著者
齋藤 清二 西村 優紀美 吉永 崇史 TRISHA Greenhalgh
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

物語共有の場における経験的学習を推進することが、発達障害を有する大学生に対する心理・社会的支援として有用であるという暫定仮説に基づき、Webサービス(PSNS : Psycho-Social Networking Service)が構築された。PSNSは彼らの日常経験や想像上の経験を意味づけ、自由に表現することのできる、物語共有の場として機能した。PSNS上で交流されたテクストをデータとして、彼らが自らの経験を意味づけつつ学習することへの支援を通じて、どのような自己変容的プロセスが展開していくかについての質的分析を行い、発達障害大学生のための新しい支援モデルを提案した。
著者
松村 暢隆 西村 優紀美 小倉 正義 田中 真理 桶谷 文哲 柘植 雅義
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

発達障害/学習困難児者の、得意・興味等の才能面を活かせる支援の体制・方法と、学校間の連携の在り方に関して、多方面の視点から調査、資料収集、プログラム実施を進めた。(1)シアトル市の教育委員会及び公立小中学校を訪問して、2E教育プログラムの実践研究の実態調査を進めた。2E教育として、才能教育と特別(支援)教育担当部署が連携して、家庭環境や障害の多様性のある児童生徒に公正なプログラムが実施されている様子が見て取れた。発達多様性のある「不協和感のある才能(GDF)児者」の特性を把握するために、自己評定「GDFチェックリスト」を開発して、6因子が見出された。(2)富山大学で発達障害のある高校生に向けた大学進学プログラム「チャレンジ・カレッジ」を開催した。「大学の障害学生支援」について説明を行い、発達障害学生から当事者の視点で大学の授業の一端が説明された。大会シンポジウムで、このような大学体験イベントは、支援ニーズのある高校生・保護者が大学に主体的に繋がれる貴重な場であることが共有された。また発達障害のある生徒の中で病弱や精神的な不調により入院・在宅を余儀なくされる生徒とその家族へのインタビューを行った。学習保障とクラスの仲間意識を育てるための取り組みの必要性を感じた。(3)一昨年度から実施してきた徳島県内の高校での教育相談体制・特別支援教育体制、および鳴門教育大学での体制整備・教職員への啓発・学外連携の在り方の検討を継続して行い、進展が見られた。加えて本年度は読み上げソフトなどのICTの通常学級への導入を促進するための研究、およびGDF児者に関する研究を開始し、一定の成果を得た。(4)大学進学を目指す中学生を対象として、自分の障害特性に関する理解とそれに基づいた事例検討を進めた。自己評価、他者に映る自己評価、他者評価との関連の中で、自己理解の様相を把握していくことの意義が示された。
著者
西村 優紀美
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
no.16, pp.15-20, 2017-03

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が2016年4月から施行されたことにより、高等教育機関において障害学生への合理的配慮の提供が求められることとなった。独立行政法人日本学生支援機構(以下、機構)が2016年5月に公開した「平成27年(2015年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査分析報告」によると、発達障害(診断書有)の人数は、3,442人で、昨年度(2,722人)から720人の増であり、このうち支援障害学生は2,564人で前年度(1,856人)より708人の増であった。同機構が行った実態調査分析報告では、発達障害者支援法で定義づけられた三種類の診断カテゴリーの中で、高機能自閉症等の割合が最も高くなっている。文部科学省の調査では小・中学校においてLD等の学習の問題がある児童生徒の人数が最も多いとされていることを考えると、現時点では、学習上の問題がある児童生徒が大学まで進学することが難しい状況があるのではないかと推察できるとともに、未診断の学生の中に、LDの学生がいる可能性も否定できないとしている。支援内容に関しては、「授業支援」として、「配慮依頼文書の配布」が全体の40.9%となっているか、授業に直接関わる合理的配慮の提供等、具体的な項目まで明らかにされてはいない。「授業以外の支援」が充実している状況と比べて、授業支援に関わる項目の少なさが今後の課題として挙げることができる。
著者
西村 優紀美
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.29-43, 2013-03

平成24年度富山大学公開講座では、東日本大震災で被災された方々、そして、震災直後から緊急支援に当たった方々を講師として招き、「東日本大震災緊急レポートから―今、必要な発達支援を考える」をテーマに開催した。ここでは、二人の方の講話を紹介する。一人は石巻市雄勝町在住の徳水利枝氏で、もう一人は石巻市の中学校で教員として勤務していた佐藤かつら氏である。共に、ご家族を津波の被害で亡くされている。我々にできることは非常に少なしこの事実にどう向き合えば良いのか分からず途方に暮れるばかりである。しかし、被災された方々の話に耳を傾けることはできる。思い出を語り、意味の再構成という心の作業に、寄り添うことならできるかもしれない。想像を超える真実に圧倒されながらも、だだ聴くしかできない、その無力感を感じつつ、ここに講演記録を記す。
著者
西村 優紀美
出版者
富山大学
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.44-51, 2000-06-30