著者
草野 佑介 粟屋 智就 齊藤 景子 吉田 健司 井手 見名子 加藤 竹雄 平家 俊男 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.445-448, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
9

Irlen症候群は視知覚の異常が原因とされる読字障害の特殊型である. 特定の遮光レンズ眼鏡やカラーフィルムにより症状が改善することが特徴とされているが, それらの効果には懐疑的な意見も多くIrlen症候群の存在自体にも議論がある. 今回, 我々は羞明などの視覚過敏症状を呈し, 遮光レンズ眼鏡の有無により読字能力が大幅に左右された読字障害の8歳女児を経験した. 遮光レンズ眼鏡がプラセボ効果である心因性視力障害の可能性は完全には否定できないものの, その症状や経過はIrlen症候群の特徴に非常によく合致していた. 本症例では, 遮光レンズ眼鏡非装用下では全く本が読めない状態から, 遮光レンズ眼鏡装用下では年齢相応の読字能力を示し, 何らかの光学的な情報処理の異常が読字に影響を与えていると推察された. Irlen症候群は現在では読字障害, 学習障害全般や一般人口を対照に曖昧にその概念を拡げているが, その科学的な意味付けには本症例のような特徴的な症例を集積する必要がある. 同時に, 遮光レンズ眼鏡という簡便な手法により容易に矯正されうる点で, 学習障害に携わる医療関係者や支援者が記憶しておくべき概念であると考えられる.
著者
草野 佑介 上田 将也 宮坂 淳介 南角 学 松田 秀一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.543-546, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
4

要旨:本症例はCOVID-19重症肺炎に罹患し,長期の気管内挿管,深い鎮静,長期臥床により重篤なICU-Acquired Weakness(ICU-AW)およびADL低下を認めた.我々はCOVID-19リハビリテーションチームを編成し,感染対策および集中的なリハビリテーションを実施したことで,対象者は病前の生活に復帰することができた.本稿の目的は,COVID-19重症肺炎患者1例に対する急性期の作業療法の経験を報告することである.学際的チームアプローチによる作業療法が,集中治療後症候群の重症化を予防し,対象者の日常生活への復帰に貢献したと考えられた.
著者
草野 佑介 寺岡 睦 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-50, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
24

後天性脳損傷児の学校への適応プロセスにおける共通性と多様性を解明することを目的に,質的研究法である複線径路等至性アプローチを用いて5名の保護者の経験を分析した.その結果,後天性脳損傷児の就学(復学)プロセスにおける【適応をめぐる葛藤】という新たな概念および3つの分岐点が生成された.学校への適応は通過点としての目標である.適応という概念が葛藤を内包したゆらぎを帯びた状態であることを前提に,将来に待ち受けているライフステージの変化を考慮した,対象児と保護者の地域社会生活への参加における問題解決を長期的に支援することが作業療法士の役割として重要であると考えられた.
著者
西田 野百合 草野 佑介 山脇 理恵 梅田 雄嗣 荒川 芳輝 田畑 阿美 小川 裕也 宮城 崇史 池口 良輔 松田 秀一 上田 敬太
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.24-29, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
14

協調運動障害は小児髄芽腫治療後の主要な晩期合併症の一つであるが,学校生活への適応や社会参加の制約につながる可能性があるにも関わらず,標準化された検査法で評価し,適応行動やHealth-Related Quality of Life(健康関連QOL:HRQOL)への影響を詳細に検討した報告はない.本研究では手術,放射線治療,化学療法による治療終了後2年以上経過した髄芽腫男児患者2例を対象に,協調運動障害はThe Bruininks-Oseretsky Test of Motor Proficiency, Second Edition (BOT-2),適応行動やHRQOLについては半構造化面接や質問紙を用いて評価し,その影響について検討した.2症例ともに,四肢の協調性やバランス能力,巧緻運動速度が低下していた.適応行動は外出,友人との交流,粗大運動に関わる項目が低下し,HRQOLは運動やバランスに関する項目が低下していた.好発部位が小脳である髄芽腫生存者においては,協調運動障害が出現する可能性は高いと考えられる.髄芽腫患者の適応行動やHRQOLの改善および社会参加の拡大のためには,協調運動障害に対する標準化された検査法による評価と継続的なリハビリテーション介入,ライフステージに合わせた合理的配慮が重要である可能性が示唆された.
著者
白石 純子 草野 佑介 杉村 喜美子 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
15

京都府作業療法士会特別支援教育OTチームは,平成19年より特別支援教育における作業療法の有用性を検証してきた。今回,中学生3名に対し約半年間で3回ずつの訪問支援を行い,中学校における作業療法による介入の成果と特性について検討した。ASEBAによる行動チェックリストや授業参観・個別面談に加え,それぞれの主訴に応じた個別アセスメントにより,主訴の背景の解釈や,日常生活および学校生活で実施可能な支援計画を本人・保護者・教員に提案した。その結果,3名全員に学校生活上の改善を認めた。これらの背景には,作業療法の専門性を活かした個人,作業,環境の相互関係を踏まえた包括的アセスメントとそれに基づく課題の調整や学校・家庭の環境調整が有効であったと考える。今後も中学校と作業療法との連携の有効性について検証し,発信していくことが必要であると考えられる。