著者
菅野 洋光
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.241-249, 2008-02
被引用文献数
1

東北地方では、梅雨季から夏にかけて「やませ」と呼ばれる低温の東よりの風が吹く。やませは、日本の北にオホーツク海高気圧が出現し、本州南岸付近に低気圧や前線が停滞するような気圧配置で発生する。また、やませは平年でも15〜30日程度は吹走して、主に東北地方太平洋側に低温をもたらすが、夏の太平洋高気圧の勢力が十分に強ければ、盛夏期にはほとんど吹かず、東北地方も関東地方並みに暑くなる。ところが、太平洋高気圧が弱く、梅雨前線を十分に北まで押し上げられない夏もある。そのような場合、オホーツク海高気圧の勢力が強く、やませが10日以上も吹き続ける。そして、8月になっても梅雨が明けず、冷夏が決定的になる。さて、このような不安定な気象条件下では、的確な気象予測に基づいた早期の被害軽減策を施すことが有効であると考えられる。そこで、2003年冷害を受けて発足した、先端技術を活用した農林水産研究高度化事業プロジェクト「やませ気象下の水稲生育・被害予測モデルと冷害回避技術の開発(2004〜2006年)」で、気象予測データを基にした農作物被害軽減情報のウェブサイトを作成し、冷害などの異常気象による被害軽減の支援を開始した。
著者
菅野 洋光 岡 秀一 前島 郁雄
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.181-187, 1991
被引用文献数
1

1989年7月25日に下北丘陵で小気候観測を行なった。係留気球を用いた観測により, 高さ約200m以下で気温約20℃の海風が捉えられた。海風の鉛直構造を解析したところ, 高さ約100m以下の海からの風に対応した層 (水蒸気量が相対的に小さいことで特徴づけられる) と, 100~200mの反流が認められた。アメダスデータから, この海風は, 太平洋側に局限されたものであることがわかった。
著者
岩崎 俊樹 山崎 剛 余 偉明 大林 茂 松島 大 菅野 洋光 佐々木 華織 石井 昌憲 岩井 宏徳 野田 暁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ダウンスケール手法に基づくメソスケール予報システムを作成し、農業気象と航空気象へ高度利用法を検討した。予測精度を向上させるためには、物理過程を改良し、初期条件と境界条件を最適化することが重要であることが示された。農業分野では、清川だしの強風といもち病の予測可能性を明らかにした。航空分野では、ドップラーライダーとダウンスケールシステムを組み合わせた、空港気象監視予測システムの可能性を検討した。
著者
菅野 洋光
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1053-1071, 1997-12-25
参考文献数
20
被引用文献数
5

日本の東北地方の夏季に低温をもたらすヤマセ風について、1979年から1993年の三沢の高層気象データを用いて分類を行った。ヤマセ気塊の鉛直構造に対してクラスター分析を行い、7つに分類した。各クラスターに属するヤマセ気塊の特徴を、クラスター毎に平均して調べた。ヤマセ風による地表の低温域は気塊の高さに比例しているが、気塊の高さは必ずしも東風の高さと一致していない。ヤマセ気塊、東風共に高い (約800 hPa以上) 場合、地表では東風が東北地方全域を吹走し、強い低温域が太平洋側に認められる (クラスター2と6)。東風が高いが (約800 hPa以上)、気塊の高さが低い場合 (約800 hPa以下)、東風は東北地方全域を吹走するが、地表の低温はさほど強くはなく、寒気は山地によって効果的にブロックされる (クラスター3と5)。ヤマセ気塊、東風共に低い場合、地表の東風と低温域は太平洋側に限定される (クラスター1, 4と7)。各クラスターに属するヤマセ風の出現頻度には季節性が認められる。クラスター6と7は6月にのみ出現し、クラスター2と4は主に梅雨期に、クラスター1と3は梅雨後期から盛夏季に、またクラスター5は主に盛夏季に出現する。また、地上気圧配置、前線の頻度、および500 hPaの高度場はクラスターごとに特徴的な分布を示している。各年ごとにヤマセ風の出現頻度を調べたところ、夏が著しく低温であった1980年、1988年、および1993年には、クラスター2,3,4のヤマセ風が多く吹走していた。しかしながら、低温かつ高さの高い気塊を伴うクラスター2に属するヤマセ風が、夏季の低温に重要な役割を担っていることが示唆された。