著者
岡 秀一 青山 高義
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.44-49, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
14
被引用文献数
2

対馬には板倉と呼ばれる倉庫群が発達している.かつてこの板倉は,土地をもち耕作することができる“本戸”と呼ばれる人々のみが所有することができた.耕作可能な土地は西岸域に集中しているので,必然的に板倉の分布も西岸域に偏在していた.板倉は防災対策上主屋から隔離され,小屋屋敷と呼ばれる立地に群をなして設置された.瓦の使用が禁止されていた江戸期にその屋根素材として注目されたのが,対馬の基盤をなしている対州層群であった.対馬の地形や地質をはじめとする特異な自然環境に規制され,またそれらを利用しながら生活する人々の生産様式・生活様式の中で培われてきた石屋根板倉は対馬の象徴であり,大地の遺産にふさわしい存在である.
著者
前島 郁雄 鈴木 啓介 田上 善夫 岡 秀一 野上 道男 三上 岳彦
出版者
東京都立大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本年度は、3年間の研究計画の最終年度であり、研究成果をまとめると以下の通りである。1.全国19地点の日記の天候記録をもとに、1771-1840年の70年間について、夏季4ケ月(6〜9月)の毎日の天候分布図を完成した。次に、北海道を除く全国を5つの地域に区分し、各地域毎に降雨の有無の判定を行なった。降雨の有無を1と0とで表現し、その組み合せから、全32タイプの天候分布型を設定して毎日の天候分布型の分類を行なった。その結果を天候分布型カレンダ-としてまとめた(成果報告書参照)。2.一方、現在の天候デ-タを用いて、上記と同様の方法で1975〜84年の10年間について、天候分布型の分類を行なった。気圧配置型については、吉野ほか(1967、1975、1985)による分類法を若干修正して用いることにした。各天候分布型に対応する日の気圧配置型を集計して、両者の対応関係を検討した。その結果、一つの天候分布型に対して必ずしも一義的に気圧配置型が対応しないことが明らかになった。3.最終的に、次の手順で気圧配置型の復元を試みることにした。(1)歴史時代の毎日の天候分布図を作成し、上述の方法で32通りの天候分布型に分類する。(2)現在の観測デ-タに基き作成した各天候分布型に対応する前線と高低気圧・台風中心位置の合成図を参考に、ワ-クシ-トを作成する。ワ-クシ-トには、想定される概略的な前線と高低気圧の中心位置を書き込む。この場合、連続性や高低気圧の移動速度等を考察する。(3)完成したワ-クシ-トをもとに、毎日の気圧配置性を吉野らによる分類法にしたがって復元する。本研究では、実際に1783年(天明の飢餓年)の6〜7月の気圧配置型の復元を試みた。
著者
吉田 圭一郎 岩下 広和 飯島 慈裕 岡 秀一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.516-526, 2006-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
35
被引用文献数
3 9 4

本研究では父島気象観測所で観測された78年分(戦前: 1907~1943年,占領期間: 1951~1959年,返還後: 1969~2000年)の月別気温および降水量データを用いて小笠原諸島における水文気候環境の長期的な変化を解析した.占領期間および返還後の年平均気温は戦前と比較して0.4~0.6°C 高く,年平均気温の上昇率は0.75°C/100yrであった.また,返還後の年降水量は戦前に比べて約20%減少した.修正したソーンスウェイト法により算出した月別の可能蒸発量と水収支から,年平均の水不足量(WD)が戦前に比べ返還後には増加したことがわかった.また,返還後は夏季において水不足となる月が継続する期間が長くなった.これらのことから小笠原諸島における20世紀中の水文気候環境は乾燥化の傾向にあり,特に夏季に乾燥の度合いが強まり,また長期化することにより夏季乾燥期が顕在化した.
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.439-444, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

