々な環境因子がその病態に関与していることが知られている.マウスモデルを用いた解析では,腸内細菌の無いgerm-freeマウスが関節炎を発症しないことから,腸内細菌の関節炎の病態への関与が示唆されている.我々は,腸内細菌叢のRAの病態への関与を解析した.発症初期のRA患者と健常人の腸内細菌叢を解析すると,一部のRA患者で健常人にはない,Prevotella copriが著明に増加している腸内細菌叢を有していた.RAで認められる腸内細菌叢の変化が,RAの結果なのか,原因となるのかを解析するために,関節炎を発症するSKGマウスを用いた.SKGマウスに抗生物質を経口投与し,腸内細菌叢を排除すると関節炎を発症しなくなることから,SKGマウスの関節炎の病態には腸内細菌が関与していることが示唆された.そこで,SKGマウスをgerm-free化し,健常人(HC)型,RA型の腸内細菌叢を定着させ,HC-SKGマウス,RA-SKGマウスを作成した.そして,RA-SKGマウスは,HC-SKGマウスに比べて重症の関節炎を発症した.この結果から,関節リウマチ患者で認められる腸内細菌叢の変化は,RAの発症に深く関わっていることが示唆された.
著者
水島 恒和 伊藤 壽記 竹田 潔 中島 清一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

炎症性腸疾患(IBD)患者の炎症部では、マクロファージ様の形態を呈し、単球系マーカーのCD14 と樹状細胞マーカーの CD11c 両者が陽性である CD14+CD11c+細胞が増加していた。IBD 患者の非炎症部において、CD14+CD11c+細胞は非 IBD 患者と著変を認めなかった。CD14+CD11c+細胞は、腸管粘膜固有層において CD14-CD11c+細胞,CD14-CD11c-細胞に比し、有意に Th17 細胞を誘導していることが明らかになった。