著者
藁科 侑希 笹井 浩行 中田 由夫 白木 仁
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-36, 2015-03-31 (Released:2020-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2

目的:国内バドミントン競技者における肩関節痛の実態を記述疫学的に明らかにすることを目的とした。方法:対象は国内のバドミントン競技団体に所属する中学生,高校生および大学生とした。2011年10月~12月に関東近郊の中学15校,高校23校,大学16校,計1410名に対し質問紙調査を行い,1002名(中学生202名,高校生411名,大学生389名)から有効回答(71.0%)を得た。質問項目は,肩関節痛の既往,過去1年以内の痛みの有無,痛みによるプレーへの支障の有無とした。結果:過去に1度でも肩関節痛を有した既往者は53.3%(中学生58.4%,高校生38.2%,大学生66.6%)であった。過去1年以内に肩関節痛のある有痛者は46.0%(中学生50.5%,高校生32.6%,大学生57.8%)であった。有痛者461名のうち,プレーへの支障があると回答した者は48.4%(中学生41.2%,高校生50.0%,大学生50.7%)であった。結論:本研究により,国内バドミントン競技者の約半数に肩関節痛の既往があり,その割合に中学,高校,大学間で差のあることが示唆された。有痛者の中で,プレーへの支障がある者も約半数であった。こうした現状を踏まえ,プレーへの支障を来たす肩関節痛の予防に向けた対策を講じる必要がある。
著者
笹井 浩行 引原 有輝 岡﨑 勘造 中田 由夫 大河原 一憲
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.6-18, 2015-03-31 (Released:2020-04-10)
参考文献数
63
被引用文献数
3

本総説では,加速度計の仕組み,国内の代表的な加速度計の特徴や妥当性を概説するとともに,加速度計を用いた身体活動増進介入研究を紹介し,今後の研究課題を展望することを目的とした。加速度計には計測本体である加速度センサに加え,時計,A/D変換器,プロセッサ,メモリ,電池などが内蔵されている。加速度センサの性能に加え,各機種が採用するデータ処理のアルゴリズムにより,機種間の違いがもたらされている。また,近年では腰部だけでなく手首や足首,大腿前面などに装着する機種も増えている。国内の加速度計については,二重標識水法やダグラスバッグ法などにより自由行動下および実験室にて妥当性が検証されている。今後は,年齢,職種など多様な生活様式を有する対象者にも適用可能な推定式の開発や,より洗練された統計モデルにより姿勢や行動様式を判別する研究が求められる。加速度計を動機づけツールとして活用した質の高い介入研究については,子どもから高齢者まで,年代にかかわらず十分でない。加速度計が一般消費者に普及しつつある現状を鑑みると,加速度計による身体活動増進介入は,新規性かつ意義のある研究分野であるといえる。
著者
笹井 浩行 中田 由夫
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.104-112, 2015-09-30 (Released:2020-04-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

人が1日に使える時間は有限であり,その内訳である各行動は相互依存的に配分される。最近,この相互依存性を考慮した解析手法「isotemporal substitution(IS)モデル」を用いた運動疫学論文が増え,その有益性が示されている。しかし,我が国でISモデルを適用した論文や解説は皆無である。本総説では,ISモデルについて解説し,文献レビューに基づき今後の研究課題を提案することを目的とした。ISモデルは,「ある行動を等量の別の行動に置き換えたときの目的変数への影響を推定する手法」と定義できる。データセットは,全体の総和を表す変数とその内訳となる説明変数で構成され,解析では,内訳を構成する1つの変数を除く,すべての変数を回帰モデルに投入する。総和を表す変数が回帰モデルに投入されていることから,総和が統計学上固定されることとなり,ある変数を他の変数に置き換えたときの目的変数に対する「置き換え」効果の推定を可能とする。ISモデルの最大の利点は解釈が容易で,公衆衛生勧奨や健康運動指導との親和性が高いことである。2015年7月29日現在で,ISモデルを用いた運動疫学研究が12編報告されている。文献レビューにより,活動様式や姿勢を曝露変数とした研究や,有疾患者を対象とした研究,コホート研究が少ないことが明らかとなった。これらは今後の重要な研究課題となる。本総説を契機に,我が国でISモデルが積極的に活用されることを期待したい。
著者
武田 紘平 田中 喜代次 麻見 直美 沼田 治 笹井 浩行 武政 徹
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.199-205, 2021-06-01 (Released:2021-05-13)
参考文献数
18

