著者
丹羽 昭博 玉本 隆司 遠藤 能史 廉澤 剛
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.46-51, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
14

広範囲に狭窄し、穿孔した食道を有する6歳例の猫に対して、部分切除や吻合術が困難であったため、径の大きいネラトンカテーテル(NC)を食道へ挿入し、唾液の通過を確保すると同時に、NCを型にして食道となる管腔を再建した。NCを3ヶ月留置した後に抜去し、その後3年以上は軟らかい食餌ではあるが、吐出や嘔吐なしに自力採食可能であった。このことより食道の変性が広範囲におよぶ致死的な症例に対してNCを用いて管腔を再建する方法は有用であると考えられた。
著者
蝦名 克美 小幡 玲子 磯村 洋 廉澤 剛
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医皮膚科臨床 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.9-13, 1998-03-20 (Released:2008-05-16)
参考文献数
10

約7年前に, 猫においてワクチン接種が原因として発生する線維肉腫についてレポートされ, この線維肉腫はワクチン接種後肉腫といわれた。この腫瘍は狂犬病ウイルスワクチン接種部及び猫白血病ウイルスワクチン接種部に発生するが, それだけではなく猫3種混合ワクチン接種部にも発生する。ワクチン接種後肉腫の好発部位は頸背部及び肩甲間であり, そしてこの部分は一般的にワクチンを接種する部分でもある。猫線維肉腫は皮膚及び皮下に発生する一般的な肉腫である。しかし, ワクチン接種部外に生ずる線維肉腫の場合, その発生部はほとんどが指趾及び頭部である。本症例はワクチン接種を行った肩甲間の皮下及び筋肉部分に発生した肉腫であり, 本レポートは3種混合ワクチン接種後に発生したワクチン接種後肉腫の本邦初のレポートである。
著者
高橋 朋子 廉澤 剛 望月 学 松永 悟 西村 亮平 佐々木 伸雄
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.111-117, 1997-10-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

犬の皮膚型肥満細胞腫の治療にしばしば用いられるグルココルチコイド (GC) の抗腫瘍効果について, 病変の縮小程度を指標とした検討を行った。GC単独, 放射線療法や化学療法との組み合わせ, GCを使用しない治療法とを比較したところ, いずれの治療法でも一時的な腫瘤の縮小が見られたものの, 長期間にわたりコントロールできた例はなかった。しかし, GC単独での腫瘤縮小効果は, その他の療法と同程度ないしそれ以上と推測された。
著者
高木 哲 北村 剛規 保坂 善真 大崎 智弘 ボスナコフスキー ダルコ 廉澤 剛 奥村 正裕 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.385-391, 2005-04-25
被引用文献数
1 11

RECKは近年発見された膜結合型内因性マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビターであり, ヒトの臨床例においてその発現量と腫瘍の悪性度に負の相関が認められることが報告されている.本研究では犬のRECK遺伝子のクローニングを行った.その結果, cDNAは2,913塩基で, ヒトと95.5%, マウスと91.9%の相同性を示す971残基のアミノ酸から構成されることがわかった.様々な正常組織でのmRNAの発現量をリアルタイムPCR法にて定量した結果, 肺と精巣で高い発現が認められたが, 腫瘍細胞では極めて低い発現のみ認められた.免疫染色では精子, 平滑筋, 偽重層上皮などに強い染色性が認められ, 発現ペクターを用いた実験では腫瘍の浸潤能が抑制されていた.
著者
廉澤 剛 野崎 一敏 佐々木 伸雄 竹内 啓
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1167-1169, 1994-12-15
被引用文献数
11

1.5歳の雌雑種犬に自然発生した骨肉腫から直接細胞培養し, 骨肉腫細胞株POS細胞を樹立した. この細胞は, 33時間で倍加し, 形態的にはいくつかのタイプの細胞が観察された. 透過型電子顕微鏡で, 多数の拡張した粗面小胞体が認められ, また高いALP活性を持つことから, 骨芽細胞由来の細胞と考えられた. さらに, この細胞のヌードマウス移植腫瘍を病理組織学的に調べたところ, 原発腫瘍と同様の骨肉腫組織像を示すことが明らかになった.
著者
渡邊 一弘 菊池 正浩 奥村 正裕 廉澤 剛 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.889-894, 2001-08-25
被引用文献数
2 8

犬の歯根尖部にみられるapical deltaという複雑な構造は, 根尖病変の要因の一つと考えられている. 本研究では, apical deltaを含む根尖病変を除去するために行われている根尖切除術を実験的に犬に施した後, エナメルマトリックスタンパク(EMP)を根尖部に注入し, 根尖部歯周組織再生に対するFMPの効果を組織学的に検討した. ビーグル成犬5頭に対し, 全身麻酔下で左右の上顎第4前臼歯頬側近心根および上顎犬歯根の根尖とセメント質を除去した後, 左右いずれか一方の術部にEMPを注入し, 反対側を対照群とした. 12週間後, 安楽死して組織を採取し, 光学顕微鏡下で根尖切除部位における欠損の大きさ, 新生セメント質およびこれと新生骨を結ぶコラーゲン線維の有無を評価した. その結果, EMP群では対照群に比べ, 切除部位の欠損部は小さく, 新年セメント質の形成は優勢であった. 特に, 対照群では認められない新年セメント質と新生骨を結ぶコラーゲン線維が明らかに存在し, EMPが根尖切除後の根尖部歯周組織の再生を促進することが確認された. これらの所見は, 犬の根尖切除術に対するEMP使用の有用性を示唆するものである.