- 著者
-
松村 暢隆
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.3, pp.169-177, 1979-09-30 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 11
本研究の目的は, 形式的課題における, 否定語の理解と生産の発達を調べることである。そのために, 類否定にかんして, 選択課題, 構成課題および言語化課題を行った。いくつかの教示 (下位項目) を組合せて, 被験者各人の否定および肯定の段階を定めた。また, 先行経験 (色・形分類または絵カードでの選択) の, 課題に及ぼす影響を見た。4~6才児54名を対象とした。選択課題は, 4枚の図形の中から「青い丸とちがうもの」や「青いものの中で丸とちがうもの」などを選択する。構成課題は, 色と形を分離した材料を用いて, 選択課題の下位項目に対応するものを構成する。言語化課題は, 指示されたものを, 選択課題の教示に対応する言葉で言語化する。その結果, 先行経験の影響はなかった。否定について, 選択課題と構成課題はほぼ同じ年齢で可能で, 1次元否定は4才ころ, 2次元否定は5才ころ, 部分補クラスは 5才ころ (構成課題では6才ころ) に可能になった。それに対して言語化課題は困難で, 5才ころ1次元否定ができ, 6才でもそこにとどまった。肯定については, 選択課題と構成課題では, 2次元肯定が4才からできた。言語化課題では, 1次元肯定は, 4才からできたが, 2 次元肯定は, 5, 6才ころにできた。肯定の段階は否定の段階より1年ほど先行していた。なお, 別の被験者で, 選択課題の材料の図形が, 4枚の場合と9枚の場合とを比較したところ, 難易に差はなかった。また, 選択課題の材料が, 図形の場合と絵カードの場合とを比較したところ, 肯定についてのみ絵カードの方が困難になった。絵カードの場合は属性によって困難さが異なり複雑になるであろう。