著者
亀山 康子 蟹江 憲史
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.175-185, 2008-05-30

気候変動対処を目的とした京都議定書には,先進国等の2008年から2012年までの温室効果ガス排出量に対して排出抑制目標が規定されているが,その後の対策(次期枠組み)に関しては今後の交渉に委ねられている。十分な気候変動緩和のためには次期枠組みにおける途上国の実質的参加が不可欠だが,途上国は現在交渉開始に消極的である。その理由として,対策が経済的発展を阻害すると認識されていることに加えて,前向きに交渉するために必要な政策立案能力が不足している点がアジア諸国に見受けられる。今後アジア諸国が政策立案能力を高め,気候変動対策の長所を最大限に生かせるような交渉ポジションを自律的に形成することを目指し,その第一歩としてアジア諸国の次期枠組みに関する国内制度設計や議論を調査した。 6力国での調査結果を比較し,結果として以下の3点が挙げられた。(1)国内の次期枠組みに関する議論は,国の経済水準が高い一部の国でのみ進展しており,その他の国では次期枠組みの議論はまったく始まっておらず現行枠組みの実施段階にあった。(2)現行枠組みの実施に関しては,1国を除くすべての国で省横断的な組織が設立されていた。また,複数の国ではその組織の参加者として政府関係者のみならず研究者や環境NGOも認められており,非政府組織が政策立案に影響を及ぼしうる場として機能していることが分かった。(3)次期枠組みに関する議論が各国内で始まった場合に予想される各国のポジションは多様であった。このような多様なニーズにきめ細かく対応するためには,気候変動枠組条約および京都議定書といった従来型の多国間条約のみならず,地域協力や二国間協力等を含めた幅広い枠組みに発展させていく必要があることが指摘できた。
著者
蟹江 憲史 KABIRI N. KABIRI N KABIRI Ngeta
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当研究の目的は、気候変動ガバナンスと法的拘束力のある地域気候変動レジームの制約についての分析を行いつつ、位置づけていくことにあり、また、当事国の発展の必要性とグローバルな利益に注意を払いつつ、経済的なベネフィットにも寄与することが可能な、地域気候変動レジームのタイプについて形付けることであった。地域統合における、東アフリカ共同体(EAC)と南アフリカ発展共同体(SADC)の気候変動ガバナンスレジームの新興アーティキュレーションは存在する。どちらの共同体も気候変動に焦点を当て主張することができ、政策決定者は、この取組みを推進すべきであると考えられる。しかしながら、2つの共同体には明白な違いがあり、EACにおいては相当な進展を示しており、一方、SADCは、気候変動レジームを形成している段階にある。制度構造が部分的にこの違いの原因となっており、また、このような構造がなぜSADCに欠落しているかという説明が必要となってくる。しかし、EACについても、法的拘束力をもつレジームの達成を妨げる、いくつかの障害も記録されており、プロジェクトやプログラム構成がSADCより進んでいることを除いては、このケースはEACにおいても同じ状況にあるといえる。これら阻害要因を無くすためにより多くの投資が必要であり、共同体の気候変動ガバナンスアジェンダをさらに前進させるためにも、関連する政策手段を講じる価値があると考えられる。当研究により得られた成果により、具体的に国際開発を実現するような目標や指標を同定し、またその実現のためのガバナンスのフレームワークを導き出し、論文、学会発表等を通して、提言することが出来た。JSPSからのFundを通して、アフリカ等での市場調査を行い、様々な国際会議への参加が可能となり、円滑に研究を進めることが出来、十分な成果を導き出すことが出来た。
著者
蟹江 憲史 WEBERSIK Christian
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、地球環境の変化が人間の安全保障に及ぼす影響についての調査である。第一に、干ばつが紛争に及ぼす影響に焦点を当て、アフリカにおける干ばつの政治的暴力に対する影響を調査した。アフリカの干ばつは、その多くの国々が天水農業に依存していることから、大幅な収入減少の原因となっている。今回の研究で、主に3つの人為的な気候変動要因が人間と国際間の安全を脅かしていることがわかった。すなわち、資源の枯渇、自然災害、および人間の移動である。本研究分担者は、この研究成果をアメリカ国際政治学会(ISA)年次総会にて発表し、現在「気候変動と安全保障」という題名の書籍の原稿を執筆中である。書籍ではまた気候変動を緩和するためによく計画された政策がいかに予期せぬ反対の結果を招いているかについても検証している。つまり、広域に渡る耕作地および森林地帯が太陽エネルギー、風力、バイオ燃料などの再生可能エネルギーの広域利用により併合されてしまうことで、全世界的な農業生産量を落ち込ませ、発展途上の経済社会にある最低限のサブシステンスレベルで生活する貧しい人々が購入できないほどの食物の価格上昇を招いているのである。この他、当フェローシップ中に、主にアジア地域で将来増加する熱帯低気圧への気候変動の影響に関する研究も開始した。本研究分担者はこれに関して、各種国際会議で発表するとともに、識者を招聘した日本での発表会などを主催した。この研究は、本研究分担者が既に行っている、ハイチにおける自然災害の長期的開発への影響に関する研究とも関連している。また、国連大学高等研究所のポスト・ドクトラル・フェロー二名と共同で、森林経営と気候変動に関する国連大学政策リポート中の一章を出版し、また2008年ポーランド・ポズナンで開催された気候会議でのあるサイド・イベントにて発表した。
著者
猪原 健弘 木嶋 恭一 出口 弘 今田 高俊 桑子 敏雄 蟹江 憲史 金子 宏直 中丸 麻由子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、人文学、社会科学、理学、工学を横断するアプローチにより、参加型合意形成メカニズムについての理論・方法・実践に関する知識体系を整備した。特に、(1)合理的な主体の集団の中に協力が生まれるメカニズムを、コンピュータ・シミュレーションを用いて解明した。(2)合意と合意形成が満足するさまざまな性質、特に、合意の達成のされやすさや、合意の崩れにくさについての理論的成果を集約し、可視化した。(3)合意形成の支援のモデルを構築した。という3点が研究成果として得られた。