著者
田畑 阿美 荒川 芳輝 梅田 雄嗣 坪山 直生 松島 佳苗 加藤 寿宏
出版者
The Japanese Society of Pediatric Hematology / Oncology
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.182-188, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
20

小児脳腫瘍は小児がんの中で白血病に次ぐ頻度で発症し,学習や社会経験の構築に重要な小児期に発症するため,治療中や治療後の復学は大きな課題の一つである.認知機能低下や社会不適応などが生じた小児脳腫瘍患者の報告もみられるが,国内における報告は少ない.今回,復学後の小児脳腫瘍患児の認知機能,生活の質(quality of life:以下QOL)および学校生活における適応行動に関して探索的に調査し,作業療法の立場からの支援の可能性を検討した.対象は京都大学医学部附属病院に通院中の復学後の6~16歳の小児脳腫瘍患児10名で,認知機能評価として日本版WISC-IV知能検査,QOL評価としてPediatric Quality of Life Inventory version 4.0日本語版コアスケールおよび,日本語版脳腫瘍モジュール,適応行動評価として旭出式社会適応スキル検査を実施した.合成得点の平均は全検査IQ 92.9±10.3で,認知機能の明らかな低下は認めず,QOLは比較的保たれている患児・家族が多かった.その一方で,40.0~90.0%の患児において認知機能の個人内差を認めた.過半数の患児において適応行動の低下を認め,特に日常生活スキル,対人関係スキルで低下していた.これらの結果から,作業療法による適応行動の改善を目指した支援が有効となることが期待される.さらなる症例集積から適切な支援方法の検討が必要である.
著者
川崎 敏生 荒川 芳輝 杉野 寿哉 光原 崇文 舟木 健史 菊池 隆幸 小柳 正臣 吉田 和道 国枝 武治 高橋 淳C 高木 康志 宮本 享
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1005-1010, 2015-11-10

Ⅰ.はじめに もやもや病は,両側内頚動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ,代償的に脳底部に異常血管網が形成される原因不明の疾患である11).一方,川崎病は乳児および幼児において原因不明の系統的血管炎を主体とする疾患であり6),活動期に稀ながら脳梗塞を合併する4,7,12,15,17).川崎病活動期のもやもや病合併の報告はないが,川崎病罹患歴のあるもやもや病の報告がある1,3,8,9,13,14).今回,川崎病の既往があるもやもや病3例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
著者
西田 野百合 草野 佑介 山脇 理恵 梅田 雄嗣 荒川 芳輝 田畑 阿美 小川 裕也 宮城 崇史 池口 良輔 松田 秀一 上田 敬太
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.24-29, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
14

協調運動障害は小児髄芽腫治療後の主要な晩期合併症の一つであるが,学校生活への適応や社会参加の制約につながる可能性があるにも関わらず,標準化された検査法で評価し,適応行動やHealth-Related Quality of Life(健康関連QOL:HRQOL)への影響を詳細に検討した報告はない.本研究では手術,放射線治療,化学療法による治療終了後2年以上経過した髄芽腫男児患者2例を対象に,協調運動障害はThe Bruininks-Oseretsky Test of Motor Proficiency, Second Edition (BOT-2),適応行動やHRQOLについては半構造化面接や質問紙を用いて評価し,その影響について検討した.2症例ともに,四肢の協調性やバランス能力,巧緻運動速度が低下していた.適応行動は外出,友人との交流,粗大運動に関わる項目が低下し,HRQOLは運動やバランスに関する項目が低下していた.好発部位が小脳である髄芽腫生存者においては,協調運動障害が出現する可能性は高いと考えられる.髄芽腫患者の適応行動やHRQOLの改善および社会参加の拡大のためには,協調運動障害に対する標準化された検査法による評価と継続的なリハビリテーション介入,ライフステージに合わせた合理的配慮が重要である可能性が示唆された.