著者
裏出 良博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.754-762, 2013-11-01 (Released:2014-11-01)
参考文献数
44

現在日本では睡眠に不満をもつ人の割合は20%以上にもなる.私たちは内因性睡眠物質であるプロスタグランジンD2 やアデノシンによる睡眠誘発の情報伝達系をさまざまな遺伝子操作動物を用いて解析し,睡眠覚醒調節の全体像を明らかにしてきた.さらに,実験動物の脳波測定システムを応用して,睡眠覚醒調節作用をもつ天然素材の探索を進め,自宅での睡眠測定が可能な人間用の携帯型脳波計を開発した.これらの研究は睡眠の科学的な理解を深め,医療費の削減や国民の公衆衛生に大きく貢献する.

2 0 0 0 OA 睡眠物質

著者
藤谷 靖志 裏出 良博 早石 修
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.811-816, 1998-11-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

我々は規則正しく睡眠と覚醒のサイクルを繰り返しながら, 人生の3分の1にあたる貴重な時間を眠って過ごす. しかしながら, 睡眠に対して科学的な光があてられるようになったのは, 比較的最近のことであり, 睡眠は現代医学の中のブラックボックスであるといっても過言でない. 覚醒から睡眠への移行には, 脳内や全身においてさまざまな生理現象が多層的に関与していると考えられる. したがって睡眠に関与する物質も多種多様であり, それぞれの相互作用により睡眠を制御していると想定される.「睡眠が脳内において産生されるホルモン様の物質 (睡眠物質) により調節される」という「睡眠の液性調節」の概念は, 約1世紀前に提唱され, 現在では広く認められている. 睡眠物質 (Sleep-promoting substances) とは睡眠欲求の高まりと共に脳内や体液中に出現し, 神経活動を調節することにより, 睡眠の誘発や維持に関与する物質の総称である. 睡眠物質は自然な睡眠を誘発する内因性の物質であり, 非生理的な睡眠を起こすベンゾジアゼピン類等の睡眠薬とは異なる. その候補物質としては, プロスタグランジン類, ヌクレオシド類, サイトカイン, 生体アミン類等が挙げられている. 本稿ではこれらの代表的な睡眠物質を紹介し, これまでに明らかとなっている睡眠誘発の作用機構について解説する.

2 0 0 0 睡眠物質

著者
藤谷 靖志 裏出 良博 早石 修
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.811-816, 1998
被引用文献数
1

我々は規則正しく睡眠と覚醒のサイクルを繰り返しながら, 人生の3分の1にあたる貴重な時間を眠って過ごす. しかしながら, 睡眠に対して科学的な光があてられるようになったのは, 比較的最近のことであり, 睡眠は現代医学の中のブラックボックスであるといっても過言でない. 覚醒から睡眠への移行には, 脳内や全身においてさまざまな生理現象が多層的に関与していると考えられる. したがって睡眠に関与する物質も多種多様であり, それぞれの相互作用により睡眠を制御していると想定される.「睡眠が脳内において産生されるホルモン様の物質 (睡眠物質) により調節される」という「睡眠の液性調節」の概念は, 約1世紀前に提唱され, 現在では広く認められている. 睡眠物質 (Sleep-promoting substances) とは睡眠欲求の高まりと共に脳内や体液中に出現し, 神経活動を調節することにより, 睡眠の誘発や維持に関与する物質の総称である. 睡眠物質は自然な睡眠を誘発する内因性の物質であり, 非生理的な睡眠を起こすベンゾジアゼピン類等の睡眠薬とは異なる. その候補物質としては, プロスタグランジン類, ヌクレオシド類, サイトカイン, 生体アミン類等が挙げられている. 本稿ではこれらの代表的な睡眠物質を紹介し, これまでに明らかとなっている睡眠誘発の作用機構について解説する.
著者
吉田 郁美 竹森 利和 山崎 政人 道広 和美 都築 和代 裏出 良博 吉田 政樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.101-106, 2012-11

ミストサウナ入浴が睡眠に与える影響を把握することを目的に、冬季の実生活において被験者実験を実施した。実験は、被験者の自宅において就寝約1.5時間前に40℃10分間の通常入浴とミストサウナ入浴をそれぞれ10日間ずつ連続して実施した。浴室の設定温度、寝室の温湿度ならびに入浴前後の舌下温を10日間測定・記録した。また、1日の活動量(活動量計)、夜間就寝時の脳波(携帯型1チャンネル脳波計)を計測し、睡眠後の眠気(KSS調査票)や温冷感、目覚めの感覚等を記録した。睡眠効率、入眠潜時、および覚醒指数については条件間に有意な差はなかったが、第一周期デルタパワーについてはミストサウナ入浴の方が通常入浴よりも有意に高かった。入浴による舌下温の上昇度についても通常入浴よりミストサウナ入浴の方が有意に高かった。寝室温・湿度に両条件間の差は無かったが、被験者の申告結果からは、ミストサウナ入浴の場合、就床前はより暖かく感じ、起床時には目覚めの爽央感が得られるとの評価が有意に高かった。
著者
吉田 郁美 竹森 利和 山崎 政人 道広 和美 都築 和代 裏出 良博 吉田 政樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.101-106, 2012 (Released:2018-03-22)
参考文献数
22