線維筋痛症は身体症状の複雑化とともに, 怒り, 不安, 抑うつなど多岐にわたる心理的状態をきたすため, 心理的支援に限らず, 種々の専門科の専門性を生かした適切な支援の充実が必要とされている. 本研究では, 線維筋痛症患者特有の痛みが起こる状況を取り上げ, これまでの調査, 臨床での実践研究を通して得られた知見をもとに, 痛みが起こる諸要因の動きに着目し, 患者個人に応じた支援を充実させる心理的支援の方策を探った. その結果, 痛みが起こる背後に隠れている複数の要因を4つのタイプに分類し, それをもとに心理的支援の新たな基盤づくりを試みた. また, 患者が訴える痛みの強度や頻度に意識を向けるだけではなく, 痛みと向き合える心身の健康づくりや, 家族面接を契機に痛み症状の改善につながった例を取り上げ, 臨床の実際について提言した.
著者
小坂 洋明 渡辺 嘉二郎 永岡 秀一
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.1880-1888, 1995-11-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

A comfortable man-machine interfaces are required for current advanced systems. Keyboard switches as one of the most frequently used man-machine interfaces should provide comfortable feeling for operation. This paper aims at investigating the relation between reaction force of keyboard switches and human switch operation feeling.We investigate how each reaction force of switches effects to the touch feeling of keyboard switches via sensory test. We made a switch that is assisted by a servo mechanism and can generate arbitrary reaction force characteristics for the sensory test.The results of factor analysis for the questionnaire data obtained in the sensory test show that the most substantial factor is the feeling expressed by the words “Clear”, “Smooth”, “Stiff”, and “Clicking”.Further quantitative relations between the reaction force and feelings are obtained by regression line for the questionnaire data. This quantitative relation provides a sensory guideline for keyboard switch design.Finally, each feeling described by each word is directly evaluated by reaction forces or vice versa on dual scales. The dual scale for reaction forces and degree of feeling can be directly used for designing comfortable keyboard switch.
著者
渡辺 雅樹 岡 秀一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.465-478, 2010-09-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
27

本稿では,埼玉県南東部見沼田圃の耕作放棄地に注目し,植生分布の特徴とその成立要因を解明した.空中写真判読および植生調査を行った結果,1998年には調査地の大部分をヨシ群落が占めていたが,それ以降多くがセイタカアワダチソウ群落に変わり,ヨシ群落は水域の周辺に限定的に出現していた.地下水位,微地形,および土壌特性を対照すると,ヨシは地下水位が高いところ,セイタカアワダチソウは地下水位が低いところで群落を形成しており,地下水位が高くても,地表面の勾配や土壌硬度が大きいところには,セイタカアワダチソウ群落が出現することがわかった.こうした植生分布の変化は,水田耕作放棄による影響,2000年に造成された水域の影響,ならびに踏圧の影響によって生じたものと考えられた.
著者
佐藤 峰華 岡 秀一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.144-160, 2009-03-01 (Released:2011-05-31)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

シラビソAbies veitchii,オオシラビソA. mariesiiの優占する日本の亜高山針葉樹林帯には,いわゆる縞枯れ現象wave-regenerationが発現する.これは,天然更新の一つのパターンであり,特に北八ヶ岳にはその広がりが顕著である.北八ヶ岳・前掛山南斜面における亜高山帯針葉樹林で,空中写真判読を行い,いくつかの更新パターンを検出した.さらに,その違いが何に由来するのかを検討するために,現地で林分構造,齢構造,ならびに土壌条件について調査を行った.その結果,成熟型更新林分,縞枯れ型更新林分,一斉風倒型更新林分,混生林型更新林分という構造と更新パターンを異にする四つの林分が識別された.これらの林分が出現する範囲はほとんど固定されており,縞枯れ型更新林分は,南向き斜面のごく限られた領域にしか生じていなかった.これらの林分の配列は土壌の厚さや礫の混在度ときわめてよい対応関係を持っており,縞枯れ現象を発現させる自然立地環境として,斜面の向き,卓越風向などとともに,土壌条件が重要な役割を果たしていることが明らかになった.
著者
岡 秀一
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.673-696, 1991-10-25 (Released:2010-10-13)
参考文献数
58
被引用文献数
5 4

