著者
今井 福司 岡部 晋典
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.368-373, 2011-09-01

本報告では, Twitterを用いた大学間での授業実践について述べる。現在ICTの活用が幅広い分野で求められており, TwitterはICT活用のメディアの1つとして挙げられる。今回は異なる二大学間で電子書籍に関する同一の課題を設定し, Twitterを用いて発言させる演習を行った。それぞれの授業は曜日も時間帯も異なっていたが, Twitterを用いることで, 互いの受講生の交流を実現でき, 協力要請を行った大学図書館員の授業参加を容易に行えた。授業後の受講生に対するアンケート結果では, 授業に対する積極的な評価がある一方, 授業計画の見直しや, 教材について改善が必要であることを示唆するような評価も見られた。
著者
片岡 真
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.32-37, 2006-01-01
参考文献数
15
被引用文献数
2

九州大学附属図書館では, 情報検索の結果からの一次資料や関連情報へのナビゲーションを目的として, 2005年4月からSerials Solutions社製リンクリゾルバArticle Linkerを導入し, 九州大学附属図書館学術情報リンクサービス「きゅうとLinQ」と名付けてサービスを開始した。本稿では, まずこれまでの本学での「きゅうとLinQ」への取り組みを通して, リンクリゾルバのしくみを説明する。そして学術ポータルには, 学術情報検索の入口としての機能の他に, 情報検索結果から一次資料や関連情報を適切にナビゲートする機能が必要であることを明らかにする。最後に, 今後の電子リソースマネジメントの方向性について考察する。Article Linker, an OpenURL link resolver made by Serials Solutions, was implemented to provide context-Sensitive linking at Kyushu University in April, 2005, and it was named "Cute LinQ", Kyushu University Library's Appropriate Link Resolution. First of all, this article will explain how "cute LinQ" works and how it functions well in recent situations of information retrieval. Then, it is clarified that academic portals are required to navigate to the appropriate copy from search results, in addition to the navigation into various kinds of information retrieval services. At the end, the future developments in electronic resources management will be considered.
著者
小林 卓 高橋 隆一郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.397-402, 2009-08-01

本稿では,まず,民族的,言語的,文化的少数者(マイノリティ)を主たる対象とする図書館サービスである多文化サービスの発展経緯を公立図書館,大学図書館それぞれについて,少し詳しく述べた後に,その意義について,1)知る権利,2)コミュニティの構成員としてのマイノリティ,3)人権の尊重,4)障害者サービスとの共通性,の4つの観点から論じる。続いてこの問題についての国際人権の動向や国際機関の動きを記し,それらを踏まえることの重要性に触れ,最後に,今後私たちが図書館関係者として,自分たちの関わるコミュニティ(地域・大学)において多文化サービスに関わっていく際に踏まえておくべきことについて提言を行う。
著者
湯浅 俊彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.322-327, 2013-08-01

日本の出版流通における書店の位置を概観し,学術出版の流通に起きた変化と書誌情報・物流情報のデジタル化という前史から,今日の電子出版ビジネスと書店の関係を考察した。そこで明らかになったのは物流を伴わない出版流通において,既存のリアル書店が主要なプレイヤーにはなりえないということである。しかし,リアル書店の良さはその空間演出にある。アマゾンのようなオンライン書店の登場によってこれまで当たり前であった普通の書店が「リアル書店」と呼ばれ,その価値が改めて見直されたように,電子出版の進展によって「紙の本」の価値は相対化されながらも,消えることはないだろう。
著者
宇陀 則彦
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.150-154, 2006-04-01
参考文献数
19
被引用文献数
2

図書館システムは図書館員のための業務用システムから利用者のためのアクセス支援システムへと大きく位置づけを変えた。アクセス支援システムとは,サービス機能が有機的に連携した統合型ソフトウェア環境を指す。このようなシステムを実現するためには,新しい図書館サービスを発想できる人材が求められる。システムライブラリアンはサービスと技術の両方の視点を持って新しいアイディアを生み出す創造的職業であり,役割は違ってもライブラリアンであることに変わりない。システムライブラリアン育成には,網羅的,横断的,複眼的カリキュラムが必要であり,そのうち最も重要なのは複眼的な視野を持たせることである。
著者
飯野 勝則 井ノ上 靖
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.181-187, 2014

