著者
沢田 雅洋 山下 博 岩崎 俊樹 大林 茂
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.58, no.681, pp.295-301, 2010 (Released:2010-10-27)
参考文献数
14

Research of Long-Distance Human-Powered Flight has been performed through the following four items: Aircraft design, Risk management, Pilot performance, Weather prediction. Actual flight took place on August 12, 2009. The flight distance was 20.72km. In this study, results of weather prediction using 1-way downscaling technique are validated by surface observation data and feasibility of weather prediction for Long-Distance Human-Powered Flight is discussed. The weather prediction with 1-km mesh decreases RMSE of wind speed by 0.1--0.2m/s compared with that with 5-km mesh. The weather prediction with 1-km mesh also has a potential to reproduce nonstationary wind. The RMSE gradually increase with time, which is mainly caused by initial and boundary data given from coarse mesh model. To reduce the RMSE, it is desirable to use newest analysis data as possible for initial and boundary data.
著者
鈴木 健斗 岩崎 俊樹 山崎 剛
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.27-47, 2021 (Released:2021-02-28)
参考文献数
30

気象庁のメソスケール数値予報モデル(5kmメッシュ)は、寒候期を主に関東平野の沿岸付近に形成される局地前線(いわゆる沿岸前線)を実況より内陸側に予報する傾向がある。本研究では2015-2018年に海からの南寄りの風を伴って発生した沿岸前線に対する統計解析から前線位置の系統的な数値予報誤差を確かめ、その要因を調べるため、典型的な予報誤差を伴った3事例に対し非静力学モデル(JMA-NHM)による数値感度実験(水平解像度、地形、物理スキーム)を行った。その結果、気象庁メソスケールモデルは予報時間が5時間程度より経過すると降水の有無にかかわらず前線位置を一貫して内陸側へシフトさせる系統的誤差が発生することが明らかになった。数値感度実験からは、沿岸前線の系統的予報誤差は主に数値モデルの山岳が実際より低いことに起因することが分かった。解像度を2キロ、1キロにすることで沿岸前線の北西方向への誤差距離は3事例を平均して27%、37%減少した。また、モデル地形にEnvelope Orographyを導入すると、誤差はほぼ解消した。さらに降水の蒸発冷却は前線を海側にシフトさせることも確認された。 沿岸前線の多くは関東平野北西側の山岳の南東斜面において捕捉された寒気により形成されるものと考える。特に、前線の傾斜角は力学的バランスでおよそ決まる。山の稜線が高くなれば前線は海側にシフトし、冷却により捕捉された寒気が強くなれば、傾斜角が小さくなり海側にシフトする。
著者
岩崎 俊樹 中野 尚 杉 正人
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.555-570, 1987
被引用文献数
39

本論文では新しく開発中の台風進路予報モデルの概要とその予報性能について述べる。この実験モデルは北半球モデルに1-way で接続された局地モデルである。間隔50kmの一様な水平格子と8層の鉛直格子によって構成され,その予報領域は4000km&times;4000kmである。積雲対流スキームには Kuo 方式を採用している。各計算スキームは台風が良く維持されるように調整されている。初期場には適切なモデル台風が客観解析に重ね合わされている。<br>このモデルは1985年に観測された台風の中心示度や移動を精度よく予報した。また,衛星による雲画像と比較すると,台風と梅雨前線の間に強い相互作用があるケースでも,複雑な降水分布の振舞を良く予報できた。<br>インパクトテストによれば,主観解析の精度や北半球モデルの性能は実験モデルの予報精度に大きな影響を及ぼすので,それらにも十分配慮する必要があることが示唆された。
著者
斉藤 和雄 瀬古 弘 川畑 拓矢 青梨 和正 小司 禎教 村山 泰啓 古本 淳一 岩崎 俊樹 大塚 道子 折口 征二 国井 勝 横田 祥 石元 裕史 鈴木 修 原 昌弘 荒木 健太郎 岩井 宏徳 佐藤 晋介 三好 建正 幾田 泰酵 小野 耕介
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

局地豪雨による被害軽減につながる基盤技術開発のための研究として以下を行った。・観測データを高解像度の数値モデルの初期値に取り込む手法(データ同化手法)の開発と豪雨事例への適用を行なった。衛星で観測するマイクロ波データ、GPSデータ、ライダー観測による風のデータを用いた同化実験などを行うとともに、静止衛星の高頻度観測データの利用に向けた取り組みにも着手した。・局地豪雨の発生確率を半日以上前から定量的に予測することを目標に、メソアンサンブル予報のための初期値や境界値の摂動手法の開発と雲を解像する高分解能モデルへの応用と検証を行い、局地豪雨の確率的予測の可能性を示した。
著者
岩崎 俊樹 山崎 剛 余 偉明 大林 茂 松島 大 菅野 洋光 佐々木 華織 石井 昌憲 岩井 宏徳 野田 暁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