A forest limit marks a distinct change in landscape, but it includes a variety of elements. In this study, the forest limit altitudes all over Japan were compiled, the relationship between the specific features of their distribution and thermal conditions were discussed.The forest limit altitudes on 211 mountains ranged from below 1, 000 meters in Hokkaido to 2, 800 meters in Central Honshu, and difference in these altitudes extended about 2, 000 meters between 35° and 45° North Latitude. Horizontally, these altitudes are distributed concentrically, focusing on the Taisetsu Mountains and the Hidaka Mountains in Hokkaido and the Akaishi Mountains in Central Honshu. The zone ranging from the southern part of Northern Honshu to the northern part of Central Honshu is crowded with isopleths, forming a division between the sides of the Japan Sea and Pacific Ocean. Calculation the Warmth Indices (WI) of forest limit altitudes, we find that their frequency distribution ranges from 16.1°C·M to 50.4°CEM, and their modes are 25 to 35, 34 to 40, and 25 to 30°C·M in Hokkaido, Northern Honshu, and Central Honshu, respectively. Reviewing these data individually, we see that forest limits are seldom equivalent to WI 15°C·M, which has been set as a boundary between the alpine and subalpine zones. In reality, it becomes increasingly difficult for the forest limit to converge on a particular WI value due to a variety of causes. It is worth noting, however, that at least there are some mountains on which the forest limit altitude is extremely close to WI 15. In such a situation, the WI 15 is of great importance, because it indicates that forests are capable of growing at least to that extent in terms of thermal conditions. This is the reason why WI 15°C·M is worth notice, and therefore the relationship between its altitude distribution and the forest limit altitude was determined. Additionally, the relationship between mountaintop altitude and forest limit altitude was also investigated. The correlation coefficient of the latter is more closely related than the former. But we must emphasize that the latter is only a seeming relation. Why? It is true that the higher the mountain, the higher the limit altitude, but the fact is that the limit altitude will not rise endlessly in step with the height of a mountain.Then, another relationship was examined, concerning differences not only between WI 15 altitudes and forest limit altitudes but also between mountaintop altitudes and forest limit altitudes, using the variation coefficient to verify the dispersion in these differences. As a result, we found out that dispersions are smaller in the former (WI 15 and forest limit) th an in the latter and that forest limit altitudes are more closely related to thermal conditions. On the other hand, the differences between WI 15 altitudes and the forest limit altitudes are defined by mountaintop altitudes. Additionally, the depth of snow cover strongly affects the difference in forest limit altitudes, if mountaintop altitudes are the same.The role of thermal condition, mountaintop altitude and snow depth condition for determining the forest limit altitude should be easy to determine as Fig. 10. Namely, altitudes of forest limit are primarily decided by thermal conditions depended on their geographical situation. They are secondarily modified by altitude of mountain. When the mountain altitudes are equivalent, snow depth conditions affect the forest limit.
著者
林 文俊 大橋 正夫 廣岡 秀一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.9-25, 1983-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
46
被引用文献数
6 2

