著者
西山 慧 石黒 翔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.109, 2019 (Released:2019-10-28)

多くの認知心理学研究では,人間を対象とした実験が実施される。 そのために実験者は,参加者を募集し,応募があれば予定を調整し,実施日を通知し,カレンダーに登録し,実験前日にはリマインダーを送る。 場合によっては参加者リストを作成する必要があるだろう。 数十人の参加者一人ひとりに対してこの一連の手続きを手作業でミスなく行うことはかなりの注意が必要で極めて煩わしい。 一方でこのような手続きが自動で実行されるサービスも存在するが,有料である。 そこで,我々はGoogleが提供するサービスを組み合わせて,実験日の確定からリマインダーまでをほぼ自動かつ無料で実行できるシステムを実装した。 システムの根幹はGoogle Apps Scriptというプログラミング言語で動作しているが,プログラミングに不慣れな方々にも利用しやすいように,スプレッドシート上で基本的な設定を編集できるようにした。 発表では本システムの機能を体験するためのデモンストレーションも行う。
著者
伊藤 友一 松本 昇 小林 正法 西山 慧 三好 清文 村山 航 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-56, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
76

エピソード記憶の想起は,過去の出来事を記述的に思い出すのではなく,過去の出来事を心的に再体験する感覚を伴う.すなわち,その記憶システムは,過去のエピソードに対するメンタルタイムトラベルを担っている.メンタルタイムトラベルは未来や反実仮想のエピソードへも可能であり,記憶システムはさまざまな時間軸でエピソードを(再)構成するものとして捉え直すことができる.この視点から,記憶システムがかかわる近年の研究を概観する.伊藤はエピソード的未来思考について,松本は自伝的エピソード記憶の詳細さについて,小林は外部記憶の利用によるcognitive offloadingについて,西山は記憶の意図的な制御と忘却について,三好は主観的メタ記憶の計算論とその反実仮想との関連性について紹介する.これら話題提供の後,村山と川口による指定討論を受け,記憶研究の新たな視点と今後の展開について議論する.
著者
西山 慧 齊藤 智
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-41, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
130

検索の意図的な制止は,記憶を意図的に思い出さないようにする内的過程を指し,Think/No-Think(TNT)パラダイムによって検討されてきた.本論文ではTNTパラダイムの実験手続きの説明に始まり,TNT研究によって明らかにされた検索の意図的な制止の効果,メカニズム,そして調整要因を網羅的に概観した.また,思考抑制との相違点をもとに,検索の意図的な制止が忘却を引き起こす要因についても論じた.検索の意図的な制止は,対象の記憶の忘却を引き起こすだけでなく,記憶のかかわるさまざまな認知プロセス,さらには感情反応にも影響を及ぼす.その背後にある応答的な制御のメカニズムは運動や感情の制御と共通しており,領域普遍性を有する.検索の意図的な制止の制御メカニズムに関する大きな進展の一方で,忘却のメカニズムについては未解明な部分が多いことも明らかとなった.検索制止を事後効果も含めて包括的に理解することは,制御メカニズムの領域普遍性を踏まえると,運動や感情制御がもたらす効果の解明にも寄与し,ひいては認知的制御の統一的な理解に資するに違いない.
著者
米田 英嗣 市村 賢士郎 西山 慧 西口 美穂 渡邊 智也
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

物語を読むことは、物語に記述された世界、登場人物が経験する出来事を疑似的に体験することであり、読者の脳の中で行われる現実世界のシミュレーションとも言える (米田, 2010; Mar & Oatley, 2008)。本研究では、小説を読むことによって社会的能力の向上がみられるかどうかを、教育介入前のプレテスト、介入直後のポストテスト、介入一ヵ月後のフォローアップテストを用いて検討した。小説読解トレーニングにおいて、ストレンジストーリー課題で心情理解の成績が向上したのに対し、アニメーション課題では、介入の効果が出なかったことから、近転移のみが見られることが明らかになった。社会的能力は、小説読解をトレーニングをしたときのみ向上することがわかった。本研究から、プレ・ポストデザインを用いた小説読解トレーニングによる社会的能力向上の長期的効果を明らかにした。
著者
米田 英嗣 市村 賢士郎 西山 慧 西口 美穂 渡邊 智也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.3D2OS7b02, 2018 (Released:2018-07-30)

物語を読むことは、物語に記述された世界、登場人物が経験する出来事を疑似的に体験することであり、読者の脳の中で行われる現実世界のシミュレーションとも言える (米田, 2010; Mar & Oatley, 2008)。本研究では、小説を読むことによって社会的能力の向上がみられるかどうかを、教育介入前のプレテスト、介入直後のポストテスト、介入一ヵ月後のフォローアップテストを用いて検討した。小説読解トレーニングにおいて、ストレンジストーリー課題で心情理解の成績が向上したのに対し、アニメーション課題では、介入の効果が出なかったことから、近転移のみが見られることが明らかになった。社会的能力は、小説読解をトレーニングをしたときのみ向上することがわかった。本研究から、プレ・ポストデザインを用いた小説読解トレーニングによる社会的能力向上の長期的効果を明らかにした。
著者
西山 慧子 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.106-116, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

遺伝子ネットワークとは,各遺伝子をノードとし,遺伝子間をエッジで接続して構築されるデータである.数千,数万といった大量の遺伝子群で構成される遺伝子ネットワークには,複雑な連結成分を含むことが多く,その解釈や把握が困難な場合も多い.本論文では,遺伝子群にクラスタリングとネットワーク化を同時に適用して構築される,階層型ネットワークデータを対象とした可視化手法を提案する.提案手法では,各々の遺伝子は数種類の発現率を持つと仮定し,その発現率の相関性の高さによりクラスタリングを行う.それと同時に提案手法では,発現率の相関性が高い遺伝子間をエッジで連結することにより,ネットワークデータも同時に生成する.提案手法ではこの遺伝子ネットワークデータを,大規模階層型データ可視化手法「平安京ビュー」の拡張手法を用いて可視化する.提案手法を用いることにより,遺伝子学の研究者は,膨大な遺伝子群の中から,特定の遺伝子の相互関係を分析,あるいは興味深い特徴を持つ遺伝子の発見,などが容易になるものと考えられる.なお本論文は遺伝子ネットワークの可視化を試みるものであるが,提案手法における階層型ネットワークデータの可視化手法は,拡大性とランダム性の高い複雑ネットワークと呼ばれるネットワーク全般に適用可能な,応用範囲の広い可視化手法である.