ミストサウナ入浴が睡眠に与える影響を把握することを目的に、冬季の実生活において被験者実験を実施した。実験は、被験者の自宅において就寝約1.5時間前に40℃10分間の通常入浴とミストサウナ入浴をそれぞれ10日間ずつ連続して実施した。浴室の設定温度、寝室の温湿度ならびに入浴前後の舌下温を10日間測定・記録した。また、1日の活動量(活動量計)、夜間就寝時の脳波(携帯型1チャンネル脳波計)を計測し、睡眠後の眠気(KSS調査票)や温冷感、目覚めの感覚等を記録した。睡眠効率、入眠潜時、および覚醒指数については条件間に有意な差はなかったが、第一周期デルタパワーについてはミストサウナ入浴の方が通常入浴よりも有意に高かった。入浴による舌下温の上昇度についても通常入浴よりミストサウナ入浴の方が有意に高かった。寝室温・湿度に両条件間の差は無かったが、被験者の申告結果からは、ミストサウナ入浴の場合、就床前はより暖かく感じ、起床時には目覚めの爽央感が得られるとの評価が有意に高かった。
著者
永田 奈々恵 裏出 良博
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.621-628, 2012-06-01

はじめに 睡眠の目的の1つはエネルギーの消耗を防ぎ,脳機能を回復させることである。睡眠不足になると,仕事の効率が上がらず,ケアレスミスも多くなる。またわれわれは,日常生活の中で,徹夜が続くと日々眠気が強くなることを経験する。この現象は,覚醒中に脳内に蓄積する眠気誘発物質の存在を示唆する。現在までに約30種類もの睡眠物質が同定されてきた。その中でも,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)D2とアデノシンは内因性睡眠物質の最も有力な候補である1-4)。 PGD2は,1982年に京都大学の早石 修(現,大阪バイオサイエンス研究所理事長)の研究室において,脳で産生する主要なPGがPGD2であることが明らかになり,その中枢作用の探索の中で,PGD2の睡眠誘発作用が発見された5)。一方,アデノシンは,1970年代にイヌの脳室内へのアデノシンの投与が睡眠を誘発することや,カフェインがアデノシン受容体の拮抗薬として覚醒作用を示すことが証明され,睡眠物質として認められるようになった。 本稿では液性の内因性睡眠物質としてのPGD2とアデノシンについて解説する。
著者
裏出 令子 裏出 良博 柏木 香保里 ラザルス ミハイル
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

肝臓特異的なER-60のノックアウトにより、肝臓での膜糖たんぱく質の構造形成が部分的に遅滞することを見いだした。このため、高脂肪食による高度肥満にすると、ER-60の欠失により肝臓で小胞体ストレスが惹起されやすくなることを示した。脳特異的なER-60の欠失により、ER-60によるアルツハイマー病の原因タンパク質であるアミロイドβの毒性抑制作用の検証を試みるとともに、ER-60とアミロイドβとの複合体の構造解析に成功した。
著者
伊藤 誠二 裏出 良博 松村 伸治 芦高 恵美子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

痛みは生体にとって警告反応どなる生理的な痛みだけでなく、炎症や手術後の痛み、癌末期の疼痛、神経の損傷による神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)と様々な原因で起こり、自発痛、侵害性刺激による痛覚過敏反応、本来痛みを誘発しない非侵害性刺激による痛み(アロディニア)とさまざまな病態をとる。末梢組織で活性化された侵害受容器のシグナルは一次求心性線維を介して脊髄後角に伝えられる。我々は、脊髄髄腔内にプロスタグランジン(PG)E_2あるいはPGF_<2α>を投与するとアロディニアを生じ、PGD_2がアロディニアの発症を修飾すること、これらのアロディニアの発症はカプサイシン感受性と非感受性の異なる2つの伝達経路を介すること、脊髄での中枢性感作には、PG→グルタミン酸→NMDA受容体→一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化という生化学的カスケードを介することを明らかにしてきた。今年度は、アロディニアの発症機構におけるこれらの生体因子の役割をノックアウトマウスで明らかにするために、まずマウスの坐骨神経結紮モデルを確立し、検討した。1)アロディニアは坐骨神経結紮後、1週間で生じたが、COX-2のノックアウトマウスは、アロディニアの発生には関与しなかった。2)坐骨神経結紮モデルの痛覚反応はCOX-1の選択的阻害薬で抑制されたが、COX-2の選択的阻害薬では影響されなかった。3)誘導型NOSのノックアウトマウスでもアロディニア反応は抑制されなかった。4)NMDA受容体ノックアウトマウスではアロディニア反応の出現が抑制された。これらの結果は、アロディニアの発症にグルタミン酸による興奮性神経伝達が重要な役割をしていることを示唆するものである。今後、我々が進めてきた髄腔内PG投与によるアロディニアモデルと比較検討してアロディニアの発症機構を解明したいと考えている。
著者
井上 豪 裏出 良博
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.036-043, 2007 (Released:2007-02-21)
参考文献数
22

The structural based drug-design (SBDD) is one of the useful methods for producing a novel medicine. We recently succeeded in X-ray crystallographic determination of two target molecules. One is human hematopoietic prostaglandin (PG) D synthase (H-PGDS) that produces PGD2 as an allergic mediator in mast cells and Th2 cells. The other is Trypanosoma brucei PGF2α synthase (TbPGFS), a member of the aldo-ketoreductase superfamily, catalyzes the NADPH-dependent reduction of PGH2 to PGF2α, whose overproduction during trypanosomiasis causes miscarriage in infected female subjects. In this report, we introduce the recent progress in the research of the high resolution structures of human H-PGDS and TbPGFS useful for SBDD.