著者
岩永 竜一郎 仙石 泰仁 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.631-639, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
63
被引用文献数
1

近年,作業療法の対象患者のなかに注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder;以下,ADHD),自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD),発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder;以下,DCD)など,いわゆる神経発達症のある子どもや大人が増えてきている.
著者
草野 佑介 粟屋 智就 齊藤 景子 吉田 健司 井手 見名子 加藤 竹雄 平家 俊男 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.445-448, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
9

Irlen症候群は視知覚の異常が原因とされる読字障害の特殊型である. 特定の遮光レンズ眼鏡やカラーフィルムにより症状が改善することが特徴とされているが, それらの効果には懐疑的な意見も多くIrlen症候群の存在自体にも議論がある. 今回, 我々は羞明などの視覚過敏症状を呈し, 遮光レンズ眼鏡の有無により読字能力が大幅に左右された読字障害の8歳女児を経験した. 遮光レンズ眼鏡がプラセボ効果である心因性視力障害の可能性は完全には否定できないものの, その症状や経過はIrlen症候群の特徴に非常によく合致していた. 本症例では, 遮光レンズ眼鏡非装用下では全く本が読めない状態から, 遮光レンズ眼鏡装用下では年齢相応の読字能力を示し, 何らかの光学的な情報処理の異常が読字に影響を与えていると推察された. Irlen症候群は現在では読字障害, 学習障害全般や一般人口を対照に曖昧にその概念を拡げているが, その科学的な意味付けには本症例のような特徴的な症例を集積する必要がある. 同時に, 遮光レンズ眼鏡という簡便な手法により容易に矯正されうる点で, 学習障害に携わる医療関係者や支援者が記憶しておくべき概念であると考えられる.
著者
田畑 阿美 荒川 芳輝 梅田 雄嗣 坪山 直生 松島 佳苗 加藤 寿宏
出版者
The Japanese Society of Pediatric Hematology / Oncology
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.182-188, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
20

小児脳腫瘍は小児がんの中で白血病に次ぐ頻度で発症し,学習や社会経験の構築に重要な小児期に発症するため,治療中や治療後の復学は大きな課題の一つである.認知機能低下や社会不適応などが生じた小児脳腫瘍患者の報告もみられるが,国内における報告は少ない.今回,復学後の小児脳腫瘍患児の認知機能,生活の質(quality of life:以下QOL)および学校生活における適応行動に関して探索的に調査し,作業療法の立場からの支援の可能性を検討した.対象は京都大学医学部附属病院に通院中の復学後の6~16歳の小児脳腫瘍患児10名で,認知機能評価として日本版WISC-IV知能検査,QOL評価としてPediatric Quality of Life Inventory version 4.0日本語版コアスケールおよび,日本語版脳腫瘍モジュール,適応行動評価として旭出式社会適応スキル検査を実施した.合成得点の平均は全検査IQ 92.9±10.3で,認知機能の明らかな低下は認めず,QOLは比較的保たれている患児・家族が多かった.その一方で,40.0~90.0%の患児において認知機能の個人内差を認めた.過半数の患児において適応行動の低下を認め,特に日常生活スキル,対人関係スキルで低下していた.これらの結果から,作業療法による適応行動の改善を目指した支援が有効となることが期待される.さらなる症例集積から適切な支援方法の検討が必要である.
著者
的野 春樹 丸森 宏晋 加藤 寿宏 渡邊 昭信 小野 裕明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.424, pp.1-4, 2008-01-10

FPDのHD化の流れに沿って、家庭用ムービー市場もHD化が進んでいる。しかしながら、記録媒体としてはテープ、DVD、HDD、SDカードと乱立状態である。それぞれメリット、デメリットがあるが、ユーザにとって選択は難しい。今回開発したBDカメラは(1)5M画素CMOSセンサ、(2)HD対応カメラ信号処理LSI、(3)高圧縮H.264コーデックLSI、(4)BD記録対応により、家庭用ムービーとして十分な1時間記録が可能なHDカメラである。また、H.264/MPEG2/JPEGを1チップで処理可能なコーデックLSIを採用し、ソフトウェア制御も新たにマルチコーデック対応とした。
著者
土田 玲子 加藤 寿宏 日田 勝子 太田 篤志 岩永 隆一郎
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

