著者
齋藤 武馬 茂田 良光 上田 恵介
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.45-61, 2014 (Released:2015-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

メボソムシクイPhylloscopus borealis (Blasius 1858) は,これまで多くの研究者によって複数の亜種を含む多形種とされてきたが,近年分類が見直され,3つの独立種に分割された.すなわち,コムシクイPhylloscoups borealis,オオムシクイ P. examinandus,メボソムシクイ P. xanthodryasである.この3種は,DNAの配列と音声形質には明瞭な違いがあるが,形態形質についてはその差異が僅かなため,野外においてはしばしば種の識別が困難な場合が多い.これまで,繁殖雄については著者らによって開発された判別分析を用いた判別法があったが,雌を含めた種の判別方法は確立されていなかった.本論文では計測値を用いて,メボソムシクイ上種3種を雌雄にかかわらず識別する方法を解説する.この識別方法が,野外,特に標識調査においてメボソムシクイ上種の識別マニュアルとして役に立つことを願う.

12 0 0 0 OA 鳥体外部の名称

著者
茂田 良光 佐野 裕彦
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.56-69, 1986 (Released:2015-02-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

In the present paper we briefly reviewed and commented the terminology for bird topography, especially wing and tail. We named here newly required Japanese terms, such as alula coverts and carpal covert, and also illustra-ted some of them. Terms for bird topography are given, which including new Japanese ones indicated by asterisk (*) in table 1.
著者
出口 智広 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子 広居 忠量
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
81
被引用文献数
1 3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.
著者
茂田 良光
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.309-313, 2003-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16

Two Chinese Blue-and-white Flycatchers Cyanoptila cyanomelana cumatilis, an adult male and a first winter male, were banded on Kuroshima, Mishima-mura, Kagoshima-gun, Kagoshima Prefecture (30°50'N, 129°56'E) on 27 and 28 September 1997, respectively. This is the first authentic record for this subspecies of Blue-and-white Flycatcher Cyanoptila cyanomelana for Japan. The birds were probably migrants on their way to their wintering area. I showed the photos of the two birds, with the photos of C. c. cumatilis captured on China mainland and C. c. cyanomelana from Honshu, Japan for comparative identification.
著者
桑原 和之 茂田 良光 野口 一誠 富谷 健三
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-48, 2004 (Released:2015-08-20)
参考文献数
11

アカコッコTurdus celaenopsは,伊豆諸島とトカラ列島でのみ繁殖する日本固有種である.本種は,本州では房総半島と伊豆半島で稀に越冬期の記録がある.1983年12月15日から1984年5月7日まで雄成鳥が千葉県銚子市(35°44′N,140°51′E,)で越冬し,また1992年4月25日から5月2日に雄成鳥が千葉県山武郡山武町(35°39′N,140°23′E,)で観察された.この2例が千葉県における初めての確実な報告例となる.
著者
森岡 弘之 茂田 良光
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-43, 1993-03
被引用文献数
1

The generic allocation of the Japanese Marsh Warbler Megalurus pryeri is discussed. The genus Megalurus is probably a polyphyletic group. The type species of the genus is M. palustris, which is a different bird from M. pryeri in many respects. We suggest that pryeri be placed in the genus Locustella until its relationships with other sylviine species are better known.
著者
出口 智広 広居 忠量 吉安 京子 尾崎 清明 佐藤 文男 茂田 良光 米田 重玄 仲村 昇 富田 直樹 千田 万里子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-51, 2015
被引用文献数
3

生態系サービスの持続的利用を考える上で,生物がどのようなサービスを人間に提供するかだけでなく,このサービスを提供する生物が環境変化によってどのような影響を受けているかの双方の理解が不可欠である.本研究では,東南アジアから繁殖のために日本に渡ってくる夏鳥の中から,気象庁生物季節観測(1953~2008年)および標識調査(1961~1971年,1982~2011年)で情報が多く得られているツバメ,カッコウ,オオヨシキリ,コムクドリを選び,成鳥および巣内雛の出現時期の長期変化,両時期と前冬および当春の気温との関係,および植物,昆虫の春期初認日との関係について調べた.その結果,ツバメ,オオヨシキリ,コムクドリの成鳥および巣内雛は,出現時期が早期化する傾向が見られたが,カッコウだけは出現時期が近年晩期化する傾向が見られた.ツバメ,オオヨシキリの成鳥および巣内雛の出現時期は,気温が高い年ほど早期化する傾向が見られたが,カッコウの出現時期は気温が高い年ほど晩期化する傾向が見られた.これらの長期変化の速度は,一部を除いて,欧米の先行研究の結果からの大きな逸脱は見られなかった.また,これら鳥類と植物および昆虫の出現時期とのずれは一定で推移しているとは言えなかったが,早期化あるいは晩期化する鳥類を隔てる要因や,フェノロジカルミスマッチをもたらす要因について明らかにすることはできなかった.今後フェノロジカルミスマッチに注目した研究を進める際には地域差を考慮した解析が必要である.
著者
齋藤 武馬 西海 功 茂田 良光 上田 恵介
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.46-59, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
61
被引用文献数
3

メボソムシクイPhylloscopus borealis (Blasius) は,旧北区北部と新北区最北西部のスカンジナビアからアラスカまで,南端は日本まで繁殖する渡り鳥である.僅かな形態形質の違いから,これまで7の亜種が記載されてきたが,その分類には統一した見解がなく,分類学的混乱がみられる.この問題を解決するため,著者らはこれまでに繁殖分布域の全域において,分子系統学,形態学,音声学的手法を用いた解析を行い,メボソムシクイの地域個体群間の差異を明らかにしてきた.さらに,著者らは利用可能な学名の正しい適用を決めるため,渡り中継地及び越冬地から採集されたタイプ標本のミトコンドリアDNAを解読した.その結果,ミトコンドリアDNAの配列,外部形態,音声の変異の一致から,従来認識されてきたメボソムシクイには3つの独立種を含むことを明らかにした.それは,Arctic Warbler Phylloscopus borealis(ユーラシア北部~アラスカ西部),Kamchatka Leaf Warbler P. examinandus(カムチャツカ・千島列島・サハリン・北海道知床半島),Japanese Leaf Warbler P. xanthodryas(本州・四国・九州)である.さらに,これらの種について種和名を提唱し,Arctic Warblerをコムシクイ,Kamchatka Leaf Warblerをオオムシクイ,Japanese Leaf Warblerをメボソムシクイとすることを提案した.