本研究では, 個々人が他者のパーソナリティを認知する際に働かせる次元の数やその意味内容を, 個別尺度法を用いて分析することを目的とした.被験者は大学生男子44名 (うち, 分析の対象としたのは33名). 各被験者は, 32名の刺激人物を個人ごとに構成された個別尺度上で評定することを求められた (調査SPR). また, 各被験者の個別尺度に含まれている特性をSD法でいうコンセプトとして扱い, それぞれを大橋ら (1973) による20対の共通尺度上で評定させた (調査TIF).調査SPRの資料より, 個人ごとに因子分析を行なった. そして, 抽出された諸因子を, 調査TIFの資料を媒介として分類・整理した. 得られた主な結果は, 次の3点である.1) 認知的複雑性の指標となる個々人の因子数は, 1~7の範囲に分布し, かなりの個人差が認められた. ただし, 人が他者のパーソナリティ認知に際して働かせる次元数としては, 最頻値として一応4次元程度を想定するのが適当であると考えられた.2) 抽出された因子の意味内容は, かなり多岐にわたっていたが, 多くは評価的色彩を帯びたものであった. また, 評価次元とは独立な形で力本性に関する因子もいくつか見いだされた.3) 個別尺度法により抽出された因子の多くは, 林 (1978a, 1978b) の提唱するパーソナリティ認知の基本3次元 (個人的親しみやすさ, 社会的望ましさ, 力本性) の枠組から分類・整理することが可能であった
著者
廣岡 秀一 横矢 規
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:0389925X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.131-144, 2003

対人コミュニケーションにおける予言の自己実現とは、出会った時の初期印象から他者に好意や嫌悪を抱き、その他者に対する好意や嫌悪に符号した無意図的なコミュニケーションを行い、さらに他者はそれに相応したコミュニケーションを行う結果、その他者が当初抱いた印象通りの人物だと確証することであり、コミュニケーションの当事者がこの因果プロセスに気づいていないことにその特色がある。本研究の目的は、2つの実験によってこの対人コミュニケーションにおける予言の自己実現プロセスが再現出来るかを確認するとともに、非言語的コミュニケーションチャンネルとしての微笑がどのように2者間に作用し、自らが他者に対して抱く好意にどのような影響を反ぼすのかを検討するものである。実験Iでは2者の初対面場面を設定し、実験協力者である面接者が意図的に微笑を発し、被験者が面接者に対して抱いた印象や好意を評定させた。また、その時の被験者のコミュニケーション行動(以下CB)をVTRで記録した。実験IIでは、実験Iで記録された被験者のCBを実験Iとは別の被験者に提示し、その人物に対する印象や好意、CBの認知を評定させた。その結果、以下のようなことが確認された。微笑は他者からよりポジティブな印象や好意を抱かれる。微笑みかけられた者は微笑みかけられなかった者よりも多くの微笑やCBを行っていたと認知され、よりポジティブな印象や好意を抱かれた。以上の結果とパス解析から得られた結果より、対人コミュニケーションにおける予言の自己実現では、無意図的に発した微笑によって自らの印象や好意をよくするだけでなく、自らがもつ相手に対しての印象や好意にまで影響を及ぼしていることが確認された。論文
著者
湯川 隆子 清水 裕士 廣岡 秀一
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.131-150, 2008-03

本研究の目的は、大学生におけるジェンダー特性語の認知がここ20年でどのように変わったかを検討することである。1970年代と1990年代に男女各1000人の大学生を対象に、50語のジェンダー特性語について同一の分類テストと連想テストを実施した。主な結果は以下のようであった。(1)男性あるいは女性の典型的ジェンダー特性語として分類された特性語の数は、1970年代より1990年代のほうが少なくなっていた。(2)ジェンダー特性語に対する連想反応語は、1970年代でのほうが1990年代よりも典型的なステレオタイプを表すと見られる内容が多かった。(3)近年の日本の大学生においては、ジェンダー特性語に対し、ジェンダー・ステレオタイプに沿って反応する傾向が減少してきている。
著者
金 外淑 松野 俊夫 村上 正人 釋 文雄 丸岡 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.327-333, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
7