4歳から10歳までの発達障害児(DSM-TRによる学習障害-LD-、運動能力障害-DCD-、コミュニケーション障害-CD-、広汎性発達障害-PDD-、注意欠陥-ADHD-のいずれかの診断に属する者)36名に対し、新しく開発された日本版感覚統合検査(JPAN)および南カルフォルニア感覚統合検査(SCSIT)等、関連する発達検査のデータを収集し、その関連性(妥当性)、識別性について検討した。その結果、SCSITとの関連については、発達障害児データの81%が障害カテゴリーに入ることが示され、その妥当性が確認された。さらに、発達障害児群をPDDと非PDD群に分けて分析すると、IQに関しては両群に差異が認められないにもかかわらず、PDD群に有意に姿勢、平衡機能、行為機能、視知覚、目と手の協調運動の問題が大きく認められた。ゆえに、JPANは従来の知能検査では捕らえることのできない発達障害児の感覚運動機能の障害を明らかにできる妥当性が高い検査であることが示唆された。今後の課題として、障害児データ数が目標数に達しなかったため、さらに時間をかけて本研究を継続する必要があることがあげられる。
著者
白石 純子 草野 佑介 杉村 喜美子 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
15

京都府作業療法士会特別支援教育OTチームは,平成19年より特別支援教育における作業療法の有用性を検証してきた。今回,中学生3名に対し約半年間で3回ずつの訪問支援を行い,中学校における作業療法による介入の成果と特性について検討した。ASEBAによる行動チェックリストや授業参観・個別面談に加え,それぞれの主訴に応じた個別アセスメントにより,主訴の背景の解釈や,日常生活および学校生活で実施可能な支援計画を本人・保護者・教員に提案した。その結果,3名全員に学校生活上の改善を認めた。これらの背景には,作業療法の専門性を活かした個人,作業,環境の相互関係を踏まえた包括的アセスメントとそれに基づく課題の調整や学校・家庭の環境調整が有効であったと考える。今後も中学校と作業療法との連携の有効性について検証し,発信していくことが必要であると考えられる。
著者
長岡 千賀 小山内 秀和 矢野 裕理 松島 佳苗 加藤 寿宏 吉川 左紀子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.139-155, 2018-06-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
12

This study aims to investigate the characteristics of effective interaction between a therapist and his/her child client with autism spectrum disorder during a session of occupational therapy. Four sessions were video-recorded and analyzed, including one conducted by a novice therapist and three by expert therapists. Three children with autism spectrum disorder who were able to take part in everyday conversations also participated in this study. In study 1, we coded the therapists’ utterances according to their function in the context through a session. In study 2, we segmented the video-recording of a session based on the goal of child behavior, recorded the therapists’ physical support, and examined not only the temporal relationship between the therapists’ utterances and physical support but also the children’s proactive behavior. The results indicated that the expert therapists appropriately provided attentive utterances and physical support according to the children’s actions. We discuss a new and useful framework for understanding therapist support and children with developmental disabilities.
著者
宮﨑 瑠理子 岩坂 英巳 植村 里香 武藤 葉子 加藤 寿宏 宮﨑 義博 笹井 武広 高畑 脩平
出版者
奈良教育大学教育実践開発研究センター
雑誌
教育実践開発研究センター研究紀要 = Bulletin of Center for Educational Research and Development (ISSN:21865841)
巻号頁・発行日
no.22, pp.107-113, 2013-03

奈良教育大学特別支援教育研究センター及び奈良県総合リハビリテーションセンターで実施しているSSTプログラムには、発達障害等で対人交流において支援を要する子ども達が参加している。この子ども達に対して、感覚統合面の評価を行った。結果、視覚・聴覚・固有感覚・触覚において感覚調整に困難さをもつ子ども達が多いことと、「姿勢平衡機能」「両手の協調運動」「身体模倣」「表情模倣」に困難さをもつ子ども達が多いことが分かった。また、通年プログラムを通して、参加児達の「身体模倣」のスコアが向上したことも確認できた。子ども達への対人交流を支援するには、「感覚」「運動」の要素が活かされた、体のイメージや運動を組み立てる力の育ちを支援できる遊びプログラムも重要であることが示唆された