著者
荒木 良太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.61, 2021 (Released:2021-01-01)
参考文献数
1

脳と腸は,自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカインなど)を介して密に関連していることが知られている.近年,次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析法の登場により,ヒトの腸内細菌叢の実態が明らかになってきた.このことから,脳と腸だけでなく腸内細菌叢を加えた「脳-腸-腸内細菌叢軸」という概念が提唱され,腸内細菌叢の包括的な解析による中枢神経系疾患の病態メカニズムの解明が期待されている.こうした背景から本稿では,メタゲノム解析とバイオインフォマティクスツールにより,統合失調症患者の腸内細菌叢を包括的に解析したZhuらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Zhu F. et al., Nat. Commun., 11, 1612(2020).
著者
荒木 良太
出版者
認知症治療研究会
雑誌
認知症治療研究会会誌 (ISSN:21892806)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.32-34, 2021 (Released:2021-02-15)
参考文献数
24

植物由来成分であるフェルラ酸を含むサプリメントが認知症の周辺症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)に対して有効である例が報告されている.しかしながら,その作用機序の詳細は明らかとなっていない.これまでに我々は,フェルラ酸が中枢神経系に及ぼす影響に関して,実験動物を用いた基礎研究を行い,フェルラ酸が神経幹/前駆細胞の増殖を促進することや5-HT1A受容体の部分作動薬として働くことを明らかにしてきた.本稿では,こうした我々の基礎研究結果をもとに,フェルラ酸がBPSD を改善するメカニズムとBPSD の治療におけるフェルラ酸の有用性について考察する.
著者
荒木 良太
出版者
摂南大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

精神症状に使用される漢方薬である加味温胆湯は、マウスにおいて抗うつ様作用と細胞外セロトニン量増加作用を示した。こうした加味温胆湯の作用は構成生薬の竹ジョ*を除くことで消失した。しかしながら、竹ジョ*単体では細胞外セロトニン量増加作用が見られなかったことから、細胞外セロトニン量増加作用には、竹ジョ*と他の生薬との組み合わせが重要であることが示唆された。また、精神症状に対して用いられる多くの漢方薬においてセロトニン5-HT1A受容体刺激作用が認められた。以上の結果から、精神症状に用いられる漢方薬の多くは、セロトニン神経系を介して薬効を発揮している可能性が示された。(ジョ*は竹かんむりに如)