著者
松尾 知明 蘇 リナ 田中 喜代次 甲斐 裕子
出版者
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

“年齢に関わらずできるだけ長く元気に働ける社会”の実現に向け、体力科学は貢献できる。しかし、現在の体力科学研究には“心肺持久力(CRF)”と“座位行動(SB)”に関して混沌とした状況がある。疾病予防策としてはCRF向上が必要とされてきたが、その改善は見られないまま、最近の主流はSB減少である。本研究では、労働者を対象とした疫学研究により、1)“低CRF”と“過大SB”それぞれの、あるいは相互的な健康への影響はどの程度か、2)SB減少を目指すアプローチはCRF改善を目指すアプローチの代替策になり得るか、の2つの課題に取り組み、体力科学研究から、労働衛生分野での具体的な疾病予防策提案を目指す。
著者
松尾 知明 蘇 リナ 笹井 浩行 大河原 一憲
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.219-228, 2017-11-20 (Released:2017-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
6 9

目的:労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)では疫学調査での活用を企図し,労働者の座位行動評価を主目的とした「労働者生活行動時間調査票(Worker's Living Activity-time Questionnaire)(JNIOSH-WLAQ)」(以下WLAQ)を開発した.本研究の目的はWLAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:国内在住の労働者138名が本研究に参加し,WLAQによる質問紙調査を1週間の間隔をあけて2回おこなった.妥当性の基準値評価のため,対象者には1週間,身体活動量計(activPAL)の装着と生活行動に関する日誌記録を求めた.WLAQにより,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および一般的な労働者を想定し分類した4つの時間区分,すなわち,(A)勤務中,(B)通勤中,(C)勤務日の余暇時間,(D)休日それぞれにおける座位時間が算出される.本研究では,信頼性の評価値として級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)を,妥当性の評価値として順位相関係数(Spearman's ρ)を算出した.また,系統誤差の分析にBland-Altman図を用いた.結果:ICC値は,勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間,座位時間すべてにおいて良好(0.72-0.98)であった.Spearman's ρ値は,勤務時間(0.80)と勤務間インターバル(0.83)が“strong”,通勤時間(0.96)が“very strong”,睡眠時間が勤務日(0.69),休日(0.53)ともに“moderate”,座位時間は,勤務中(0.67)と勤務日の余暇時間(0.59)が“moderate”,通勤中(0.82)が“strong”,休日(0.40)が“low”であった.Bland-Altman分析では,勤務中の座位時間に有意な加算誤差が,休日の座位時間に有意な加算誤差と比例誤差がみとめられた.結論:WLAQで得られる勤務時間,通勤時間,勤務間インターバル,睡眠時間および座位時間の信頼性や妥当性は一定水準を満たすものである.今後の疫学調査での活用が期待される.
著者
林 容市 岡野 亮太 平林 正晴 片山 靖富 沼尾 成晴 松尾 知明 中田 由夫 田中 喜代次
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.197-206, 2008-04-01 (Released:2008-08-13)
参考文献数
29
被引用文献数
1

The aim of this study was to examine a weight reduction program and residual effects, through confirming the relationship between changes in the morphological and psychological indices including personality and self-efficacy (SE) of the participants. Twenty-five middle-aged women were divided into two groups based on type of weight reduction program intervention. Thirteen women participated in a 3-month diet-only weight reduction program (DO group, 53.3±7.4 yr), and 12 women took part in a 3-month diet and aerobic exercise program (DE group, 48.3±9.6 yr). After the programs, the compatibility score of personality in the DO group was negatively correlated to SE that is indicated as confidence in ability to maintain decreased body weight at 2, 3, and 4 years after the program (r=-0.69, -0.58, and -0.60). It can be seen that personality has an effect on the results of the DO group weight reduction program. Additionally, despite a significant decrease in body-weight and %fat in both groups, only the change of %fat significantly correlated with SE. On the basis of these correlations, the changes of %fat that related to the movability perception of body movements has a greater effect on SE after the program than the information only of weight loss. The results of this study suggest that personality and SE accounted for weight maintenance, and were associated with the results of the weight reduction program.
著者
松尾 知明 杉原 由美
出版者
異文化間教育学会
雑誌
異文化間教育 (ISSN:09146970)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.82-97, 2016-08-31 (Released:2020-06-24)
参考文献数
11