図書館ポータルサイトにおいては,(1)ウェブスケールな学術情報と,(2)インスティチューションスケールな広報的情報の提供が求められる。佛教大学図書館の場合,(1)はウェブスケールディスカバリであるSummonが中核としての役割を担っているほか,ジャパンナレッジやCiNiiが提供するWeb APIを用いたウェブサービスを別途提供することで,利便性の一層の向上を図っている。一方,(2)については,Summon単独では十分に対応できない。このため,Web APIを通して,自館の他のサービスと連携し,その情報をSummonのユーザインターフェース上に合理的に表示させることで,問題の解決を図っている。今後Web APIは図書館にとって,情報提供という面での自由を担保する存在となるだろう。
著者
呑海 沙織
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.60-64, 2009-02-01
被引用文献数
1

本稿は,図書館コミュニティにおける自発的キャリア形成の特徴について論考するものである。図書館コミュニティにおける自発的キャリア形成の実際の場として,全国の国公私立大学図書館員を中心とする自主的・実践的な研究団体である大学図書館問題研究会をとりあげ,その概要,運営方針,設置背景,主要な活動について概観する。また,図書館コミュニティにおけるキャリア形成の特徴について,1)自己啓発,2)コミュニティの維持・発展,3)継続的なキャリア形成,をあげ,それぞれについて論じる。
著者
五十嵐 太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.441-444, 2007-09-01
参考文献数
6

建築デザインでは,情報やモノが行き交う現代的な場所として,ステーション,ライブラリー,カフェなどのビルディングタイプに注目が集まっている。大西麻貴は図書と住宅を,古谷誠章は図書と駅をかけあわせることで,新しい場所を創造した。OMAのシアトル中央図書館は,図書空間を軸にして公共の空間を再編成する大胆な実験を試みている。
著者
鈴木 ゆかり 関 美分
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-31, 2006-01-01

限られた人員構成の中, マニュアルを使って短時間で引継ぎを行い, 確実に成果を出していくことを私たちは求められている。しかし, それを可能にしているところはどれぐらいあるのだろうか。なぜうまくマニュアルを活用できないのか。そして, マニュアルを活用していく際, 多くの人が見過ごしている点は何なのか。新任者の能力向上に大きな影響を与えるのは直接OJTを行う指導者だといっても過言ではない。そこで指導する側の心構えについて再確認をし, マニュアルについては具体的な事例を用い, 活きたマニュアルにするためのコツと, 確実に成果を出すための効果的な引継ぎ方法について伝えていきたい。
著者
佐藤 翔 逸村 裕
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.144-150, 2010-04-01
被引用文献数
1

機関リポジトリ(IR)とオープンアクセス(OA)雑誌はBudapest Open Access Initiative(BOAI)を背景に普及してきた。本稿では両者の現状をBOAIの理念と持続可能性の観点から検討する。現在のIRとOA雑誌は, BOAIが挙げる3つの障壁のうち法の壁や技術の壁への対応に問題がある。持続可能性については継続的なコンテンツ収集のために,IRでは研究活動の中に埋め込まれること,OA雑誌では質を維持しながら多くの論文を掲載することが重要となる。また,BOAIは「研究の加速」などをOAの実現の目的としているが,IRとOA雑誌にはこれを損なう危険性もある。
著者
深見 嘉明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.486-491, 2013

2013年7月にGoogleはRSSリーダー,Googleリーダーのサービス提供を終了した。変わって情報収集ツールとして活用されているのが,TwitterやFacebookなどのタイムラインインターフェイスをもつサービスである。用いられるツールの変化により,情報収集はコミュニケーションと一体化して,論点の創造まで一気通貫になされるようになった。タイムラインインターフェイスは,コミュニティベースでの価値創造を一般化,ならびに迅速化したのである。本論文では,ソーシャルネットワーク上のタイムラインが実現した価値創造プロセスの変化と迅速化について,筆者の経験に基づいて分析するとともに,その対処について考察する。
著者
孫 媛
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.372-377, 2007-08-01

近年,研究評価に関する客観的指標への要請が高まり,ビブリオメトリックス指標に関心が向けられている。しかし,各指標はかならずしも適切に用いられているとはいえない。たとえば,インパクトファクタという指標が大学・研究機関あるいは研究者個人の研究業績評価に用いられるケースが増えているが,本来の定義・性質からは導き得ない解釈が行われることも多い。本稿では,ビブリオメトリックス研究一般について紹介した後,インパクトファクタ,h指数など,研究評価に利用される指標について,その特徴を解説する。研究評価におけるビブリオメトリックス指標を利用することの有効性と問題点についても整理する。