慢性痛のセルフマネジメントに有効とされる認知行動療法を取り上げ, 線維筋痛症患者に対する多元的な視点による痛みのアセスメントと, 痛みの変化や今ある痛みと上手に付き合うための支援について述べた. また, 地域での新しい取り組みとして, 痛みで困っている患者やその家族を対象とした, 心理教育を中心とするセルフヘルプ支援をグループで学ぶ認知行動療法を試みた. 4つの地域での自由記述と予備調査の結果, 患者と家族間の考え方のズレや葛藤が読み取れ, さらに痛みが起こりやすい考え方や行動タイプなどの共通点が推測された. 特に慢性痛に現れやすい痛み関連行動が起きやすい内的・外的状況を把握し治療環境を整えることが, 今後起こり得る痛み行動の予防につながることも再認識できた. 最後には, これらの結果を踏まえ, 症例でみる痛み関連行動が起こる前後の状況に応じた支援の実際について報告した.
著者
丸岡 秀一郎 釋 文雄 村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.317-321, 2016

気管支喘息 (以下, 喘息) の病態形成には, 遺伝因子と環境因子が深く関与している. 環境因子の一つとして心理社会的ストレス (以下, ストレス) がある. ストレスがどのように呼吸器疾患の発症機序に影響を及ぼしているのか依然不明な点が多い. 近年, エピジェネティクスという学問領域が注目されている. DNAメチル化, ヒストン修飾, ノンコーディングRNA (non-coding RNA : ncRNA) などにより遺伝子の暗号を変化させることなく, 疾患関連遺伝子の発現調整をするシステムであり, 環境因子 (ストレスなど) によりエピゲノムに修飾が起こり, 疾患の表現型決定に影響し, さらに世代を超えて保存される. 本稿では, ストレス誘導性エピゲノム修飾について総括し, 呼吸器心身症の代表である喘息の病態形成について考察する.
著者
織田 揮準 中西 智子 廣岡 秀一
出版者
三重大学
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-20, 2003-03

平成14年度から学校週5日制度がスタートした。学校週5日制の完全実施によって、児童生徒の学校内で過ごす時間が減少し、児童生徒の生活の場が学校から家庭、地域社会へと変化する。しかし、家庭や地域社会の休校日における児童の受け入れ態勢(受け皿)の不備による学力低下、非行の低年齢化がさらに進行するのではないかと危惧する意見がある。本研究によって、学校週5日制度導入のための試行期間であった平成13年度秋に三重県下の公民館が実施した「休校日における小学校および公民館の児童向け開放の実態」に関する調査結果から、子どもの居場所として公民館がどのような機能を果たしたか、公民館開放の阻害要因は何かなどの実態が明らかにされた。本研究成果が、学校週5日制時代における地域密着型公民館のあり方を創造する話し合いや協議のきっかけとなり、その資料として役立てば幸いである。
著者
北浦 明人 岩井 誠人 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.315-317, 2007-03-01
被引用文献数
6

本論文では,フェージング変動が緩やかに変化しているような環境での秘密鍵共有方式として,二つのアンテナの受信信号強度の大小比較により2値化を行う方式を提案する.また,提案方式の性能を計算機シミュレーションにより評価を行った.
著者
堀 信行 飯島 祥二 高岡 貞夫 岡 秀一
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

色彩景観研究に取り組むに当たり、城下町起源の東西の小都市である角館と萩を対象地域に選び、平成8年度には角館、平成9年度には角館と萩の両者について現地調査を実施した。研究は大きく二つの方向で進められた。第一の方向は都市景観の色彩に関する計測的研究で、街路景観を構成する施設色彩の特性の都市間比較および自然・人工景観における輝度や色度の特性の都市間比較を試みた。当初、研究対象地域の植生の色彩がその地域の色彩景観との間に何らかの相互関係が存在するのではないかと考えたが、色彩景観として街路景観やビルの外壁など施設色彩に注目して分析を行った結果、現在のところ角館と萩の両者を比較しても、この作業仮説を積極的に支持する成果は得られていない。第二の方向は色彩民俗学的視点を取り入れた研究で、お祭りや絵図の中に現出する色彩群に社会的・文化的コードの文脈を読み取り、それを自然景観や記憶色との関係から分析した。角館の9月上旬に行われる祭りには、ヤマと呼ばれる山車が各町内から出て町を練り回る。山の象徴である山車は、きわめて濃い濃紺の布で覆われ、それに春の象徴としての桜、秋の象徴としての紅葉したモミジが飾り付けられている。さらに山の象徴に杉の樹も使われ、季節の推移に連動して山と里の間を出入りする神のイメージが植生の色彩を通して表現されている。これらの分析から、色彩景観として住民が互いに共有する記憶色といえる象徴的な色彩が意識され、それぞれが祭りの山車に表現されていることが分かった。
著者
神尾 享秀 三瓶 政一 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.11-18, 1994-01-25
被引用文献数
7