ダウンスケール手法に基づくメソスケール予報システムを作成し、農業気象と航空気象へ高度利用法を検討した。予測精度を向上させるためには、物理過程を改良し、初期条件と境界条件を最適化することが重要であることが示された。農業分野では、清川だしの強風といもち病の予測可能性を明らかにした。航空分野では、ドップラーライダーとダウンスケールシステムを組み合わせた、空港気象監視予測システムの可能性を検討した。
著者
長谷部 文雄 塩谷 雅人 藤原 正智 西 憲敬 荻野 慎也 宮崎 和幸 柴田 隆 山崎 孝治 岩崎 俊樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ゾンデを用いた現場観測により熱帯成層圏水蒸気量の長期トレンドを明らかにするとともに、熱帯対流圏界層(TTL)内を水平移流しながら巻雲を形成し凝結脱水中の大気の対氷過飽和度が80%に達する事例を見出した。また、観測された大気の水蒸気混合比とその大気の流跡線に沿って上流へ遡ることにより評価される最小飽和水蒸気混合比との比較解析により、TTL内を水平移流しながらゆっくり上昇する大気に働く脱水過程の観測的記述に初めて成功した。
著者
安田 延壽 余 偉明 山崎 剛 岩崎 俊樹 北條 祥子 松島 大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

仙台市内の代表的幹線道路である国道48号線(北四番町通り、幅員27m)において、都市キャニオン(道路)内の窒素酸化物濃度(NOとN02のモル和)の高度分布を測定し、その特徴を明らかにしていたが、さらに乱流輸送理論に基づいて、その法則を明らかにした。高度約1.5m以下では、濃度は高さに依らず、等濃度層を成している。それより上空では、窒素酸化物濃度は、高度zの対数1nzの一次関数で表される。即ち接地気層と同様の対数則が成立する。等濃度層は、発生源が地表面より数十cm高いところにあることと、走行する車両によって強制混合されることにより形成されるものである。対数則層の濃度の高度分布より、摩擦濃度が決定される。この摩擦濃度は、等濃度層上端の濃度の関数であることが、大気境界層理論および観測により明らかになり、定式化された。さらに、一般には大気の温度成層は中立ではなく不安定あるいは安定成層をなす。この効果を、接地気層の理論に基づいて取り入れ、窒素酸化物の鉛直輸送量の日変化および地域分布を計算することが可能になった。広域に渡って窒素酸化物の鉛直輸送量を計算するためには、地上付近での窒素酸化物濃度のデータの他に、大気安定度に関する情報が必要である。この問題に対して、従来から東北大学気象学研究室で開発されてきた熱収支モデルをさらに改良して用いた。特に、東北地方では冬季には積雪があるので、そのような場合に対する熱収支モデルも開発し、窒素酸化物の鉛直輸送モデルに組み込んだ。これらの理論体系から、窒素酸化物の鉛直輸送量が評価された。1991年〜1998年の8年間の平均では、発生源である道路の場合、幅27m・長さ100mの道路より、N02換算で、年間625kgの窒素酸化物が上空に輸送されている。道路から離れた地域では、ほぼその1/3であった。
著者
長谷部 文雄 塩谷 雅人 藤原 正智 西 憲敬 柴田 隆 岩崎 俊樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

熱帯対流圏界層(TTL)内脱水過程を解明し、熱帯成層圏水蒸気の長期トレンドを高精度ゾンデ観測により検出するために、TTL水蒸気量と水平移流に伴う大気の温度履歴との対応を、同一大気塊の複数回観測(match観測)により明らかにすることが本課題の特徴である。これまで蓄積してきた観測データから、ゾンデ観測された水蒸気混合比と移流する大気塊の経験する最小飽和水蒸気混合比との間には、観測点の立地条件、温位高度、季節、ENSOなどの気象条件に特有の脱水効率依存性が見出された。また、個々のゾンデ観測ごとに様々な高度で描かれた後方流跡線により大気塊の起源を求めたところ、相対湿度のジャンプが観測された高度の上下で流跡線が大きく配置を変える例が見出された。この結果は、ゾンデ観測された個々の大気塊ごとに、その大気質の変遷を大気塊の起源と対応させて議論することが可能であることを示す客観的根拠となり、水蒸気matchの信頼性を担保する事実と考えられる。個々の水蒸気分布の特徴をライダー観測された巻雲粒子の存在と対応させたところ、両者に良い対応の認められる例が見出された。これらの結果は、独自に開催した国際研究集会やアメリカ気象学会中層大気会議などの国際会議で発表し、投稿論文を準備中である。米国の予算削減に伴いTC4が中米に場を代えて実施されたため、TC4との同時観測は実現しなかったが、我々の観測データは人工衛星データの検証においても大いに貢献している。さらに、今後の発展を展望した試みとして、Lymana水蒸気計などの飛揚も行った。また、GCMに全球解析場や観測データを同化することにより流跡線解析を精密化する試みを開始した。こうした活動は、熱帯上部対流圏・下部成層圏における水蒸気の長期モニタリングの継続の重要性とともに、脱水過程に関する研究の発展の方向性を示すものである。