Globalization, and the emergence of a multiethnic society in Japan, has posed an important question on how people with cultural differences should live together in this society. In order to promote a multicultural inclusive society, Japanese people also need to change their outlook as much as foreigners. This paper aims to discuss the design of educational programs aiming to promote a Japanese-style multicultural inclusive society while focusing on the Japanese majority.First, this paper proposes curriculum management (to consider an educational goal, concrete plan, action-research on the PDCA cycle, collaboration) as a framework for educational reforms. Second, this paper sheds light on the process of the creation of a multicultural inclusive society and focuses on the processes of construction to de-construction and re-construction of “Japaneseness” as the social norm and privilege. Third, this paper introduces a case study of a new educational program in a university based on the PDCA cycle of curriculum management. In the program, students with diverse cultural backgrounds collaborate and think over different multiethnic issues. Lastly, this paper points the importance of designing a multicultural curriculum to help create a Japanese-style multicultural inclusive society.
著者
松尾 知明
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.67-71, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
16

少子高齢化に伴う労働人口減少問題や医療費高騰問題を抱える我が国では,労働者の健康を護ることが今後ますます重要となる.その視点から最近は,“働き方改革”や“健康経営”などがメディアで取り上げられる機会が増えている.その一方で,栄養バランスの良い食習慣や運動の習慣化が必要であることを理解していても,現代に生きる多くの労働者,特に働き盛り世代の忙しい労働者にとって,その実践は容易ではなく,課題も多い.このような状況を背景に,我々は忙しい労働者向けに考案した運動・食事介入プログラムの効果を,メタボリックシンドロームに該当する労働者を対象に検証する研究を進めている.本稿では,その背景や成果・課題を概説する.
著者
松尾 知明
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.154-166, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
40

本稿では、知識社会の到来を背景に人的資源の開発が求められる中で、教育の大規模調査において、リテラシーやコンピテンシーの概念がいかに展開してきたのかを、OECDの国際教育指標事業の動向を中心に明らかにした。リテラシー概念が、最低限の読み書き能力から高次の情報処理能力へ拡張され、さらに、情意を含む人間の全体的能力としてのコンピテンシー概念へと展開し、その概念的な精緻化と測定が発展的に進化したことを論じるとともに、学びのイノベーションを促す課題を指摘した。
著者
松尾 知明 乾 美紀 澤田 稔 柴山 真琴 津村 公博 徳井 厚子 野崎 志帆 馬渕 仁 見世 千賀子 森茂 岳雄
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、外国人児童生徒教育の現状及び最善の実践を把握するとともに、これらの取り組みを諸外国の多文化教育の視点から批判的に比較検討することを通して、日本版の多文化教育モデルの構築をめざすことを目的とする。(1)多文化教育の理念と枠組み(4論文)、(2) 多文化教育と学校(4論文)、(3) 多文化教育と地域(3論文)を提示するとともに、まとめとして、多文化共生の実現に向けたプロセスを日本社会の構築→脱構築→再構築として整理した。
著者
高浦 勝義 河合 久 有本 昌弘 清水 克彦 松尾 知明 山森 光陽
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、従来の標準テストに代わる新たな評価法としてのポートフォリオ評価(portfolio assessment)に着目し、その理論的検討を行うとともに実践レベルにおける具体化方策を探ることを目的にした。その結果、理論面においては、問題解決評価観なる新たな評価観を提唱し、このもとで(1)指導と評価の一体化、(2)自己学習力の向上及び、(3)保護者等外部への説明責任に向けた評価という3つの評価のねらいを同時に、かつ統一的に実現するための基本モデルを開発した。また、実践レベルにおいては、これら(1)〜(3)の基本モデルの具体化のために、公立小・中学校からの研究協力を得ながら、すべての教科、道徳、特別活動において「生きる力」より導かれた評価の4観点(「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」)を基にルーブリック(rubric)を含む単元指導計画を作成するとともに、授業と評価の実際に取り組んだ。