陸上移動通信において,高速伝送を行う場合には,マルチパスフェージングによる周波数選択性フェージングのため,伝送特性が著しく劣化する.このような場合の対策として判定帰還型等化器(DFE; Decision Feedback Equalizer)が研究されている.既に,QPSK / TDMAシステムにおいて,プリアンブルおよびポストアンブルのタップ係数を内挿する簡略化DFEを提案している.本論文では,周波数利用率の大きい16QAM / TDMAシステムへの適用について検討を行った.この場合,信号間距離の減少,判定誤りによる誤り伝搬により誤り率特性が劣化する.このため,逆方向等化での遅延波のタイミング検出機能を付加した両方向等化および逆数補間を用いて,タップ数を減少し,遅延波の存在しない場合および,遅延波の影響による軽減困難誤り特性を向上させたシステムを提案する.提案方式について,計算機シミュレーションにより検討を行った.また,演算量の従来方式との比較も行った.その結果,提案方式は,従来方式の1 / 10の演算量で,良好な等化特性を得られることがわかった.
著者
丸岡 秀一郎 村上 正人
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.130-135, 2013-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
28

アレルギー疾患の代表的疾患である気管支喘息は,さまざまな環境因子の影響を受けている.ハウスダストダニ抗原やゴキブリ抗原などに代表されるアレルゲンだけではなく,抗原性をもたない環境因子(細菌,オゾン,ディーゼル排気粒子,ウイルス感染,煙草など)も,その免疫賦活作用(アジュバント効果)により病態形成に関与していることが知られている.環境因子を介するエピジェネティクスは心理社会的ストレスも加味されてアレルギー性気道炎症を惹起して気管支喘息の発症に関与しているとされる.心身医学的側面については過去に多くの研究がなされてきたが,いまだその詳細なメカニズムについては不明な点が多い.本稿では,最新の文献をもとに環境ストレスと気管支喘息発症のメカニズムについて心身医学的側面から考察する.
著者
鈴木 文武 岡本 友好 船水 尚武 伊藤 隆介 藤岡 秀一 矢永 勝彦
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.906-910, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
16

症例は70歳男性.繰り返す胃潰瘍で近医加療中,腹部CT検査にて膵体部に58mm大の腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.潰瘍部より2度の生検が行われたが,いずれも良性の診断であった.血液生化学検査では,CEA14.1ng/ml,CA19-9 45U/ml,AFP 507ng/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.当院の腹部超音波検査では,膵体部に内部不均一で比較的境界明瞭な等~低エコーの腫瘤として描出された.超音波内視鏡下穿刺吸引生検の結果,低分化腺癌を認めた.膵悪性腫瘍の診断にて膵体尾部切除,リンパ節郭清を行った.術中に胃前庭部に漿膜側へ突出する腫瘍を認めたため,幽門側胃切除術を併施した.術後病理組織診断では,胃はAFP産生腫瘍であり,膵の腫瘤は胃癌の転移リンパ節であった.以上,膵腫瘤が発見契機となったAFP産生胃癌膵周囲リンパ節転移の切除例を経験した.膵腫瘤性病変にAFPの上昇を伴った場合は,胃の十分な精査が肝要と考えられた.