Mitochondria activation factor (MAF) which is high-molecular weight polyphenol contained in black tea and oolong tea can increase the mitochondrial membrane potential. MAF supplementation to mice facilitates endurance running performance after 9-week endurance training and muscle hypertrophy induced by synergist ablation. In this study, we examined the effect of oral MAF supplementation on overall physical fitness (expressed as physical fitness age) in physically active middle-aged and older women. This study is a randomized double-blind placebo-controlled trial implemented between January and May 2019 at three fitness facilities in Ibaraki, Japan. Seventy middle-aged women aged 55 to 69 years were randomly assigned into placebo (n = 35) and MAF groups (n = 35). The placebo participants took cornstarch-containing capsules, and the MAF participants took MAF-containing capsules twice a day for 80 days consecutively. During the intake period, all participants were instructed to follow 30-min circuit training program at least twice a week. Physical fitness age was computed with eight physical fitness items assessing upper-extremity muscle strength, locomotion, and postural change. The physical fitness age decreased by 1.48 years (95% confidence interval [CI]: -2.66, -0.30) in the placebo group and 3.01 years (95% CI: -4.16, -1.86) in the MAF group. The reduction was greater in the MAF group, but did not reach statistical significance (p = 0.06). The combination of 80-day of MAF intake and circuit exercise showed beneficial results. However, our results did not indicate clear effects on physical fitness age because of low statistical power. Further studies are necessary to reveal the effects of MAF supplementation.
著者
大河原 一憲 笹井 浩行
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.02, pp.152-158, 2015-01-15

日常生活下の身体活動量を客観的かつ高精度で評価するため,近年,物理的・生体的計測値から活動量を推定する加速度計法や心拍数法などが用いられている.また,これらのいわゆる“活動量計”は,安価に購入できるようになったことから,専門家のみならず,一般にも広く認識されてきた.本稿では,小型化,大容量化,複数の物理的・生理的指標の取得,コンピュータネットワークの利用など,より複雑化されてきた活動量計の測定原理,妥当性,活用の可能性について解説している.今後,活動量計は,研究調査での利用のみならず,多くの人の健康管理ツールとして,益々の発展が期待される.
著者
松尾 知明 蘇 リナ 笹井 浩行 大河原 一憲
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.219-228, 2017-11-20 (Released:2017-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
6 9

目的:労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)では疫学調査での活用を企図し,労働者の座位行動評価を主目的とした「労働者生活行動時間調査票(Worker's Living Activity-time Questionnaire)(JNIOSH-WLAQ)」(以下WLAQ)を開発した.本研究の目的はWLAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:国内在住の労働者138名が本研究に参加し,WLAQによる質問紙調査を1週間の間隔をあけて2回おこなった.妥当性の基準値評価のため,対象者には1週間,身体活動量計(activPAL)の装着と生活行動に関する日誌記録を求めた.WLAQにより,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および一般的な労働者を想定し分類した4つの時間区分,すなわち,(A)勤務中,(B)通勤中,(C)勤務日の余暇時間,(D)休日それぞれにおける座位時間が算出される.本研究では,信頼性の評価値として級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)を,妥当性の評価値として順位相関係数(Spearman's ρ)を算出した.また,系統誤差の分析にBland-Altman図を用いた.結果:ICC値は,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間,座位時間すべてにおいて良好(0.72-0.98)であった.Spearman's ρ値は,勤務時間(0.80)と勤務間インターバル(0.83)が“strong”,通勤時間(0.96)が“very strong”,睡眠時間が勤務日(0.69),休日(0.53)ともに“moderate”,座位時間は,勤務中(0.67)と勤務日の余暇時間(0.59)が“moderate”,通勤中(0.82)が“strong”,休日(0.40)が“low”であった.Bland-Altman分析では,勤務中の座位時間に有意な加算誤差が,休日の座位時間に有意な加算誤差と比例誤差がみとめられた.結論:WLAQで得られる勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および座位時間の信頼性や妥当性は一定水準を満たすものである.今後の疫学調査での活用が期待される.